第11話 搦め手二つ

 「ラスシャンク・グループ」は「ポッド・ゴッド」において勢力を拡大する外食産業グループだ。


 ひなびた田舎町と目される「ポッド・ゴッド」で、こういった外食産業に力を入れる意味がわからない、とは最初から言われていた部分である。


 しかし「ラスシャンク・グループ」は、そういった声に構わず事業を進め、「ポッド・ゴッド」において、ある程度の地位を確保してしまった。


 基本的には北方の料理を提供することが多い「ラスシャンク・グループ」。

 現在はそれにこだわらず、様々な店舗を運営している。


 さらにはそういったレストラン、あるいはホテル目当てで「ポッド・ゴッド」に訪れる者も多くなってきていた。

 こうなると「ポッド・ゴッド」の参事会の覚えもめでたくなるというものだ。


 ここに「ラスシャンク・グループ」の戦略が見えてきたとも言われているが……


「『ダイモスⅡ』……マクミランはどう思いますか?」

「よくわからないのは、パシャという人物ですね」


 イブの質問にマクミランは淀みなく答える。そしてそのままイブの前へと移動した。


「『ダイモスⅡ』の再開は早すぎます。いえ、そもそも再開できたことが異常です。後から状況を調べてみて判明したことですが」

「その不思議を受け持っているのがパシャ……調べたんですよね?」


 マクミランは頭を下げながら首を横に振った。

 調査はしたが成果はなかった、ということなのだろう。


「そうですか……ではどうしましょう? 別に放っておいても良いと思いますけど。あの三人にはそこまで付き合わなくても良いですし」

「それはそうなのですが、不思議は目に見えています。ですから、そこは確認してもよろしいかと」


 イブの判断に、マクミランが異論を挟み込んだ。

 意外に感じたのだろう。イブが身を乗り出した。


「その不思議とは?」

「例のタレですが……そういった材料を仕入れている形跡が無いのです」


 同じ外食産業だ。仕入れの情報に関しては、自然と耳に入ってくる。

 それなのに仕入れの形跡が無い事は確かに“不思議”と言えるだろう。


「なるほど……そこから調べてゆくわけですね。搦め手ですか」


 イブがマクミランの言葉に頷いた。それは調査を進めよ、という指示でもある。

 だからこそマクミランはさらに続けた。


「実はもう一つの搦め手と組み合わせようと思案しております。許可をいただければ……」

「それは?」

「参事会に問いただしてみようかと」


 イブは少しの間だけ思案したが、もう一度マクミランに頷いて見せた。

 パシャに対しては、イブも不思議に思うことが確かにあったのだ。

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