第62話 相乗効果
さて言うまでも無いことだが「ラスシャンク・グループ」の構想と、「ダイモスⅡ」の構想には似た部分がある。
それは「加工して売る」という部分だ。
「ダイモスⅡ」は「クーロン・ベイ」から大麦を仕入れて、それを酒に加工することで価値を高めて売る。
「ラスシャンク・グループ」はその手法を「クーロン・ベイ」で行えば良い、と考えたわけだ。サトウキビを輸入して砂糖を作る。そして作った砂糖は間違いなく買い取ると。
これをどちらが優れているかと比較すると、やはり「ダイモスⅡ」になるだろう。
従来の
だが新酒が本格的に醸造を始めれば、市場原理に従って自然と農家が裕福なるだろう。それは「ラスシャンク・グループ」が行った小麦のブランド化よりもドラスティックなものになると予見できる。
さらには「クーロン・ベイ」すらも新酒を売りつける対象として捉える販売戦略。
この点は確実に「ダイモスⅡ」が上回っている。
で、あるなら――
「ラスシャンク・グループ」はそれを真似ればいいのである。
砂糖で覆われたドライフルーツをふんだんに使ったケーキ。それを「クーロン・ベイ」に売り込んだのである。
真似をして悪いという法はないのである。
しかもドライフルーツも砂糖も食材の保存に最適だ。「ポッド・ゴッド」で作って「クーロン・ベイ」で売るのには、冷やすことが必要な新酒よりも圧倒的に手間が少ない。
さらにはケーキに蒸留酒を染みこませたりすれば、さらに保存に向くことになり、しかもバリエーションも増える。となれば別の小麦を使うことになり需要も拡大するのだ。
そこで新たなるアイデアを出したのがダスティである。
砂糖に着色して、ケーキに目で楽しませるデコレーションをすることを思いついたのである。
こうして「ラスシャンク・グループ」は「ダイモスⅡ」を真似ながら、先に「クーロン・ベイ」の市場を開拓したのである。これによって「クーロン・ベイ」は砂糖によって富み、都市部の市民に潤いをもたらした。
その状態で「クーロン・ベイ」および「ポッド・ゴッド」で一斉に売りに出されるのが新酒である。醸造と熟成に時間がかかるので、自然に生じたタイムラグであるが、これ以上無いほどのタイミングを生み出したと言えるだろう。
そしてそのタイムラグの間に、ミオはイブに面会を申し入れた。
文句をつけようというのではない。むしろその逆。
ミオはドライフルーツケーキを昼の「ダイモスⅡ」において提供したいと訴えたのだ。
イブにはその許可と協力を得たい。
ミオの目線の先にはあくまで「ダイモスⅡ」が中心にあるようだ。
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