第105話 再会
全員、一斉に霧雨に向かって攻めかかった。
時雨と対等に戦っていたとはいえ、空亡含めたこの人数の相手はできないだろう。
そう踏んでいた。
それまで大人しくしていた百足が、突如として動き出して私達の行く手を阻む。
「なんのつもり? 」
「言っただろう? 嫌がらせだと」
百足の体が内側から裂け始めた。体液を撒き散らしながら、体の中から何かが出てくる。
「天狗……? 」
黒い翼を持った妖怪たち。天狗に他ならない。
見たところ、まだ子供の天狗までいる、
また何か特殊な霊術かと身構えると、隣にいる時雨がわなわなと震えていた。
「そんな……これは、あの時の……」
またその奥にいた雪も、口に手を当てて目に涙を浮かべていた。
「なんで……
雹と雷。雪が話していた、昔の反乱事件で亡くなった彼女の子供。
今しがた百足の腹の中から出てきたあの妖怪が、そうだと言うのか。
「あんたまさか……、嫌がらせって……! 」
「その百足は、妖力の塊よ。その源になっているのは、ここ80年ほどで死天狗怪の魂だ! 」
百足の体から生み出された天狗が私達に襲いかかる。
空亡がその内1人を蹴り飛ばした。
「あぁ……痛い……、時雨様……」
「助けて……頭領様……」
「ま、まさかこの天狗達……」
言葉を発した。意味のある言葉を。
ただ単に死したものの魂では無い。意識、痛覚がある。
「お母さん……助けて……」
「痛いよぉ……お母さん……」
「あぁ! 雹、雷……! お母さんはここよ……」
雪が吸い寄せられるように、雹と雷と呼ばれた子供天狗に近づいていく。
「雪さん! ダメ! 」
彼女の腹を、雹の腕が貫いた。
吐血しながらも、彼女は2人を抱きしめようとする。
意識はあっても体の自由は無いのか。
傷を回復することもせず、雪は2人の子供をその手に抱くことしか考えていない。
その瞬間にも、彼女の肉体に天狗達の攻撃が突き刺さっている。
「離れてください! 」
時雨が彼女の肩を掴んで、無理やり子供達から引き剥がした。
その間に、朝水が雹と雷に向かって薙刀を振りおろそうとする。
「ま、待って! 」
雹の体が切り裂かれる。
彼の絶叫が耳に痛い。幼い子供の泣き声だ。
朝水は構うことなく雷も切り裂いた。再び叫び声が木霊する。
「止めて! 止めてください! 子供なんです! 」
「ふははは! なんとも無様な! 」
私達を見て、霧雨は笑っていた。悪趣味なんて生易しいものじゃない。本物のクズだ。
発砲音。霧雨の眉間に1発の銃弾が撃ち込まれた。彼は意に介することなく、その傷を塞いだ。
芙蓉が銃口から煙を出しながら、霧雨を睨みつけている。
「何笑ってんだよ……てめぇ! 」
彼女は私と空亡、そして時雨に言う。
「お前たちはあのジジイをやれ! ここは私達で何とかする! 」
その言葉を受け、私は猛然と霧雨に立ち向かった。邪魔する天狗達を空亡が薙ぎ倒す。
時雨も、半狂乱になった雪を芙蓉に任せ、私達に追従した。
「あのジジイ、絶対に許さない! 」
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