第39話 新たなる力

 この頃のパシャが何をしているかというと例の地下室を拡張して、おかしな機械や装置の生産にかかりきりになっていた。マクミランの要求が止まらないのである。


 そのマクミランは日中ほとんど顔を見せない。

 「ダイモスⅡ」と屋台が動き出す、日が傾き始めた頃にはきっちり姿を見せるが、それ以外はあれこれ動き回っている。


 今はポッド鶏の育成についてコネを広げている最中のようだ。契約農家を広げているらしい。


 このマクミラン、そしてパシャも驚くほど自分の給金にこだわりが無い。

 仕事以外に関心が向かない質のようだ。

 それがさらにミオをモヤモヤさせるのだが……


「ミオさん、どうかしましたか?」


 お腹が減ったのだろう。地下室から出てきたところで、パシャはミオのため息を目撃してしまった、という所だ。


「ああ……パシャさん。お昼ぐらい一緒に食べようよ。何だか最近は顔も見てない気もする」

「俺の顔ですか? いやそれは……」


 自分の三白眼については自覚があるパシャである。

 そのまま、誤魔化すように話を元に戻した。


「それよりミオさん。何か問題がありましたか?」

「それがねぇ。問題が無いのが問題というか……」


 そう言いながらミオが、手早くパシャのために昼食を準備する。


「あ、ありがとうございます。では、お話伺っても?」

「そうね。もう、そういう流れだし――」


 実際、食事の合間に愚痴を聞いて貰うだけでも違ってくるだろう。

 それぐらいの気持ちでミオは、自分の気持ちを確認するかのようにパシャに説明した。


 それでもミオの発光が揺らいでいる。

 頷きながら真剣に聞くパシャ。


 その二人の姿は、本当の父娘のようだったが――


「実はですね、ミオさん。用意していた物があるんですよ」


 いつものが始まった。

 ミオは随分久しぶりに聞いたと思ったが「ダイモスⅡ」がここまで順調にいっているからには、パシャがあれこれと手を入れたことは疑いようが無い。


 ミオは呆れ半分にパシャに説明を促した。


「確かにミオさんが考えられているように本店が屋台と同じでは、お客さんが足を運ぶ手間が問題になる可能性があります。そこで俺は本店と屋台との差別化を考えていたんです」


 それは確かにミオの悩みと一致する部分もある。


「そこで俺は『冷やす』を徹底的に強化することにしたんです。カウンターの下を見て下さい。ああ、もちろん厨房側ですよ」


 そう言われて、ミオが回り込んでみると、何やら扉がある。

 そのままミオが開けてみると――


「どうです? 冷えてるでしょう? これはなかなか使い道があると思うんですよ」


 パシャの言葉通りに、カウンターの下には冷気が充満していた。

 その冷たさを感じたミオの頭にひらめくものがあった。

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