第217話 妖怪殺しのスペシャリスト
「明菜、それにみんな、生きてたの!? 」
「酷いなぁ莉子ちゃん。人の事勝手に殺すなんて」
明菜はそう言って微笑んだ後、眉間にシワを集めた。
「でも説明してる時間はない。今はあいつを何とかせんと」
他の特殲も全員集まり、空に浮かぶ赤目の空亡を睨みつけた後、各々の武器を彼に向ける。
「覚悟しとき? あんたが今から相手するのは、妖怪を殺すスペシャリストや」
「人間の分際で、俺を殺すって? できるとでも? 」
「出来ないと思ってたら挑まんよ」
「良いだろう。片割れの前に皆殺しにしてやる」
次の瞬間には、明菜達、特殲の面々と赤目の姿は消えていた。
結界で隔離したのだろう。私は弾き出された空亡の肩を抱いて、葵と向き合った。
***
「“現世”」
空間を直接切り裂く不可視の斬撃が、明菜達全員を襲う。
拡散された空亡の技は、東雲朝水の腕を切り落とした。
「先制失礼」
空亡の口角がニヤリと持ち上がった。
「先制? 先にやったんはうちらの方やで? 」
「は? 」
明菜が口をそう口を開いた瞬間、空亡の足首が切断され、6メートルほど離れた場所にポトリと落ちた。
彼が慌てて背後を振り返ると、染めた金髪をワックスで逆立てた青年、西郷拓真が、彼の影から体を半分出している。
その手に持つ鎖鎌は既に振り抜かれていて、刃についた赤黒い血液が、今しがた空亡の足を斬った獲物であることを示していた。
――影の中!? いつの間に!
「ちっ! “現世”! 」
「お返しですよ」
朝水の踏み込みは、空亡が知覚できないほどに速かった。切り落としたはずの腕で薙刀を振るい、彼の体を切り裂く。
「“幽玄神威”! 」
妖力の充填を少なくする代わりに、発生を早くした『幽玄神威』。
朝水はそれに半身を破壊されながらも、瞬時に再生させてそのまま突っ込んでくる。
――馬鹿な! なぜ治癒できる!?
彼が放った技には、細工が1つされていた。
妖力を傷口に残すように調整し、霊力による治癒術を遅らせる技術である。超高等テクニックだが、この女はそれをものともせず治癒していく。
人妖問わず、これほどの治癒術の使い手は彼女以外にいないだろう。
「“ライコウ”」
雷を纏った斬撃。
明菜の所有する式神、『ライコウ』の一撃は、空亡に対しても有効打になり得た。
――馬鹿な! こいつら……!
「“
芙蓉の放ち、精製した1000発の銃弾が全て空亡の体を貫く。
――人間の身で……!
「“
「“
悠聖が生み出した黒い腕が空亡の体を貫き、固定。そこに茜が力任せに刀を振り落とした。
当然、彼の体は引き裂かれ、内蔵が飛び出している。
――本気で、
彼の頭には、神野から聞かされた言葉が蘇る。
――現代の人間は、君がいた時代の奴よりよっぽど強いよ。
「あながち、間違いでも無かったか! 」
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