第十八話 悪役令嬢の復讐計画
そもそも、私がこの世界にやってきたのは自分の理想とする悪役になるためだ。
アルワデ自身に入れ替わりをお願いされたというのもあるけれど、元はと言えば私自身が彼女の役、つまり悪役になることを夢見ていた。
だからこそ、この入れ替わりを承諾したのだ。
それからもう一つ。
『アルワデの復讐を果たす』ことも目的の内だ。
別に、彼女に頼まれたわけじゃない。
けれどギロチンで首を切られた時に投げられた台詞が気に入らなかったのだ。
売られた喧嘩は買った上で三倍返し、が祖母ちゃんの教えである。
他にプレイ中に物語の影で糸を引く
悪役はアルワデ《わたし》だ。
その役割をしたいなら、無駄に暗躍せずに表に出てこいって話なわけで。
ちなみに、私が敵認定したアコーニ=リアネストロ伯爵令嬢というのは、取り巻きその一だったにも関わらず、アルワデが斬首された後はちゃっかりヒロインのマブダチに収まり、上手く立ち回った末に隣国の王妃にまでのぼり詰めるという、中々に面の皮の厚い性格をしたキャラだ。
プレイ中から絶対裏があるだろうなとは思っていたけど、どうも悪役令嬢顔負けのあくどい事をやってたようだ。
敵としては申し分ないものの、こうしてリアルに関わると正直胸糞悪いったらない。
こういうのは、私が求める悪役像には無いものだ。
権力のある者が無いものを虐げ使うなんてのは、三流悪役でも出来るチープなやり方である。
大いに気に入らない。大いに、だ。
さて———どうやり返してやろうか。
私の中で久方ぶりの闘志が沸き上がる。
こんなのは祖母ちゃんにチャンバラごっこで打ち負かされた時以来だ。
ふつふつと燃え上がる自分の内なる声に耳を傾けると、やるべきことが見えてきた。
エル君は美少年だけど、同時に敏い少年でもある。
ザイスを相手にして無駄な抵抗もせず、一目で自分と相手の力差を見極めた。
私を狙うのは失敗したけど、確実に将来有望な子だろう。
それに、彼はきっと……優しい子だ。
ならば。
「おい、お前。何をさっきから変な顔してるんだ」
暫し計画を練っていたら、ザイスがなぜか梅干しでも食べたような渋い顔で私を見ていた。
せっかくの美形が台無しである。
てか変な顔とはなんだ。
乙女に向かって失礼な。
少々むっとしたけれど、気を取り直してエル君に視線を戻す。
ひとまず話を進めよう。
彼が私を殺す理由は「人質」と「弱み」の両方だと言っていた。これはイコールで繋がるものだろう。
恐らく、エル君は家族かもしくは友人の命を握られている。
悪役が取る手法としては王道だけど、スマートじゃない。
言うならば、かなり下品。
「エル君、人質に取られているのって家族? 親とか、兄弟とか?」
「……親は、いない……いるのは……アロ姉さんと、テーナ姉さんだけ」
「エル君は末っ子?」
「うん」
確認していくと、思った通りの答えが返ってきた。まあそうだろうな。
次に、なぜ彼にしたのかという理由を考える。
アルワデの設定と記憶からストーリー上の現在地を予想するに、恐らく今は主人公が登場する丁度一年前になるはずだ。
つまり———
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