第2話 絶望と転校生

「先生、しょうまは大丈夫なんですか?重い病気とか…」

「うーん、気絶ですね なにかあってからでは遅いので今日は親御さんを呼んで病院に行ってもらいましょう、高山くん申し訳ないけど早見くんの荷物持ってきてくれるかしら?」

「お安い御用っす」



「あれ、俺なんで保健室に…」

「あっ、早見くん気がついたようですね」

「西川先生、俺はどうして保健室に?」

「早見くんはホームルーム中に気絶しちゃったんですよ」

「早見くんはホームルーム中に気絶しちゃって、高山くんがここまで運んできてくれたんです」


俺は先生の言葉でようやく思い出すことができた、いや脳が推しの脱退と言う情報を無理やり消そうとしたのかもしれない


「そうでしたか、あとで拓馬には礼を言わないとですね」

「そうしてあげてください、高山くん今にも泣き出しそうなくらい焦っていて 早見くんよりも心配になってしまいました」


西川先生は冗談交じりに俺が気絶していた時のことを話した

西川先生は基本的に保健室にいる養護教諭なのだが、男子たちからの人気がすごく休憩時間には怪我もしていない元気な男子生徒が保健室に入って行くのをよく見かける


人気な理由は…言わなくても胸元を見ればなんとなく察せるだろう


「そういえば早見くん、なぜ気絶をしてしまったのか原因はわかりますか?」

「原因は…って!先生俺のスマホはどこに!?」


俺はひなの脱退に驚いて気を失ってしまった、だが翌々考えると先生が見たニュースはガセネタかもしれない、信用ならないソースの情報に踊らされているなんてことがあれば気絶損である


「早見くんのスマホならここに…」

「貸してください!!!」


俺は勢いよく飛び上がり”STARS”の公式サイトを検索する


「ちょっと早見くん!いきなり激しく動いちゃだめよ!安静にしていないと」

「すみません、でもどうしても調べたいことが…」


”STARS”の公式サイトに飛ぶと一番上に

『”STARS”ひな脱退についてのご報告』と書かれてあった


「あぁ…終わった…」

「どうしたの早見くん!しっかりして!」

「大丈夫です先生…少しショックな出来事があって…ちょっと気分が悪いので今日は早退してもいいですか?」

「ええ、元からそのつもりです今日は帰って病院に行って安静にしておきなさい」



俺は家について少し冷静になった

「ひな… でも冷静に考えろ大人気アイドルのセンターだぞ”STARS”からは脱退しても事務所には残っている、もしかしたらソロでデビューしたり他のグループに入ってデビューする可能性もあるだろ」


それに ひな程の逸材を事務所が手放すとは到底思えない

そんな、望みの薄い言い訳をして眠りについた、相当疲れていたようで泥のように寝てしまった



俺は昨日は何事もなかったと言わんばかりに、いつも通り振る舞った、もちろん内心はひなの脱退のことで頭がいっぱいだ、というかショックで今にもお崩れ落ちそうだ


「おー、しょうまーおはよ」

「拓馬か、おはよう 昨日は心配かけたようだな すまん」

「まったくだぜ〜いきなり倒れるから少しびっくりしたぞ!もう心配させんなよ」

「少し?西川先生には今にも泣き出しそうなほど焦ってたと聞いたぞ」

「そっ、そんなことねーよ、お前が倒れたら答え写す時困るからな」

「なんだよ、そんなことか」

「まあ、それだけじゃねーよ しょうまは俺の大事な友達だからな!心臓に悪いからほんとに気をつけてくれよ」

「ああ、ありがとよ」

「ちっ、なんか照れくさいな」


このとき俺は少し”高山 拓馬たかやま たくま”のことを勘違いしていたのかもしれないと思った、拓馬は課題の答案欲しさに俺を利用しているのだと思っていた、まあ答え写しは良くないことだが少しだけ拓馬という人間を知れた気がした


「不器用なやつだな…」

「ん?なんか言ったか?」

「いや、なにも」

「そうか…そういえば今日転校生が来るらしいぞ」

「えっ?急だな初耳なんだが」

「そりゃ、俺たちも昨日の帰りに伝えられたからな早退した しょうまは知らないはずだ」

「なるほど」

「反応薄いな〜でも内心はどんな子が来るのかドキドキしてるだろ」


拓馬がニヤニヤ笑いながら俺の顔を見てくる


「ぶん殴りたいくらいムカつく顔だな、俺は別に興味ない お前みたいな騒がしいやつじゃないことを祈るのみだ」

「ひどいな!美人な子が来ても知らないぞ!しょうまは興味ないんだもんな!?」

「まだ女子か男子かもわからないんだろ?転校生が野郎おとこで無駄に期待した結果絶望するお前の顔が容易に想像できる」

「転校生は女子だ!」

「根拠は?」

「俺の女の子レーダーがビンビンに反応してる」

「…少し黙っててくれ」

「酷い!」


転校生か…拓馬には興味ないと言ったものの実際はめちゃ気になる!


ガラガラガラッ


「お前ら席に着け〜ホームルーム始めるぞ〜」

「先生!転校生は!?」

「高山うるさいぞ〜 今入ってきてもらうから少し待て」

「は〜い」


クラス全体が笑い声と転校生の話題でいっぱいになった


「お前ら静かにできんのか!転校生が驚いて緊張してしまうじゃないか」

「「「はーい」」」

「では、入ってきてくれ」


一瞬であった

その一瞬でクラスの男子…主に拓馬のハートこころは撃ち抜かれた


「皆さんはじめまして!如月 陽菜乃きさらぎ ひなのといいます 勉強は苦手ですが体を動かすことと歌が得意です、よろしくお願いします!」

「「「うおー!!!国宝美人てんしきたああああ」」」


クラスの男子…いやあまりの美しさに女子までも騒いでいる

しかし俺だけは何か違和感を感じた


「なんだこの違和感…どこかで聞いたことある声、まるで先日脱退した…」

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