第4話 紫の肌の8人の男。
メイド服を着直したアナとカナベルは、俺の乗ったキャスターをゴロゴロと転がしていき『霊安室』と書かれた部屋のドアを押す。
木製のドアは「ギギギッ」ときしんだ音をたてながら、ゆっくりと開く。
「「はいはいー。新入り1名、入りまーす」
アナとカナベルは、棺桶だらけの部屋に入ると、キャスターをゴロゴロと転がして一番奥へと進んでいく。
そして、蓋の開いた棺桶のまえにキャスターを横並びに置くと、俺を棺桶へと入れる。
? どう言うことだ??
「はいはいー。レイニィ様がお越しになるまで、ちょっと眠っていてくださいねー」
アナの言葉にカナベルがつづく。
「はいはいー。このお札でちょーっとおねんねしていてくださいねー」
カナベルが、俺のひたいに黄色い札を貼った途端、俺はたちまち深い眠りについた。
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夢を見ていた。故郷の夢だ。
俺の故郷は痩せこけた土地の貧乏な農村で、麦がほとんど育たない。
代わりに甘い芋を育てていて、大量の芋と、芋の蔓を編んだロープやカゴを、街でわずかばかりの小麦粉に替えて生計を立てていた。
俺はその貧しい農村の次男で、食い扶持を減らすために街に出て傭兵になった。
貧しくて、芋を使った蒸留酒をあおるくらいしか取り立てて娯楽のない故郷に未練はない。
いや、たったひとつだけ、幼馴染のコニーには悪いことをしたと思っている。
「3年だけ待っていてほしい。そうしたら冒険者として名を上げて、お前を迎えに戻ってくるから……」
そう言って村をとびだしてはや5年。冒険者としても、傭兵としても鳴かず飛ばずのまま、城下町でその日ぐらしの生活をつづけてきた。
コニーは、まだ待っていてくれているだろうか?
……いや、そんなことはあり得ない。
そもそも、年頃の娘が3年も一人の男を待ち続ける訳が無い。
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俺は、故郷の村の入り口に立っていた。いつの間に?
いや、そんなことはどうでもいい。俺は大量の金貨の入った袋を持っていた。
なんだこの大金は??
い、いやそんなことはどうでもいい。
これだけの金があれば、充分にコニーと一緒に暮らしていける。
「コニー!!」
俺は、後ろを向いているコニーに話しかける。しかしコニーは振り向かない。
「コニー?」
俺は、見慣れた金髪のコニーに話しかける。しかしコニーは振り向かない。
「人違いじゃない?」
コニーが振り返る。いや、こいつはコニーじゃない!!
白衣を着て、銀の細フレームの眼鏡をちょこんと乗っけた、子供のような体躯の少女は、俺の顔を満足そうにながめている。レイニィだ!
「あなたの名前は下僕9號! アタシのために死ぬ気で働きなさい!
まあ、死にたくても死ねないんだけどね♪」
「うわああああ!!」
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俺は、白衣を着て、銀の細フレームの眼鏡をちょこんと乗っけた、子供のような体躯のレイニィに、ひたいに貼られたお札を剥がされる。
そこには、俺と同じ紫色の肌をした、俺と同じ東洋風のデザインの貫頭衣を着た、8人の男が立っていた。
レイニィは、俺たち紫色の男を満足そうに見回すと、とんでもないことを言い放った。
「さあ! 今日がアンタたちの初陣よ!
アタシと一緒に、南軍劣勢の戦況を派手にひっくり返しましょう!」
? どう言うことだ??
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