第6話 希望という名の絶望

 舞台上に目を戻すと。


 ハルオが、アキヒトの持つ宝石を奪うところだった。


「この宝石、俺の心臓より大きいな」

 

 アキヒトに向かい、言う。


 そして、ハルオが、アキヒトの心臓に手を、当てる。


「この心臓を、俺だけのものにするには」


 その言葉は、客席に向かって聞こえた。


 アキヒトは、気づかない。


 客席から見たら左半分が仮面で隠れているように見えるが、俳優にとっては右半分だ。


 右半分とは、なんだ。


 あの下に、何を隠している。


 嘘か、本当の感情か。

 

 気づかないが,これは寸劇なのだろうか。


 オペラ座の怪人をもとにした、寸劇。


 登場人物は、二人だけ。


 紀伊國屋では、珍しい、二人芝居だと聞いた。


 まるで、スリル・ミー。


 だが、舞台に立つ二人のミュージカル俳優は、歌を奪われ、ストレートで、肉体をぶつけ合う、それは、まるで、いつ攻撃が入り、ぶつかるかを計算し。しかしながら、予想以上の動きにより、人が死に、首の骨が折れ、危険が伴う。


 階段落ちがそうだったように。


 かつて、日本の関東地方、茨城県にある、水戸市の、ACM劇場、ルネサンス時代、英国において栄華をほこり、もしもいなかったら、出版社は困っただろうな、と井上ひさしは、俳優に歌わせたんだ、ウィリアム・シェイクスピアの時代、シェイクスピアは、この形式、額縁ではない、この劇場で聞いた、地球座、グローブ座で、この耳ではっきり聞いた。


 わたしの弟、階段落ちで死にました。


 たったひとりの弟を階段落ちで失い、心が壊れた、紫のコートを着た女、この役を演じたい、そうすれば、憎い弟を舞台上で殺せる。


 わたしの実の親は、弟しか、息子しか欲しくなかった、だから、わたしは、いらないんだ、だから、階段落ちで、弟が死ねばいいと思った。


 でも、もし、階段落ちでヤスが死んだら?


 

 

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