第61話 甘い生活

 「ダイモスⅡ」が参事会の要求に応えつつある状況において、同じように無茶振りをされた「ラスシャンク・グループ」はどのように対処したか?


 実は「ダイモスⅡ」よりも動きが早かったのである。

 やはりグループに「ボムズドラゴン」というパン専門店がる事が大きかったのだろう。


 まずは「小麦」と大雑把にまとめる事をやめて、収穫した地域によってブランド化したのである。おいしさで等級分けしたのでは無く、あくまで味の違いでカテゴライズを始めたわけだ。


 この方法カテゴライズは参事会から要求される前に「ラスシャンク・グループ」が独自に始めていたのだ。穀物に付加価値を付ける、という事ならすぐに対応出来たのである。


 さらに「ラスシャンク・グループ」は、次の手を繰り出した。

 ドライフルーツを使用した焼き菓子、つまりは「ケーキ」の生産に着手したのである。


 「ダイモスⅡ」が「冷やす」事を強みとするなら「ラスシャンク・グループ」はこういった形で「ポッド・ゴッド」特産と言っても良い、フルーツ生かそうと考えたようだ。


 実際「ラスシャンク・グループ」が手がけるドライフルーツはよく出来ており、これだけでも評判は上々だったのである。


 そこでブランド化した小麦の中で最もケーキに適したものを選び、そこにドライフルーツを組み入れる。

 だが、それだけではまだ「ラスシャンク・グループ」は参事会の要求に応えたとは言いがたかった。


 当然「ラスシャンク・グループ」には二の矢があった。

 ずばり砂糖である。


 焼き上がったドライフルーツケーキを、真っ白な砂糖で覆ってしまう。

 砂糖だけの層がケーキの表面に積み重なるのだ。


 そして、そのケーキを切り分けたときの断面たるや!

 凶悪。その評価が最も相応しい。


 これが「ラスシャンク・グループ」の切り札であり、無茶振りに対する答えでもあったのである。


 最初はピンとこなかった参事会の面々であったのだが、総帥イブは丁寧に説明した。


「『クーロン・ベイ』は自分達の最大の利点に気付いてないのです。あれだけの良港を備えた街はそうありません。ですから砂糖の原材料を大量に輸入して砂糖に加工する。それだけで『クーロン・ベイ』はどれほど儲かるか。それを教えて差し上げれば? あっという間に我々は砂糖無しでは生活出来なくなりますよ」


 つまり穀物に続いて、砂糖についても「ポッド・ゴッド」は「クーロン・ベイ」に依存する様になってしまうと言うことだ。


 そうなれば当然、「ポッド・ゴッド」に偏っていた格差が少なくなっていくということ。「ラスシャンク・グループ」はこれによって参事会の無茶振りに応えた形になったのである。

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