第2話 遅れてやってきた新入生
ジョージ・ベパルツキンは平凡な少年だ。
ただかろうじて勉強が出来て、ちょっと魔法の才能があっただけだ。
それだけの理由で両親は大喜びで、近所に住んでいて昔魔法を教えていたという先生を紹介してくれて、先生はジョージに勉強を教えてくれた。
そうしたら先生も『君には才能がある』と言ってくれて、ついにはこの名門中の名門、ヴィオーザ学院に入学出来るように取り計らってくれたのである。
ジョージは、自分を天才だと信じた。
王国の民の誰もが一度は憧れる、栄光の第一魔法騎士団に所属出来る。 自分はそんな天才だと思った。
真実、ただの平民ならただ憧れて見上げることしか出来ないこの学院に入学出来たのだから、非凡だったのだろう。
入学試験だってもちろんちゃんと合格した。
が、入学して一か月が過ぎてからは、自分がどれほど『平凡』なのかと思い知らされた。
右を見ても左を見ても、ジョージよりずっと優れた才能の持ち主ばかり。
良い家に生まれ、良い教師に恵まれ、才能だって十分に恵まれている。
彼らは頭だって良いし、魔法の腕前もジョージより上。
更に上を見れば、そんな恵まれた人間達を上回る『本物』の天才たちが沢山居るのだ。
ちょっとそこらへんの人間より魔法が使える――。
その程度で調子に乗っていたジョージは、自分がいかに思い上がりが甚だしく恥ずかしい、学院でも最底辺な存在だと知ってしまった。
だからジョージはクラスの中で可能な限り目立たない、影のように振る舞っていた。
せめて卒業だけはしよう。 大人しくして、問題を起こさないし誰にも目をつけられない存在になろう。
『天才ジョージ!』と称えて送り出してくれた両親に、少しでも恥をかかせないようにしようと、ジョージは決めていた。
「ジョージくーん、おはよーさん」
そう言ってニヤニヤと話しかけてきたのは、同級生のギードとそのお友達だった。
金髪を逆立てていかにも強そうな外見をしていて、ジョージのように気の弱い人間にとっては天敵である。
彼はこのクラスで一番成績の良い人間だ。
学年以外では普通科と貴族科に分かれるこの学院において、普通科の生徒として優秀な人間。
まだ入学して二ヶ月目にも関わらずこのクラスで一番大きな権力を持ち、誰もギードには逆らわなかった。
外見こそこうだが、教師や目上の人間を相手にする時はとても大人しいのだから、同級生以外は彼の本性を知らなかった。
それに彼の実家は有名な魔法使いのストレリウス一族だ。
いずれは貴族の爵位を賜るだろうと言われている、優秀な一族である。
『あのストレリウス家の長男』と言われたら大抵の教師も生徒も少し感心した風の反応をするのだから、ジョージが知るよりもずっと有名にちがいない。
もちろん魔法だって、ジョージよりもずっと上手だ。
自分を天才だと信じて意気揚々と学院にやってきたジョージに、自分の無力さをすぐに思い知らせた天才の一人である。
「おはようって声かけてやってるだろ、挨拶しろよ」
「ジョージくんのくせに態度悪すぎぃ」
ぽんと、ジョージの肩に手が置かれる。
王国に第一から第三まで存在する魔法騎士団はどれもが憧れで、中でも第一魔法騎士団は王族や貴族の護衛を行い、華々しいパレードではよく目立つ位置に立つことが出来る。
『結婚したい男の職業』などという女性向けのランキングでは、第一魔法騎士団は特に人気だ。
ギードほどの優秀な人間なら、きっと第一魔法騎士団に所属出来るはずだろう。
反対にジョージは、普通に卒業がしたい。
まさか魔法騎士になれるとは思っていない、今さらそこまで思い上がることはできない。
ただ、両親を不安がらせるような要素は一つでもない方がいい。
停学や退学などもっての他だ。
卒業して故郷に帰り、適当にお金を稼いで両親に穏やかな生活をさせてあげたい。
「ちゃーんと、宿題してきたんだろうな? ん?」
「あ、う、うん。 してきた、よ?」
ジョージは慌ててノートを取り出した。
昨日自分で終わらせた宿題だ。
「はーい、ごくろーさん」
ジョージがノートを見せれば、ギードはそれを軽く取り上げた。
パラパラとめくり、友達をそれを見せ合い、自分のノートに写し取っていく。
ギードがその気になれば宿題だって簡単なはずなのに、それを面倒がっているのだ。
だからほぼ毎朝、ジョージの宿題を写すのが彼らの日課となっていた。
「魔法の才能は無いくせに、おべんきょーだけは出来るんだもんなぁ!」
「でも、此処じゃ魔法の才能が一番なんだよ」
「俺らみたいな将来有望な人間の踏み台になるために学院に来たんだろ?」
「……あー、そうかも。 うん。 そうかも、ははは」
ジョージは、ギードのような強面の言うことに大人しく従っていた。
これはもちろん、両親と卒業のためだ。
卒業さえ出来てしまえば、もう彼とは関わらなくてもいい。
(あと数年、数年我慢したらいいだけ)
学年が上がれば、ギードとは別のクラスになれるかもしれない。
卒業してしまえば、もう他人。
自分のあまりの才能の無さを認めると同時に、ギードはこの扱いを受けることにも慣れていた。
「はいお疲れ、これからもオレ達のために宿題しろよ。 将来は、第一魔法騎士団に入ったオレがちょーっとは優遇してやるかもしれないからよぉ」
「へぇっ将来の第一魔法騎士団のエースと仲良くなれるなんてジョージくんって幸運ー!」
ギード達は笑いながら、ジョージが昨日頑張ってやった宿題のノートを、机の上へと雑に放り投げた。
「うん、頑張るね」
ジョージは投げられたノートを見つつ、愛想笑いを浮かべる。
出来るだけ波風立てない、偉そうな人には従う。
これが入学二ヶ月目にしてジョージが身に着けた処世術だ。
特に問題はない。
ギードは見た目が怖くて言葉遣いも荒いだけ、別に明確な暴力をふるってくるわけではない。
ただ機嫌が悪いときは、人に分からないように魔法を使ったりするだけ。
だから、ちゃんと扱いに気を付けていれば、大丈夫だ。
問題のない、安全な存在だ。
もちろんジョージには、ギードから助けてくれるようか知り合いは居ない。
一緒に本の内容を語り合う相手も、切磋琢磨しあう同性も、ましてや恋愛関係になる異性も、まるで縁がなかった。
まだ入学したばかりなので教師も『好きな人と二人組を作ってください』などという非情なことを言わないが、いつかはその恐ろしい言葉を聞くことになるだろう。
(友達、なんてなぁ……)
いつか訪れる絶望を感じつつも今日もジョージは、休憩時間には一人で読書か寝ているフリをするのだった。
「はーい、皆さん席に着いてくださいね」
そうのんびりとした声で担任の先生が入ってくる。
のんびりな声によく似合うとてもふくよかな体型の、丸い眼鏡をかけた中年の男だ。
無精ひげを生やし、いつもニコニコ笑っていて、生徒達からは『モチちゃん先生』と呼ばれている。
あだ名の由来は、見た目通りだ。
明らかに長いあだ名を受け入れて『えーそんなに太いかなぁ僕?』と笑うほどの度量を持っている人でもある。
優しい人だとは思うが、その優しさが極めて人の心を痛めつけることもある――そうジョージは思っている。
二か月目に突入し未だに友達が居ないジョージのことを心配してくれる、とてもとても、とっても心優しい。 そんな、モチちゃん先生だ。
「はいはい、まず皆さんに素敵なお知らせがありますよ。 入ってきてください」
モチちゃん先生は廊下に声をかける。
クラス中の誰もが、そちらに視線を向け――それを、激しく後悔した。
彼が現れた途端、教室中の温度が一気に下がったような気がした。
(な……なに、あの人?)
モチちゃん先生に言われて入ってきたのは年齢よりも背の高い、褐色の肌をした男子生徒だ。
肌は黒めなのに髪は純白で一部だけ結っている――そんな相反する要素よりも目を引くのは、その雰囲気である。
顔立ちは悪くない、よく見れば良い方。 だがそんなことはどうでもいい。
とにかく『普通』でない。
よく切れるナイフが人間の形をすれば、こんな感じかもしれない。
きっと彼は人を殺す時だって同じ顔をしているだろう。 そう思わせる、氷のような無表情も携えていた。
ただでさえ鋭い目つきにこのような表情をしていれば殺し屋のようだ。
こんな、今のところ平和な学院にはとても似合わない。 老けているわけではないのに、年上に見える。
だというのに彼は、ジョージ達を同じ男子の制服を着用し、普通科の生徒であるという記章もつけていた。
まさに、違和感の塊である。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
ジョージと同じことを思ったらしいクラス中の生徒が、突然現れた異物をどうしたものかと沈黙していた。
ギードですらこれには黙っていた。
出来たら目を合わせたくない。
これで分かりやすく喧嘩腰であってくれたら良いものを、ただ静かにモチちゃん先生の隣に佇んでいる。
立っている姿にも緊張の『き』の字をまるで感じさせない。 場合によってはモチちゃん先生よりも先生らしく見える。
ジョージは自分の人生で、こんな小説の登場人物めいた人間と出会う可能性なんて、今まで少しも考えてなかった。
(なにあの人、なにあの人……なに、あの人???)
ジョージは激しく焦る。
此処に居てあんな格好なのだから、ひょっとしたら転校生か何かかもしれない。 つまり、ジョージと同じ年齢のはずだ。
そうだと分かっていても『こんな転校生が現実に居てたまるか』とも思う。
「彼はユリウス・ヴォイドくん。 実はこのクラスの生徒さんなのです! 皆さん、拍手!」
モチちゃん先生だけが暖かく歓迎の拍手。
釣られて、仕方なく生徒達が拍手をした。
そしてこの男子生徒――ユリウスというらしい人物は、眉一つ動かさず、微動だにしない。
もしかしたら人形なのかもしれない。
それぐらい、表情が動かない。
「実は彼は家庭の事情で色々とあって、入学式を皆さんと一緒に受けられなかったのです。 でも正真正銘、皆さんと同じ一年生です! 仲良くしてあげてくださいね!」
クラスの全員が、非常に静かにざわついた。
今、モチちゃん先生は『仲良く』とか言った。
無理だ、そんな顔をしていない。 むしろ『関わるな』という顔をしている。
「さぁさ、ユリウスくんも、挨拶しましょう!」
「…………」
陶器の人形だって、もうちょっと表情がある。
そんな顔でユリウスは視線を動かし、クラス全員の顔を見た。
ジョージは、まるで捕食者が獲物を選んでいるかのような、そんな危機を感じた。
「………………ユリウス・ヴォイドだ」
見た目とまるで違わない、非常に淡々とした低音だ。
「仲良くしよう」
本気で初対面の相手と『仲良くしよう』という人間は、絶対にこんな表情と調子で言わない。
嫌々、渋々で言っているようにしか感じられない。
まだ高圧的な貴族の方が信用出来る。
青年の目は、瞳孔が開いてるように見えた。
果たして彼は、まばたきをするのだろうか。
それほどまでに、人間らしくない。
「はーい、よろしくねユリウスくん。 じゃあ皆の顔はおいおい覚えていくとして……」
全員が困惑気味に黙っていると、モチちゃん先生だけがユリウスを歓迎した顔をし、それから皆を見る。
そして、極めて不幸なことに、モチちゃん先生はジョージを見つけてしまったようだ。
「そうだ、ジョージくん! ジョージ・ベパルツキンくん!」
悪魔か何かがジョージを笑顔で呼んでいる。
無視したかったが、ジョージには逃げ場が無かった。
「は、はい……」
蚊の羽音よりもかぼそい声でジョージは手をあげた。
本当に、やめてほしい。 というか誰か助けてほしい。
が、それで自分が標的になることが恐ろしいのか、日頃の行いが悪いせいか、誰もジョージを助けてくれそうになかった。
「ユリウスくん、此処に来たばかりで何処に何があるのか分からないんじゃない? ジョージ君に案内してもらえばいいよ!」
「えっ」
本当に、マジでやめてほしい。
天使みたいな顔をした悪魔が、魔王よりも恐ろしい死刑宣告をしている。
「ジョージくん、よろしくね! ほらほらユリウスくん、運良くジョージくんの隣が空いてるよ!」
別に『運良く』ではない。
ジョージに友達が居ないから、横に誰も居ない一番奥かつ端っこにある窓際を選んでいるだけだ。
そんなことを分かっているのか分かっていないのか、モチちゃん先生はこの場の誰よりも極悪なことを言っていた。
ユリウス青年はきびきびとした動きで階段を登り、黙ってジョージの隣の席に座る。
椅子に座っても背筋は真っ直ぐ伸びて、学生どころかあまり人間らしくないように感じられた。
ジョージは願いを込めてモチちゃん先生を見たが、先生は笑顔で手を振っていた。
「仲良くしてね!」
「…………………はい」
嫌々で、しかしその感情が誰にも伝わらないように、ジョージは返事した。
ちらりとユリウスの横顔を見る。
顔立ちはやはり悪くない――が、その横顔だけでも鋭い眼光と常人でない気配を放ち続けている。
『寄らば斬る』のような空気も感じて、ジョージごとき矮小な存在が関わっていい相手ではないとはっきりと感じた。
(な、なんで僕がこんな人の相手をしなきゃ……)
友達が居ないからって酷すぎる。
横顔を見ていれば、ユリウスが、目だけを動かしてぎょろりとジョージを見た。
「っひぃ!?」
あまりの眼光の鋭さについつい悲鳴をあげそうになり、咄嗟に口を抑える。
危ない。 本当に叫んだら、何をされるのか分からない。
『殴られそう』だとか、そういう分かりやすい危険ではない。
ジョージの隣には、何か恐ろしいモノが居た。
(やばいどうしよう、悲鳴あげちゃった)
視線を合わせてしまったからには、何かしないといけない。
頭の中で、言うべきことをなんとか探し出す。
「ごごごごめんなさいッ!!!! よろしくお願いします!!!!!」
きっと彼は『よろしく』されたいと思っていないだろう。
とはいえモチちゃんに頼まれ――もとい押し付けられてしまった役目だ。
ジョージの最終目標が『安全な卒業』である以上は教師からの心証を悪くするわけにはいかない。
「…………」
するとユリウスは、何故か目をカッと開き、ジョージを見た。
無言で。
ただならぬ、殺気のような気配を漂わせて。
(こっ、殺されるッ……!?)
ちょっと目を合わせてしまって、声をかけてしまっただけで。
ジョージの十年と少しの人生は終わってしまうのか。
だがユリウスは無言だ。
何かの攻撃をする素振りを見せず、不快そうな顔をするわけでもない。
ただ、そのまま視線を前に戻す。
今から人間を処刑しようという者は、こんな冷徹な横顔をしているのかもしれない。
処刑人そのものだ。 同い年とは思えない。
「――――――」
ジョージの目標は『安全な卒業』だ。
まだ入学したばかりで、それを途絶えさせるわけにはいかない。
だが、その未来には多大な不安しか感じられなかった。
~・~・~・~・~・~
「……え、ええっ、と……」
そしてモチちゃん先生だけが朗らかに去ったあと、ジョージは恐る恐るユリウスに話しかけた。
モチちゃん先生に託されてしまった以上は、やるしかない。
それにさっきからクラス中の『お前がそいつの管理をなんとかしろ』という視線をビシバシと受けている。
まるで棘のように鋭い視線は、どれもがジョージに責任を押し付けていた。
安全な卒業のためには、クラスの皆から不興を買わないことが必要だ。
ギード達の視線も、そう言っている。
「ゆ……ユリウス、くん?」
恐る恐る。
腹をすかした肉食獣を取り扱うように、ジョージはユリウスに話しかけた。
またユリウスは目をカッと開き、視線だけをジョージへと向ける。
それ本当にやめてほしい。
古代の壁画じゃないのだから、せめて顔をジョージに向けてほしい。
「ええと、い、今から、体育……運動の授業、なんだけどっ……」
ジョージは意を決して話しかけてみる。
今のところ具体的な暴力が無いとはいえ、次の瞬間にはユリウスの気が変わり何かされてしまうかもしれない。
ジョージの胸は非常にドキドキと高鳴っていた。
「ユリウスくん、此処に来たばかりで、道分かんないよねっ? …………ぼぼぼぼっぼ、僕が案内してあげりゅからっ、いいっ一緒に行ってあげようっあ!?」
舌を噛んだし、声は上ずった。
誰が聞いても酷い。 褒めるところが無い。 恥ずかしい。 話しかけない方がマシだ。
しかも何が『一緒に行ってあげよう』だ、どう見ても上から目線ではないか。
すると、ついさっきまで古代の壁画のように正面を向いたままだったユリウスが、静かにジョージの顔をちゃんと見た。
「案内の必要は無い」
極めて淡々とした声だ。
それに、ジョージの失態を笑うのでもない。
「学院内の建物の配置、ならびに一日の行動予定は全て記憶している」
「……あ、そ、そう……」
酷い肩透かしを食らってしまった。
だが、これはとんでもない好機だ。
モチちゃんが彼をジョージに押し付けたのは、ユリウスが学院のことに疎いからだと思ったからである。
しかし、そのユリウスが学院のことを知っているのであれば、ジョージが彼に何かをする必要は無い。
「じゃあ、もういいよね――」
ジョージは腰を浮かせる。
だったら大人しく授業を受けにいこう。
さようなら非日常、おかえり日常。
これでジョージは一人ぼっちの寂しい学院生活に戻ることが出来る。
ユリウスはこの調子で友達が出来るとは思えないが、彼ならまあきっと気にしないだろう。
するとユリウスが影よりも静かに席を立った。
それから高い背で、愛想の欠片も無い顔でジョージを見下ろす。
「…………」
「…………」
「………………?」
いったい彼は、何をしているのだろう。
ジョージは腰を浮かせたまま固まる。
(な、なに……!?)
この愚かで矮小でくだらない存在は此処で動かないようにしているから、可能な限り速やかに此処を去ってほしい。
ジョージはこの危険生物を刺激しないように、恐る恐る見上げる。
「何をしている」
ユリウスは優しさなど存在しない、まるで処刑人のような顔をしていた。
「いやあの、そっちこそ何をなさってるんです……?」
「お前の提案を実行する。 早く動くといい」
「……………???????」
『え、僕何か変なこと言ってしまいました?』とジョージは心底から不安になった。
変なことは言っていない。
ただちょっと『一緒に行ってあげようか』などと思い上がった発言をしただけで――。
「えっ」
まさかそれをしようというのか。
一緒に、二人で、グラウンドまで。 なんで。 どうして。 道は把握しているはずなのに。 なぜ。
ジョージが困惑している間に、ユリウスはすたすたと扉に向かってしまった。
それからジョージへと振り向く。
「何をそこで立ち止まっている?」
「え、え?」
「そこで呆けていることが有意義な時間の使い方だとは、とても思えない」
ユリウスを含めたクラス全員の視線がジョージに注がれる。
まるで悪いことをしたのはジョージのようだ。
ジョージは慌ててユリウスの後を追いかけた。
どうして自分がこんなことをしているのか分からないし、なんでこんなことになったのかも分からない。
ただ、着いていかないと何をされるのか分からない。 ジョージは、そう思った。
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