第4話 蒲田行進曲

 舞台上に目を戻す。

 

 集中、集中。


 アキヒトと呼ばれた人間が、ハルオという人間の呼びかけに答える。


「俺の前ではとりつくろうなよ」


 どうも、親しい関係のようだ。


 それは、同性愛というもの、だろうか。


 男同士の、怪しくも、親しい関係。 

 

 時として、男同士の肉体関係は、商品として消費されやすい。


 真実の愛、とか、性別を超えた愛、とか。


 同性愛。


 男性同士の同性愛は、尊い、賞賛の対象になる。


 見目麗しい二人の役者なら、当然だろう。


 まるでそれは、つかこうへいが書いた戯曲、「蒲田行進曲」における、銀ちゃんとヤスを思い起こす、リマインドオブ、だったか、英語では。想起させる、を。


 米国から離れて何年も経ち、忘れてしまった。英語も、日本語も、両方が空中分解し、脳内で散らばって、かなしく出番を待っている。


 スペイン語もフランス語もイタリア語も、広東語もヘブライの言葉も、トーラーも。


 かつて、シオンの地を目指し、私の先祖は東を目指した。我らが同胞が亡くなったのに、私は生き残ってしまった。


 生き残る価値すらない、わたしが。

 

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