double psycho collide # ﾀﾞﾌﾞﾙｻｲｺｺﾗｲﾄﾞ

第2話

目が覚めた、もう夜だ。

フロントガラスから星空が見える。

どのくらい眠っていたのか。

服は寝ている間に脱いだのか全裸だった。

「少し肌寒いな」

？

なにか変なものが目に映る。

車のダッシュボードのあたりの空気が動いた…

いや、違う。

自分の手の周りの空気だ。

炭酸の泡のようなものが動いたり、消えた？　ガス？ではないか…

微小な気泡…小さい泡。

シャンパンの泡みたいに俺の腕、体から立ちのぼっている。

離れすぎると消えるようだ。

１０数センチくらいで消えてゆく…

大気中に漂っては消えたり現れたりしているものも少し見える…

かすかにしか見えない。色もついてないし。

でも目を凝らすと見える…

なんだこれ、おれにまとわりついてきたりおれの中にはいってきてる？？？

とりあえず瞑想する。

人生は小説より奇なり

往々にしてこういうこともある…

……ふぅ、よし。もう夜だし家に帰るか。

あ、そうだ。

なんでまずショッピングモールに来てるんだよ！

まず家に帰ってから着替えたり通報したりすれば良かった。

最初っからそうすりゃよかったんだ。馬鹿だな。

どれだけ混乱してたんだよ…

きゃぁぁぁぁぁー！！！

　悲鳴、ショッピングモール施設内から…

あたりには人っ子一人いない。

もう施設はしまってそうだが。いくべきかな、女性の声がした。

……あの化け物、じゃないだろうな。

ショッピングモール内に？あんな化け物に勝てる気がしないんだが…

　正直怖い。

あれがこのショッピングモールにいるのならそりゃ怖い、でも…

もしあれが一匹じゃなかったら？

違う個体がいて、それがこの”ショッピングモールにも”いるのなら？

あの餓鬼のような化け物が何十体も現れていたら？　ほとんどの人はとっくに避難済みだったら？

その可能性が怖いんだ。

もしもそうならここで車で逃げるにしてもエンジンをかけて気づかれたらまずいかもしれない。

　とりあえずスニーカーだけ履いて駐車場屋上から施設入口へ向かう。

電気はついてるところと、非常灯のようなものだけのところがありそうだ。

自動ドアは破壊されている。

息を殺しつつ陰になるところへ移動して何か音がしないか聞き耳をたてる。

　息遣いのようなものが聞こえる、かすかに。

あと蠢いている何か気体？微炭酸？エネルギー？スピリットと名付けようか。

　そのスピリットがもっと多い、なんか炭酸濃くなってないかな。

あともう少し長く空気中に残っててゆっくり浮遊してから消えてゆく泡、もといスピリットもある。

なんなんだ、これ…

特に死体から立ち上っているスピリットは…

死体？

死体だ、人間の死体が近くに無造作に転がっている…

　落ち着け、オレ。

ていうか体の調子が謎に調子がいい、体が軽い。力がみなぎってる。

近くに浮遊してきたスピリットが少し体に入ってきている…

悪い感じはしないが…謎だ。

ていうかなんでこんな非常時にベストコンディションなんだ。

　とにかく様子を見に行こう。

女性がどこかにいるはずだ。

入口から施設内に入り吹き抜けの見晴らしのよさそうなところから施設内を見渡す。

　そこには…

死体、死体、血、破壊された店、壊れたシャッター。

　数十人じゃきかないほどの死体…

？　人がこれだけ死んでいる割には床の血の量が少ないように思える。

いや、こんなものなのか？　どれだけ人が出血するかなんてわからないし…

　それよりも

あの化け物。あいつがでたのか？　やっぱり一匹じゃなかった。

電灯が不気味に点滅を繰り返している。

　見つかったらやばいぞ、ていうかあの悲鳴の主はどうなった。

まだアレがいるってことか？やばいな。どうしようか。

　とりあえず…

瞑想しよう。

ok,これからどうする？

悲鳴の主はもう手遅れか、もしくは気配を殺して隠れているか。

　どちらかだろう。

ふいに大気の流れを感じた。

少しだけ漂っていたスピリットの風向き？流れが変わったような気がした。

　吹き抜けになっている部分からスピリットを見てみると

たしかに一つの店の奥のほうにスピリットがすこし流れて行っている。

　それを確認したところでちょうどその店奥から毛のない灰色の犬？

犬のエイリアン？のようなものが出てきた。

　アレじゃない。犬型みたいなのもいるのか。

目のないグレイハウンドを大きくして筋肉質にしたような生き物が店の前にある死体にかぶりついた。

食べてるけどどちらかというと血を吸ってるようにもみえる。

　スピリットが死体からそいつに流れ込んでるのがわかる。そいつから数十メーター離れたところの空気が揺れて見えた、

その場所の近くの廊下から２匹の同じ犬型モンスターが出てきてそいつと一緒に食事をはじめた。

　仲間か。

足、早そうだな…

見つかったら…、やばいぞ。

　ていうか俺はどうする？

このままここを去るか？

悲鳴の主だってどうなったかわからないし。

　生存者の気配もない。

ていうか警察とか軍は？

　なんでここが放置されてる？

救助したりするような余裕がない？

俺が寝てるまにアポカリプスでも起ったのかのか？

ていうかこの化け物たちってどのくらいいるんだ？

　考えるだけで頭がクラクラしてくる。

ここから逃げようにも

車のエンジンなんてかけていろんなモンスターが一斉に集まって来たらやばいんじゃ…

ショッピングモールから外に出ても逆に障害物が少なくなるだけだ。

開けた場所で逃げ切れる自信なんてない。

隠れる場所が多いほうがいい。

　思考で頭がいっぱいになっているときに

吹き抜けになってる場所の二階のあたりの空気がすこし揺れた。

上から見てみると何かがいる。アレだ！

　あのチンパンジーのような餓鬼みたいなやつが犬たちを

隠れながらみてる。アイツ…

なぜ隠れているんだ？

　あの餓鬼の化け物。もしかして犬とは仲間じゃないのか？　

二階にあったカフェの跡地の棚の上から何かを食いながら窺ってやがる。

……人間の腕だ。

人間の腕を食いながら犬たちを真っ赤な目でみている。

　こちらに気づく気配はない。こっちも気づかれないように一層集中して気配を消す。

ふとスピリットの、めんどくさい。

霊気でいいや。

　おれに纏わりついてた霊気の雰囲気が、いや動きが変化した。

より気配が消えた気がする。これ干渉できるのか。

　静かに呼吸法を試す、体内に取り込むように霊気を呼吸で取り込んで循環させようとすると

消化されていくように体に溶け込んでいく。

なにかがすこし変わったように思える。

　とりあえず瞑想する。

気配を断ちながら瞑想する。

　少しは落ち着いたかもしれない、たった１分ほどの瞑想でも…

ふとまた気配を感じた。人間だ！

人間がいる！

　犬から距離をとりつつ気づかれないように

エスカレーターに身をかがめて隠れながら二階に行こうとしている。

おいおい、やばいぞ。

　そっちにいくと角度的にあのサルに視認される。

人間がこっちをみた。目が合った！

　が、何かおかしい。

気づいてない？

手をふる。反応していない。

こちらを見てすこし首をかしげた。

　完全に気づかれないとか、見えてないとかではないのか。

そりゃそうだろうけど…

どうする？気配をもう少しだすか？

いやそうこうしてる間に人間が2階に上がった。サル顔が気が付いた。

明らかにヤツの雰囲気が変わった。

彼女を食いたいのか、でも動かない。犬をしきりに見ている。

　アイツ…

やっぱり犬に気づかれたくないんだ。

人間は女性で２０代くらい？ブロンドで青目、１７０センチくらい。かなりの美人だ。

何か磁力みたいなものを感じさせるような女性だった。

　サル顔が物欲しそうな顔してみてやがる。

どうしよう。

とにかく気配をもっと出してその子に手を振ってみる。

　気づかない…

頼む、気づいてくれ。

気づいた！

　彼女の目に感情がともる。まるで花が咲いたような表情。

ジェスチャーで静かに！と注意を促して彼女から見て

右手のほうのカフェにモンスターがいることを伝える。

　伝わるかな…

なんか伝わったっぽい。

彼女がカフェのほうを見て固まった。

猿の顔をした餓鬼のような化け物と目があってしまったようだ。