第6話 『神の剣、異教を斬る!』
「異教徒どもめ、何が『非暴力』だ! あなたの言う『非暴力』が、本当に通用すると思っているのか? 武器を持たないで戦えば勝てるとでも思っているのか? 馬鹿ね、本当に馬鹿。 まだこんな平和ボケが生き残っているなんてね。 ああ、もう死んだんだったわね。 理想論なんかでフランスは救えないわ! 私たちが握るべきは血の剣と旗よ!」
どうやら地雷を踏んでしまったらしいガンディーは、ジャンヌ・ダルクに向けて穏やかな口調で答える。
「戦いには様々な形がありますよ。 私が提唱する『非暴力』は武器ではないのです、敵を攻撃するのではなく、相手を説得することで勝利を収める。 鉄も火も必要ないのですよ」
「何にもわかってないわね爺さん。 じゃあ素手で戦場に出てって、白旗振りながら暴力反対って叫んでみなさいよ、きっといい矢の練習台になるでしょうね」
ジャンヌは一切、話を聞き入れようとしなかった。
シッダルタはそれを目をつむって聞き入れ続ける。
口論は段々と激しさを増し、教室内はその熱気で満たされていった。
「あなたのやり方は間違っているんですよ! 戦争は必要ないんです!」
遂にガンディーが声を荒げる。
ジャンヌダルクに向かって、手を振りながら糾弾する。
「遂に本性が現れたわね爺さん! 間違っているのはあなたよ! 戦争こそが私たちの自由を守る唯一の手段なのよッ」
ジャンヌダルクは剣を抜いて、ガンディーに向かって突き出した。
教室中央にいた巨体のジル・ド・レも立ち上がり、教室に設置されていた掃除道具入れから長箒を持ってきて、槍の代わりにガンディーに向かって構えた。
「あなたもこの女性と同意見なのですか!?」
「オレ、ジャンヌ、共ニアル。 ジャンヌ、一緒ニ、戦ウ。」
「駄目です! 自由を守るために他者を攻撃することこそが、最も間違いなのです!」
ジャンヌ・ダルクは剣を振りかざし、ガンディーに襲いかかった。
それを追って、ジル・ド・レが箒で援護する。
ガンディーはその連撃をスルリスルリと回避し、一太刀も受けず講釈を続ける。
「ジャンヌ、あなたは自分の信念に忠実であり、それはとても立派なことです! しかし、その剣に錆び付く血は見過ごせない! 私たちは互いに寛容であることが必要なのですじゃ! 誰かを攻撃したり排除することなく、平和的な方法で意見を交換することが、真の平和への第一歩なのですじゃー!!」
「こッ、この爺さん、何故私の剣が当たらない……!? 神の声に認められたフランスの剣が、こんな平和ボケの爺さんなんぞに……!」
「ジャンヌ。 コノジジイ、強イ」
そのまま教室の後ろで、殺陣が始まった。
講釈を続けながら剣舞を避け続けるガンディーに、生徒たちの目が奪われた。
争いはジャンヌが疲れて甲冑を脱いだあともしばらく続き、一時休憩後に再び再開された。
最終的には焦げた薄布の服にまでなり、剣舞は疲弊で倒れるまで続いた。
入学1日目は、そのままなし崩し的に終了する運びとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます