第9話 不死団兵の日常。

 オオバラ平原での戦いから1ヶ月後、俺は相変わらずの不自由な毎日をおくっていた。

 不自由というのは、文字通り身体が不自由ということだ。


 カチカチに固まった身体は、あいも変わらずほとんど動かすことはできない。

 毎日、けっこうキツめなリハビリをこなすことで、なんとか両脇とひじ、股関節と肘、それから最初から自由のきく足首がかろうじて動くだけだった。


 あいも変わらず、日常生活すらおぼつかない状態だ。


 おかげさまで、食事や風呂、そしてしもの世話までアナとカナベルのメイドコンビの世話になりっぱなしだ。


 仕方がないことだとはいえ、いまだに恥ずさしさが拭えない。

 とはいえ、腹が減るのも、シモから出てくるものも、全てが生理現象だ。こればかりは、もう、どうしようもない。


 俺は、恥をしのんで、若い女性に介護をされつづける生活を続けていた。


 なまじ魂があるだけに、腹が減るし、シモも出る。

 そしてそれは、魂を宿した俺だけの特徴だ。

 他の不死兵団は、黄色い札を貼られて霊安室に安置され眠り続けている。

 綺麗好きなレイニィの言いつけで、一日おきに風呂に入れられるだけだ。


「俺なんかのために迷惑をかけるな」


 俺は、下着姿のアナとカナベルに全身を洗われながら、日課になった謝辞をのべる。


「「うふふー。気にしないでくださいー。役得、役得ですー♪」」


 アナとカナベルも日課になった返答を返す。(役得とはどういう意味だろう)


「こんなに迷惑をかけるなら、俺も他の不死団兵みたいに、魂が戻らなければよかったな……」


 俺は心の底から思ったことを述べた。

 俺はとして、明らかに効率が悪いとおもったからだ。だが……


「そんな悲しいこと言わないでくださーい!!」

こんはくに戻す術の完成は、レイニィ様の悲願なんですからー」


 アナとカナベルは涙目になって訴える。


「そうなのか?」


「はいー。9號さんの反魂はんごんの術が成功した時の喜びといったらなかったんですから!」

「レイニィ様は、もともと反魂はんごんの術を研究していたんですー。不死兵団はあくまで反魂はんごんの術の副産物なんですー」


 ……そうなのか?


 だとしたら、なぜ、レイニィは反魂はんごんの術の研究をはじめたんだ??

 俺はアナとカナベルの、水に濡れてすこしずつ透けていく下着から目を逸らしながら、ぼんやりと考えていた。

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