第3話 全身くまなく洗われる男。

 翌日、俺はぐるぐる巻きだった包帯を外された。そして衝撃を受けた。


 全身が……紫色に変色している??

 俺の身体をようく診察したレイニィは、スレンダーな胸を張る。


「うん、上出来上出来♪ 良い感じに身体の不死化が進行しているわ!

 喜びなさい下僕9號! あなたは今までの中で最高傑作よ!!」


 いや、不死化が進行してるってそれ人外になってるってことじゃないか!

 俺は全身をようく観察する。よく見ると身体の至る所に縫合したあとがある。そして、あることに気がついた。


「これ、俺の右腕じゃあない!! 左脚もだ!」

「あー、あんたの死体は撤退戦の真っ只中に転がっていたからねー。ボロボロだったから修復に苦労したよ。どうだい、新品の右腕と左足は。敵兵の貴族様から奪った一級品だよ♪」


 なんてこった……衝撃の事実に頭がクラクラする。

 俺はふらつく頭を支えようとした。その時だ。


 ビヨーン!


 俺の腕は、前にまっすぐと伸びたままカチンコチンに固まっている。

 なんだ? これ??


「あー。アンタは僵尸キョンシーになりたてだからね。関節はまだまだ硬いんだ。ま、少しずつほぐれてくるから気にしないでくれたまえ」


「おいおいおい! ちょっと待ってくれ!

 こんなんじゃ、まともに生活すらできないじゃないか!!」


「大丈夫、大丈夫。身の回りの世話は、メイドたちが世話してくれる!

 アナー。カルベルー。こいつを風呂にいれてやれ。手術をしてからしばらく風呂にはいってないからな! 頼む」


「「はいはいー! ですねー」」


 さわやかな返事と共に、ふたりの少女がガラガラとキャスターを運んできた。

 メイド服を着た、赤茶色の髪の毛の双子とみまがう少女のふたり組だ。

 アナとカナベルは、慣れた手つきで俺をキャスターの上に乗せると、ガラガラと湯浴みの間に連れて行く、


「「はいはいー! 一緒にお風呂に入りますよー」」


 アナとカナベルは慣れた手つきで洗い場にタオルを置き、俺をキャスターから下ろすと、またまた慣れた手つきで俺を丸裸にする。


 そうして、脱衣場でいそいそとメイド服を脱いで下着姿になると、


「「はいはいー! に洗っていきますよー」」


 と、満面の笑顔で俺を洗い始める。

 俺の身体はたちまち泡だらけになり、石鹸の良い香りが立ち込める。


「「はいはいー! 気持ちいいですか?」」

「あ、ああ……」

「「お兄さんイケメンだからー。気合い入っちゃいますー」」


 気まずい……。


 俺は、少しずつ少しずつ水に濡れて透けて行くふたりの下着姿に、目のやり場にこまりながら、身体の隅々まで念入りに洗われて、念入りにお湯をかけられ、程よい湯加減の湯船に浸かる。


 そうしてほどよく温まったところで湯船から引き揚げられると、ふかふかのタオルで念入りに身体を拭かれると、東洋的な装飾品の施された貫頭衣を着せられる。


「「それじゃー。先輩たちにご挨拶に行きましょーかー」」


 俺は、メイド服を着直したアナとカナベルに再びキャスターに寝かされると、長い長い回廊をガラガラと運ばれていった。


 ……先輩って、誰だ??


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