第10話 メスガキの家に忍び込んだ男。その1

 男の名前はサカムー。職業は斥候レンジャーだ。


 ふたりの相棒と共に、3人パーティーで南軍の兵士としてオオバラ平原での戦いに参加したが、南軍の不利と見るや、相棒と共にリーダーの男を裏切って北軍に鞍替えした。


 しかし、そこで思わぬ相棒の裏切りにあった。北軍が雇用しているクラスは、魔法使いだけだったのだ。


「はぁ……知らなかったんですか?」

「うはw 知るわけねーだろw」

「はぁ……北軍は魔法兵を組織だって運用する。あなたも戦場で何度もみていたじゃないですか」

「それは確かにそうだけどよ」

「はぁ……サカムー、あなたはすべてにおいて無計画が過ぎますよ。こんなアホな男に裏切られたジンも報われませんねぇ」


 結局男は、北軍には雇用されず、盗賊に身をやつすことになる。

 その後、風の噂で北軍の敗北を知り、魔法兵が全滅したことを知った。


「うはw なんてこったw

 余計なことなんてしなくて、南軍にいついとけばよかったんじゃないかw

 まあ、裏切り者のキタムーの野郎が戦場で討死したってのは良い気味だがなww」


 保身と金に目をくらんで相棒を騙し、いっしょに騙した相棒にまんまと騙され全てを失った男が、その日ぐらしの盗賊に身をつやして1ヶ月。男に大きな仕事が転がり込んできた。


 仕事を持ちかけてきたのはローブをまとった女。北軍おかかえの宮廷魔術師らしい。


「北軍の将軍の娘の家に忍び込み、その術を盗んでほしい」

「うはw なんだそりゃww 書物となると、えらいかさばるぞw」

「別に持って帰らなくても良い。あんたはただ、その目に書物を映すだけだ」

「うはw わけわかんねww」

「あんたは私に片目をあずけてちょうだい。私はその瞳を通じてあんたの動きを確認できるから」

「うはw 俺片目うしなうのかww かなりキッツイな」

「報酬ははずむわ。もちろん前金も。それに仕事が終われば片目は返してあげる」


 訳がわらないが、どうやら片目を預けてしまえさえすれば指示出しとかはすべてやってくれるらしい。

 そしてなにより報酬がすごかった。


 しめて金貨5枚。かるく2年は遊んで暮らせる大金だ。

 しかも前金で銀貨5枚がつくときた。


 サカムーは、言われるがま女の差し出した契約書にサインをして、されるがままに片目を抜き取られ、言われるがままマードック将軍の愛娘の屋敷へと訪れた。


(この屋敷のどこかに、不死兵団を生み出す研究を記した書物があるはずよ)


 頭の中に、ローブをまとった女の声が響き渡る。


「ふはw それじゃあお仕事開始といきますかw」


 全身黒づくめで左目に眼帯をしたサカムーは、ニッチャリとした笑みをうかべた。

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