第3話

「―――貢ぎなさい。私にイケメンを捧げれば、汝の問いに 答えしましょう」



「・・・・・・・・・・・・」



虹夜さんは、よく聞き取れませんでした。


目の前には、背が高く、すらっとした体形の美しい女の人が立っていた。

その人は 二重の目をしていた。

鼻筋は高く、薄いピンク色の唇は小さく艶々としている。

髪の毛は長くて、茶色に近い色をしているが 光に透かすと 赤色に見え、不思議な色合いになっていた。


私は思わず見惚れてしまい、声をかけることさえ忘れてしまっていたほどだ。

それくらいに衝撃的で美しかった。


彼女は不思議そうな表情を浮かべていた。


「え? なんですか?」

「だから! 貢ぎなさいって言ってるのよ!」


美羽さまは、顔を真っ赤にして叫びました。

私は首をかしげます。


(貢ぐ? お金のこと?)


私には お金がありません。

なぜなら 結婚式を盛大にしすぎて、親から貰ったお金を ほとんど使いきってしまっていたからです。でも、嫌われたくない私は言いました。


「えっと、私もあまり持ってないです」

「そんなわけあるかーっ!!」


いきなり殴られた。 痛いっ!!  私は涙目になりながら抗議します。


「いや、だって! ホントですよ! 金欠です」

「お金なんて いらないわよ!」


「じゃあ、なんなんですか!?」


すると彼女は、ハッと気づいたような顔つきになった。


「ごめん。ちょっと熱くなってやりすぎた。殴っちゃったよね? ほんとうに申し訳なく思っているの。私、感情表現下手だから。こうやってすぐ手が出ちゃうのよ」


「・・・別にいいですけど。あの!

 このゲームの主人公を探しているのですが、心当たりはないですか?」



私がそう聞くと、彼女は少し考えた後で答えた。



「あの人なら 知ってるかもしれないわね。今度、聞いてあげるわ。さっき、手を出してしまった お詫びよ」



「え!? ありがとうございます! 良かったぁ~」


どうやら、私はバッドENDから解放されるらしい。

やっとこの破滅フラグから離れられるのかと思うと嬉しい気持ちになった。


だが、しかし――


「それで君は 何者なのかしら? どうやって、私を見つけたの?

 …まあいいわ。とりあえず連絡先を交換しましょう。何かあった時のために とっておくべきだものね」


「はい。分かりました」


彼女のスマホを受け取り連絡先の登録画面を開く。

(あれ? どうして私が 彼女のスマホに 登録を?)


――待って!

それよりも、この方を なんと お呼びすればよいのかしら?


「あの! あなたのことを何とお呼びしましょうか?」と尋ねると、

「私? 名前は教えてあげないわよ!」と言われてしまった。


なので、仕方なく本名の 女神美羽 と入れることにした。

そして 連絡先を交換し終えると、彼女からのメッセージが届く。


〈虹夜さん! これから宜しくね! またお話しましょ! あと敬語なんか使わないで普通に接してくれていいわよ〉


(やっぱり美羽さまって、凄いなぁ)


**

***


それから一週間後のことだ。

(仕事帰りのサラリーマンっぽい人とかが多い。それにスーツ着てる人ばかりだ)


私は ホストクラブの前で キョロキョロしていた。


それは、つい最近仲良くなった美羽さまの勤め先に遊びに行くためだったのだが……

(どこにいるんだろうか?)


しばらく待っていると目の前を歩いていた一人の女性が振り返った。

そこでようやく、自分の行動に気づいてしまった。


恥ずかしくなりながらも、なんとか言葉を絞り出すようにして彼女に話しかける。

でも、緊張して上手く喋れないし、何を言っているのか自分でもよく分からない。


(なんだこれは!恋か?)


でも、違うかもしれない。

だって相手は女性だし、私は同性愛者ではないのだ。


「あ、あの、えっと、こ、こんにちは!」


すると、彼女は笑顔になってくれた。とても可愛らしくて素敵だと思えた。


まるで花が咲く瞬間を見た気分になる。

でも、こんなことを思ったら怒られそうだから黙っておく。


「こんにちは。待たせたかしら?」と聞かれたので、慌てて 否定してしまった。

「いいえ! そんなことないです。私も 着いたばかりです」と伝えると、なぜか顔をしかめられた。


(え。私、何か変なこと言っちゃったかな?)


すると、ギロリと睨まれて 美羽さまに質問された。


「ねえ、どうして 彼の居場所を知りたいの?」

「どうしって…って……?」


たとえ、この場所が ゲームの世界だとしても。――果たして、未来を伝えてしまって 良いものだろうか?


私はしばらく、口を開くことができなかった。


「彼、今は小学生だけど、ぜったいに 将来はイケメンになるわ。あなた。もしかして、狙っているの?」


美羽さまは、顔を真っ赤にして叫びました。

私は首をかしげます。


このゲーム(世界)のクラファンで、最高額出資者のひと。

その人は、ゲームに登場するキャラクターをつくる権利を得た。


いったい、何を考えて このキャラクターの性格をインプットしたのだろうか?


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