第214話 突破口

 東京の街の遥か上空、私と葵は互いに霊力を消費して打ち合っていた。

 私がパンチやら蹴りやらを繰り出す度に、彼女は結界を使ってそれを防ぐ。

 圧倒的な技術によって成り立つ彼女の結界術は、とても越えられる気がしない、高い壁だった。


「教えてよ、葵! あなたの本当の気持ち! 」

「もう言ったでしょ! ぬらりひょんのところで言ったことが全てだよ! 」


 彼女の蹴りが腹部に突き刺さって、腹の奥から空気がせりあがる。

 苦しさを堪えて、私はその足を掴んで思い切り投げ飛ばした。

 オフィスビルのガラスを破って、葵が転がっていく。

 中にはまだ人が居たようで、動揺した会社員達が逃げ惑っていた。


「嘘つけ! だったらなんで私を殺さなかったの! 」


 出し惜しみなどしない。出力を全開にして、ただただ、技をぶつける。

 咄嗟に構築された結界に、ヒビが入った。


「私が邪魔することなんて、分かりきってたでしょ!? なんでこんな中途半端なことすんのよ! 」


 そのまま殴り続けると、やがて結界が砕け散って、彼女の頬を私の拳が撃ち抜いた。

 大きく後ろへ飛ばしたが、すぐに体勢を立て直される。特殲ともなれば、体術でもトップクラスだ。


「“破式 七重結界”! 」


 私の胸の辺りに小さく造られた結界が輝きを放ち、そのまま爆発する。

 やはり、彼女は結界を爆発させて、霊力のエネルギー波を生み出せるようである。


「答えろ、葵! “竜骨”! 」


 再び窓から飛び出した葵に向かって、拳を振り抜く。

 寸前のところで体をかすめたが当たることはなく、衝撃でビル中のガラス窓が砕け散った。


 ――これ弁償するの私かなぁ。


 そんなことを考えつつ、空を飛んで彼女を追いかける。

 視界に捉えた彼女を追いかけて、速度を全力で上げて追いかけ回した。

 戦いながらの体重操作で、体の使い方を誤ったのか、葵が空中でバランスを崩す。


 その隙を逃さないよう、大きく拳を振りかぶって殴りかかった。


「“破式――”」


 彼女の前には、何層にも重ねがけされた結界があった。

 今まで逃げ回っていたのは、これを構築していたのだろう。


「しまっ――! 」

「“百重ももえ結界”」


 巨大な光の球が、夜のネオンよりも激しく光った。


 当たる寸前、霊力の向きを変えて全力で下降したおかげで死にはしなかったが、かすった肩がジュクジュク傷んでいる。

 だが、この一連の戦いで、私は突破口を見つけることに成功した。


 ――もしかしたら、使えるかも。


 多分この作戦は人道に反する。

 失敗したら、多くの人間が死ぬだろう。賭けだった。

 ふわっと飛び上がって、葵も目線を合わせる。


「よく避けたね。でも、次はないよ」

「大丈夫よ。だって葵は、

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