第41話 ガラスの家
すっかりパシャの手が行き届いて、改良された荷車を持っている者も増えた東区画。二つ返事で手すきの者がミオとマクミランを送ることになった。
実際、そうして貰わなければかなり時間がかかることになっただろう。メロンが育てられているのは「ポッド・ゴッド」の北でも海に近い場所であるらしいからだ。
ミオが礼を言って、帰りの足についても段取りが出来上がった頃には、マクミランがユージとの面会の手筈を整えていた。
普通に面識があるようだ。
「すいません。私が『ダイモスⅡ』のミオです」
「はいはい。伺ってるよ。もっとウチのメロンを扱いたいって」
ユージは羊人種族で、そのせいか穏やかな物腰であることが窺えた。男性ではあるようだが、女性らしさもある。
仕事の合間に出てきてくれたのか、ミオとの面会は海からの風を感じることが出来る屋外に自然となってしまった。
だが、とりあえずは不都合が無い。
晴れているし、気候も穏やかだからだ。二人はそのまま話し込んでしまう。
「ほうほう……そんな事が出来るんですね。確かにウチのメロンを冷やして食べれるなら、それはとても美味しい」
ユージは、ゆっくりとした口調でミオの説明に理解を示した。
それどころか、ミオの思いつきに賛成しているようでもある。
「冷やすとやっぱり美味しいですか! というか、そういうことを試すことが出来るんですね」
「試す、というかこちらでは普通に井戸水や海水に浮かべるんですよ。それで幾らかは冷えるんですな。季節にもよりますが」
自分の思いつきは間違っていなかった、とユージの言葉で確信を深めるミオ。
思わず握りこぶしを固めたりしている。
「メロンに限らず、スイカなんかは確実に冷やした方が良い。ウチで面倒見れるのは……ああ、そうだったイチゴなんかもいけるね」
「ユージさん。割り込んですいませんが、ちょっと確認させてください」
マクミランが声を上げた。
すぐさまユージが向き直る。
「はいよ。何かあるのかい?」
「緊急ではないのですけれど……“冷やす”ということを不思議に思われないことが、逆に私には不思議に思えまして。説明をどうしようかと頭を悩ませていたんですよ」
そう言われて、ミオの思考もはたと立ち止まった。
確かにパシャになれているミオ達ならともかく、パシャの生み出した仕掛けに対して、ユージの反応は呆気なさ過ぎる事に気付かされたからだ。
だが、ユージは平然と言葉を返す。
「だって、あんた達パシャさんの知り合いなんだろう?」
予想もしていなかったのだろう。驚かされる二人は固まってしまった。
それを見たユージは首を捻りながら、さらに言葉を繋ぐ。
「僕は直接は知らないんだけどね。随分世話になってる者も多いんだよ。アレをご覧よ」
そしてユージが指した方向には――
光り輝くガラスの家が建ち並んでいたのである。
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