第40話 ミオのアイデア
「ねぇ、パシャさん。私思いついた事があるんだけど!」
と、顔を上げたミオは光り輝いていた。
「な、なんですか?」
「これならさ、
そのアイデアを聞いた瞬間、パシャの三白眼が見開かれた。
さすがにミオはもうなれているので、それで引いたりはしない。それどころか真っ正面からパシャを見据える。
そのミオの視線を受けながら、
「……そうか……それは思いつかなかった。自分でやっておいて何ですけど、エール冷やすぐらいしか使い道を思いついて無かったんですよ」
「あ~、それはね」
ミオが自慢げに胸を反らす。
「タレを作るでしょ? それで時々思ってたの。このフルーツそのまま食べたいって。しかもその後にタレを冷やすでしょ?」
どうやら突然、天啓がひらめいたわけでは無くて、ミオの中である程度の蓄積があったらしい。
パシャは頷きながらそれを聞き、
「……どうでしょう? ここはマクミランさんに相談してみては?」
と提案してくる。
ミオは途端にシュンとなった。
「やっぱり厳しい? 思いつきだけだし。それでマクミランさんに止めて貰おうと……」
「ああ、そうでは無くてですね」
パシャが慌てて両手を振った。
「マクミランさんは顔が広いですし、どういったフルーツを、どのぐらい仕入れることが出来るか具体的な数字が出せると思ったんです。大丈夫ですよ、ミオさん。このアイデアは素晴らしい思いつきです!」
「そ、そう?」
と言いながら、ミオは真っ赤になって頭をかいた。
当然、光も強くなっている。
そんなミオの様子に気を良くしたのか、パシャが上機嫌で続けた
「いやぁ、これは久しぶりに忙しくなってきましたよ。最近は安定してましたからね。多分……まずは農家の方への交渉になると思います」
そして、その通りになった。
~・~
開店前のミーティングでミオのアイデアを披露した途端、マクミランもパシャと同じような反応を見せた。
「と、とりあえず、今日のノルマは済ませてしまいます。そうですね……明日。明日にでも早速、生産者の方にお話を伺いに行きましょう」
パシャが話をする前に、こんなことを言い出したのである。
ミオとパシャは思わず顔を見合わせた。
そして翌日、スケジュール調整を行って、ミオとマクミランが連れ立って目当ての農家に向かうことになったのである。
この農家が作っているのはメロン。
当然、そのメロンの仕入れも強化したいところではあるのだが、マクミランが言うには、メロンを栽培しているユージという人物が、周辺の果物農家の顔役ではあるらしい。
何をするにしてもユージの協力は不可欠であることは間違いない。
二人は、すっかり身内同然になった東地区の住人によって、「ポッド・ゴッド」の北側に連れて行ってもらうことになったのである。
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