勝利だギューちゃん

第1話

サラサラ


今手元にある千円札。

その時、何を想ったのか、その番号をメモ書きしておいた。


どうしてそんなことをしたのかは、自分にもわからない。

でも、なぜかそうしたほうがいい気がした。


この千円札に、何か書こうかとも思ったが、犯罪になりかねないのでやめた。


そして、その番号を書いたメモ書きは、大事にしまっておいた。

もし、この千円札が自分の元に戻ってくれば素敵だなと・・・


そう思っていた。


そしてその日のうちに、使った。

たしか、好きな漫画の単行本の第一巻だった。


そして、当たり前だがその1000円札のことは忘れていた。


それから数年後、その漫画の単行本の最終巻が発売された。

かなりのヒット作となった。


そして、仕事の帰りに立ち寄った本屋さんで、その本を見つける。

細かいのに持ち合わせがなかったので、5千円札で支払った。


そして、おつりで1000円札を4枚もらったのだが、そのうちの一枚を見て驚いた。


この単行本の、第一巻を買ったときに使った千円札があった。

帰宅してメモ書きを見たら、ドンピシャ。

間違いなかった。


この1000円札は、長い間旅をしてきたのだろう。

そして今、私の元に戻ってきた。


この1000円札は、もう使わないで大事に残しておこう。


「お帰りなさい」

そうつぶやいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る