第10話【イラストあり】気になって仕方ないこと

 「聞こうかな……でも聞けないな」


 朝からこれの繰り返し。

 ベッドの上でゴロゴロしながら、トーク画面にメッセージを打っては消していた。

 というのもこびり付いた油汚れみたいに、昨日の光景が頭から離れなかった。


 「んぁぁぁぁもうっ、勉強が手につかないっ!!」


 うちの学校は所謂自称進学校、週明けの月曜には数学の小テストがあった。

 落ちれば水曜朝に追試を受けなければ行けないわけで、面倒だし何より奏と一緒に学校に行けなくなってしまう。

 こうなったら家に行って直接聞こう、これが私なりの解決方法だった。

 

 『今からそっち行くね』


 奏の家までは歩いて五分くらいの距離、『えっ?』という奏の返信を置き去りにして、家を出た。

 

 インターホンを押すとピーンポーンという間の抜けた音が響いて待つこと三十秒、呆れた顔の奏が出てきた。


 「早いな、おい」

 「どうしても聞きたいことがあって来ちゃった!!」


 そう言うと、僅かに奏は身構えた。

 やっぱり直接聞きに来て正解だったっぽいね。

 なんとなく確信めいたものができた。


 「ねぇ金曜の放課後、彩莉ちゃんと一緒にいたよね?私との約束、破っちゃったのかな?」


 不思議と躊躇うことなく、すらすらと言葉は出てきた。

 ひょっとしたら今の関係を壊してしまうかもしれない問い、そんなことを面と向かって口に出来たことは自分でも驚きだった。

 

 「……こないだ、先輩に踏み込んじゃったこと聞いちゃっただろ?だから謝罪してたんだよ。俺さガキだから紗奈みたいに大人びた対応が出来なくてさ」


 私の名前が奏の口から出たことに感じる安心感、それだけで疑いなく奏の言うことを信じてしまいそうだった。

 

 「本当にそれだけ?」

 「そうだよ、お金を対価に関係を迫るような真似はしてないから安心してくれ」


 面倒でしつこくて重い女、というような認識はされたくないから、この辺りまでにしておくべきなんだろうことはすぐに分かった。


 「まぁ、奏にはそんな勇気も無さそうだもんね」


 心のどこかで彩莉ちゃんが奏に手を出すはずがないという気もしていた。

 なぜなら、ある程度の覚悟を持ってウリをやっているだろう彩莉ちゃんは、きっと自身が汚れてしまったということに負い目を感じているはず。

 そんな彼女が、仲の良かった年下の男の子と関係を持つことになったら相当苦しみそうだからだ。

 彩莉ちゃんは昔からそういう性格だった。


 「余計なお世話じゃないか?」

 「うぅん、奏はヘタレなくらいが丁度いいの!!」


 私に対してはもうちょっと積極的になって欲しいんだけどね?

 ともあれ疑問は片付いたしこれで気分も晴れやかに勉強が出来そうだった。

 でも折角だし―――――


 「奏、数学教えてくんない?」


 もう少し奏の傍にいたい気分だった。




 †お知らせ†


 彩莉先輩の妹の心晴ちゃんのイラストを近況ノートに掲載しておきます。

 可愛いので見てってください(๑♡∀♡๑)

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