第二日目 国語の時間

第7話 『言語統一は必要か?』



 『人類再考教室』の二日目は、国語の授業から始まった。

 教室の中央に四人の歴史的人物が集まり、熱く議論を交わしていた。

 『上位存在 X 』から提示された討論テーマは「新世界の言語をひとつに統一させるべきか否か」であった。



「言語は文化の一部ですよ? それを失うことは私たちのアイデンティティを失うことになります。 統一された言語が私たちの言語である可能性がある限り、断固拒否します」


 と、マリー・アントワネットは言った。

 彼女はフランスの最後の王妃で、美しく気高く、フランス文化の代表者であった。

 その言葉は美しいものであり、文化的な特徴を持つものであるからして、失うわけにはいかないと主張したのだ。


 一方、アブラハム・リンカーンは、こう述べた。



「言語の壁は、文化交流を阻害する原因になる。地球上で共通の言語があれば、国と国との交流が容易になり、紛争も減るだろう」



 リンカーンはアメリカ合衆国の第16代大統領で、奴隷制度廃止や南北戦争の勝利などで知られ、平等と自由の重要性を強調するリーダーであった。

 それ故、生前では不可能と思われた言語統一を肯定したのだ。



「言語統一は、国家を強化し、国民の団結を促進する効果がある」



 と、始皇帝は主張した。彼は堅固な統一を築くことに注力し、国家統合に献身しており、中国統一後に実際に文字統一を行い、中国の文化を定着させた人物だった。


 そこへウラジミール・レーニンが、



「これでは軋轢を生んでしまう。 既存のものから選択するのではなく新しい言語の創造を進めることの方が重要ではないか? 文化的な多様性を尊重し、文化の豊かさを生み出すことができるはずだ」


 と、主張した。

 レーニンは、言語が政治的意図に悪用されることを警戒していたのだ。


 四人の歴史的人物は、自らの立場を主張し、そこからも激しい論争を繰り広げた。

 彼らはそれぞれ自分たちの歴史的経験から、異なる立場を取っていた。


 『上位存在 X 』は教卓の上で浮き続け、その討論を聞き続けた。






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