第7話 仁義なき戦い
紀伊國屋のヤスと違って、ACMのヤスは、大階段を転がり落ちた。
一回限りの公演だった。
本物の蒲田行進曲、舞台版では、ヤスは階段を転げ落ちない。
転げ落ちるのは、双頭の鷲。ジャン・コクトーの戯曲を、美輪明宏は、一部をのぞいて忠実に翻訳し、演出し、見事によみがえらせた、渋谷の、今はなき、赤いパルコで、ごろごろと役者が転がり落ちてくる衝撃!
役者というのは、階段落ちができてこそ。
このままだと、死ぬ、そうにらんだ、わたしにとってのファントム、エリック、幻影、自分がファントムだと、エリックだと、幻影だと思い込んでいた、あの人がエリックで、あの人にとって、私はクリスティーヌ、ようやく気づいた、20年以上経ってあの人がわたしにとってのファントム、音楽の天使、どうか、死なないで、あの人は、同期を亡くした、わたしも同期を亡くした、今ならわかるのに、私はあの人を捨てた。
男同士なら、分かり合えたのだろうか。
舞台上の、ハルオとアキヒトのように。
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