第4話 クエスト1「ハンティングの基本」

 受付には、齢30程の女が一人いた。


「クエストを受注されますか?」

「あぁ。どんな物があるんだ?」

「現在、受けられる物は、『ハンティングの基本』です。」

「じゃあ、それで。」

「分かりました。では、クエストの紹介です。町の門を出て、左に森があるので、そこで鹿を5匹倒し、毛皮を届けてください。」

「毛皮ってことは、剥ぐってこと?俺、やったことないぞ。」

「ご安心下さい。私自身がお教えいたします。」


さっきまで、黙っていたマックスが割り込んできた。


「でも、俺苦手だな。」

「頑張って下さい!」


受付の女は俺を無視して、無理矢理、話を終わらせた。


 俺等は、門を出て町を抜けると受付で言われた通り、森に足を踏み入れた。木々により、日光が遮られるため、中は真夜中の様な暗闇だった。


「おい、雰囲気出しすぎだろ。」

「こういうものです。シッ。」


マックスは突然、俺の口を覆った。


「何だよ。」


俺は一応、声を抑えながら話した。


「鹿です。」

「えっ?」


俺の10歩程先で鹿は佇んでいた。


「トオル様が思う様に一度、猟ってみてください。」

「えっ。思う様に、って言われても分かんないよ。」

「さぁ。」


俺は、マックスに急かされる様にして、送り出された。


武器は短剣で良いのか?まぁ、失敗してもいいや。忍び足で近づいて。


ガサッ


鹿は俺の気配を察知したのか、急に逃げ出してしまった。俺は、逃げていく鹿の後ろ姿を呆然と見ていた。


「最初にしては、上出来です。」


マックスは急に現れると、俺を煽るように話してきた。


「何だと!まず、狩りの仕方ぐらい教えてくれても良いじゃねぇか!」

「落ち着いてください。鹿が逃げてしまいますよ。」


鹿が逃げてしまっても厄介だと思い、俺は怒りを収めた。


「まず、近づく時は、しゃがんで地面の枯葉や枝を踏まない様にします。獲物には背後から近づきます。そして、背後から一気に首もとを切ります。」


その後、森の中を少し歩き回ると、またも鹿が1匹いた。俺は、マックスに言われた通りに行動した。言われた通りにすると、鹿は俺の存在に全く気付かなかった。獲物の背後から短剣を喉元に突き、切り込むと、鹿は鳴き声を上げて逃げ始めた。俺は逃げられない様に鹿にしがみついた。5歩程走ると、鹿は俺の体重のせいか、地面に思いっきり倒れた。鹿は地面でもがいていたが、やがて力尽きた。その後、俺はマックスの指示通りに皮を剥いだ。


そんな調子でクエストを進めて行くと、クエストクリアまで残り1匹まで減った。


「やっと、4匹目か。2時間くらいかかったぞ。」

「後、1匹ですので、頑張りましょう。夜には、モンスターが出現するため、直ぐにクリアしましょう。」

「ちょっと待て。このゲームってリアルタイム制だよな?」

「はい。」

「ってことは、今は夕方ってこと?」

「そうなるのでしょう。」

「俺の仕事は!?」

「さぁ、早く。」


突然、マックスは話を切り替えようとした。以前もそうだった。俺が、ゲームの詳細について聞こうとすると、話を逸らす。


「おい、もう罷り通らないぞ!」


すると突然、目の前を黒い影が横切った。影は俺の前で止まると対峙してきた。


「トオル様、鹿です!」

「あぁ。」


しかし、こいつの様子は今までの獲物とは明らかに違っていた。奴は俺に考える隙も与えず突進してきた。俺は避けることが出来ずに攻撃を喰らってしまった。


「痛!」


腹部を見ると、奴の角が刺さり血が出ていた。俺は、痛みのあまり地面に崩れた。そこに鹿が追撃を掛けてくる。俺の腕は奴に踏まれ折れそうだった。


「ぐぁっ!」


俺は奴が踏む足に噛みついた。突然の攻撃に奴も怯えたが攻撃は更に激しくなった。


「喰らいなさい!」


鹿の体が2つに割れ、血が俺の体にシャワーのように降ってきた。俺は、口に入った血を吐き出した。


「ペッ!」

「大丈夫でしたか?」

「あぁ。」

「どうやら、レベル5の鹿が出現してしまったようです。」

「それは、どういうことだ?」

「このゲームでは、プレイヤーのレベルに合ったモンスターが出現するはずが、バグにより、トオル様のレベルよりも高いレベルのモンスターが出現してしまったようです。」

「だから、倒してくれたのか。」

「はい。早く皮を取って下さい。」

「えっ、良いの?」

「はい。さぁ。」


俺はマックスに言われた通りに倒された鹿の皮を剥ぎ取った。ふと、腹部に痛みがないことに気づき、見るとさっきできた筈の傷がなくなっていた。


「あれ!傷は?」

「運営が特別に回復をして下さったようです。」

「それは、助かる。な。」


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俺は「無事」、スナームに戻ると、受付に皮5枚を渡した。すると、俺の体が光り閃光が走った。


「おめでとうございます!レベルアップされました!」

「えっ。」

「さぁ、どのステータスを上げますか?」

「ウーン。じゃあ、攻撃で。」

「了解しました。完了しました。」


俺は、完了したと言われたが、体に変化が起こったようには感じなかった。








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コロンブス・ディスカバリー 三十六計逃げるに如かず @sannjiyuurotukei

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