第3話 やさしい少女
いつもニコニコしたとても優しい女の子がいました。その子は綺麗な光る玉をたくさん持っていました。昨日、彼女が村の周りで見つけて集めたものでした。それが何かは分かりませんでしたが、まるで宝石のようだったので彼女の宝物になりました。
次の日、彼女の前に村の人がやってきました。
「綺麗な玉だね。一つもらえないか?」
優しい女の子は、玉を一つその人にあげました。彼はとても喜んで去りました。その様子を見て女の子も嬉しくなりました。
しばらくすると、別の大人がやってきました。どうやらさっきの人に光る玉のことを聞いたようでした。その人も欲しがったので、女の子は一つあげました。そのうち、いろんな人たちがやって来ました。皆、その綺麗な光る玉を求めました。女の子は、全員に一つずつあげました。
彼女の手元には、ついに一つもなくなりました。
ずっとにこにこしていた女の子は、泣き出しました。
一人で泣いていると、背後から誰かがやってきました。見たこともない人物でした。どこか遠いところから来た男の人のようでした。その人は血相を変えた様子で彼女に「このあたりで光る玉を見なかったかね?」と尋ねました。女の子は、自分が集めたけど、村の皆にあげたことを話しました。男の人はさらにパニックになった様子で、その場をぐるぐると回り出しました。そして、彼女の方を振り返って、一言だけ言いました。「もう時間がない」
そう言うと、彼女の手を握って、来た道を逆方向に走り出しました。いきなり知らない男の人にひっぱられ、女の子は怖くなりました。離してほしいとお願いしました。けど、男の人は構わずどんどん走り続けました。女の子は助けを求めるように村の方角を振り返りました。
その瞬間、村は眩い閃光とともに爆発しました。
SF的な文章集 田中空 @kuu_tanaka
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