7話 恋心との遭遇

 二限目の授業が終わり三限目の授業は体育。祐希が制服から体操服に着替えている時だった。


「なぁなぁ、小鳥遊は東京から来たんだろ?どうしてこっちに来たんだ?」


 そう声をかけて来たのは短い黒髪を刈り上げにしたやんちゃそうな見た目の男子生徒。

 --名前は確か……。


「……半田朝之介君はんだあさのすけ?」


「ん。で、どうなんだ?」


「ああ……親の仕事の都合だよ」


 祐希は前もって準備していた返しをそのまま口にした。


「まあ、そんなもんだよな」


 朝之介は満足したのか、していないのかわからない口ぶりでそれ以上は何も言わず自分の着替えを続けた。

 祐希も何も言わず、止まっていた自分の着替えを再開させた。しばらくして、ふと気づく。


「もしかして俺、嫌われてる……?」


 転校してき数日その間喋ったのは女子だけだった。

 学校生活を満喫するうえで友人は必ず必要になる。だが、年齢を重ねると自然と作るのは難しくなる。あくむにも友人と呼べる者は一人もおらず、なおさら困難を極める。

 だが、今は『小鳥遊祐希』だ。

 気合いを入れ、この体育の授業で親睦を深めるのだ。

 

--結果的に言えば、なにもできなかった。


 体育のっ授業初日ということでクラスの親睦を深めるためドッジボールをすることになった。チームとの親睦は深めようと積極的に動いたが、やはりあくむとの違いに慣れず、体が動かなかった。結局序盤に相手ボールに当たり、残りの時間を外野で過ごすことになった。

 そこから三回戦行ったが、どの回も祐希が内野にいることはほぼなかった。

 更衣室で体操服から制服に着替える。季節外れの気温ということもあり体操服から着替えたYシャツが生乾きの洗濯物のようにびっしょりになった。

 そんな汗臭い男たちがいる更衣室はさらに暑く蒸し風呂状態だった。


「あっついね」


「男クセぇ」


「それな」


「次の時間なんだっけ」


「数学」


「あーね。だるぅ」


「初っ端から?もうちょっと様子見ようよ」


 朝之介たちの会話。騒がしいこの空間の中でもその会話だけが強調されているように聞こえる。

 拳を握ると冷たくなった背中に再び湿っぽさが戻った。口を開いても出るのは言葉にならずに溶け込んだ熱い吐息だけ。


「数学なんて様子見てたらすぐわけわからんくなるだろ」


「じゃあ、最初っから手をやこうよ。甲斐甲斐しく世話をしたらきっとあの子は向き合ってくれるから」


「いや、数学はちょっとこっちが寄り添った瞬間に牙を見せるから嫌なんだよ」


「愛情が足らなかったんじゃない?」


「数学とはわかり合える気がせん」


「本当それだよねー」


「いや、お前もかい。どこ行ったんだよお前の愛情」


 女子とは違い男子は積極的に祐希に声をかけて来ない。だから祐希から出向くしない。  

 そうとわかってはいるが、切り出し方がわからない上に会話のネタさえ思いつかない。どうするどうすると頭の中を回転する言葉たちは靄によってうまく変化しないままだ。

 そして思い出す。

 挨拶、質問の回数、頼みごと、持ち物や髪型を褒める。

 女子の時にはできなかったネットにあったアドバイス。それを今活かさないでいつ活かすというのだろうか。今こそ好機。ガンダーラはすぐそこに見えた。

 挨拶……はさっき一応ではあるが会話をしたため、二度目の会話の切り出しとして使うのは違う。頼み事も、今思いつく限り何もない。とすると質問の回数と相手のものを褒めることが現状必要とされる。


「……あ、あの」


「……?」


「ん、どうしたの?」


「天気いいね」


 なんとか話しかけることには成功した。


「……あ、うん、そうだね」


「でももうちょっと雲があってもいいのにな。まだ四月なのに熱すぎだろ」


「それなー」


 質問質問質問質問質問質問質問質問。


「えっと……次の、授業何?」


 とっさに頭に浮かんだのが直前に朝之介たちが話していた会話の内容だった。


「ああ、数学」


 朝之介が答える。


「数学わかる?俺苦手だから教えて欲しいんだけど……」


「あ、俺もだよ」


「僕もー。あ、僕小鳥遊くんと初絡みかも」


 古見康太こみこうたが言う。それに頷きで返して質問の内容を頭をフル回転させて考える。


「えっと……趣味とかある?」


「僕は、音楽は好きだね」


「楽器とかできるの?」


「まぁ、ギターを少し」


『相手を褒める』


「へーすごい、かっこいいね」


「いやー小鳥遊くんほどじゃないよー」


 満更でもなさそうに後頭部をかく。


「お前、元々はそんなやる気なかったのに、高校になってからモテたいがためにやり始めたんだろ」


「だったんだけどねー」


「なのに一年経っても彼女ができないのは笑う」


「うるせー」


 なんとなくだが、この二人の間に溶け込めた気がした。溶け込んで逆にいないもののように感じたのも嘘ではないが……。

 更衣室から教室に着くまでは三人一緒で派手に盛り上がるでもなく、だがちゃんとした高校生らしい会話をした。

 祐希、朝之介、康太の席は三人がそれぞれ離れている。だから教室に入ると自然と別れ、会話も途切れた。

 しばらくすると朝之介が再び話題を出し康太もそれに乗り購買へと向かった。

 その一部始終を見ていた祐希は一度席を立ったものの辺りを見渡しただけで再び席に着いた。

 祐希もその輪の中に入り、親交を深めたかったのだが祐希には奏楓特製のお弁当がある。

 お弁当の蓋をあけるとそこに閉じ込められていた罪深き匂いが解き放たれた。

 料理というのは普通温かい方が匂いは引き立つもの。お弁当になるとどうしてもできたての状態で持ち運ぶのは難しく移動する間に冷めてしまう。現に祐希のお弁当も冷めている。だというのに匂いはまったく衰えておらず、できたてのそれととなんら劣らない。

 それは教室内を一瞬にして包み込み教室内にいた生徒達を魅了させた。


「何これ」


「美味しそうな匂い」


「え、誰の誰の?」


「すごい……」


 祐希はそれほどお腹が空いていたわけでもなかったが、その匂いを嗅いだ瞬間、嘘のように空腹感が訪れた。その証拠にお腹が低い唸り声をあげる。その音は思ったよりも教室に響いたらしく女子たちがクスクスと祐希を見ながら微笑んでいた。

 お弁当の内容はふりかけのかかった白米と手間がかかりそうなおかずが何個か入っている。卵焼きに至ってはハート型だ。

 そんなお弁当に舌鼓を打っていると、


「え、何このめっちゃ美味しそうな匂い!?」


 朝之介たちが購買で買ってきた菓子パンを片手に帰ってきた。


「すげぇいいにおーい」


「小鳥遊くんか」


「え、本当に?」


「すごい美味しそうじゃん」


 思ってもみなかった会話のネタに箸の先を咥え、目をパチクリとさせながらもこれを好機と捉えた祐希は言う。


「ひ、一口食べる?」


「本当に?じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」


 あーんと口を大きく開き箸で運んでくれるのを待っている。祐希はハートの形になっている卵焼きの一切れを箸でつまみその男子の口の中へと運んだ。


「……うまっ」


 ゆっくりと卵焼きを咀嚼し、飲み込んだ後に静かに言った。


「すげぇうまい」


 祐希が作ったわけではないがその褒め言葉が純粋に気持ちよく高揚感を覚えた。


「ありがと、小鳥遊」


 と言うと朝之介たちは祐希の近くの空いている席に座り菓子パンの封を開けた。




 夕飯を食べ終わり、自室で一休みをしている祐希に一件のメールが届いた。


『あなたのことが好きです。私と付き合ってください』


 何度もその短い文面を読み返す。何度読んだて、誰が見たって告白にしか見えない。

 知らないトーク画面。名前は「かおり」で登録されている。

 かおりという名前には聞き覚えがある。確か、昨日祐希が助けた女子生徒として名前が挙がっていた。

 ならこの告白にも納得ができる。

 人生で一番の恐怖から救ってくれた恩人だ。そんな人物を特別視するのも無理はない。


「……なんて返せばいいんだ」


 とは言っても気軽に返事が返せる話でもない。

 数分スマホの画面とにらめっこする。


『突然すいません。私昨日助けてもらった者です』


 やはり、そうか。

 それにしても昨日助けて今日告白してくるなんてあるのだろうか。現に告白してきているのだから疑いようもないのだが、色々と吹っ飛ばしている気がする。恋愛はいつでも突然なのか。

 相手からはそれから何も送られてはこない。祐希の返事を待っているのだろうか。

 文字盤の上を指先が飛び交う。

 「あ」の文字を押す。ただ何かが思いつくのではないかと思って押しただけだ。そのあとの文字が押せないままスマホの時計は進み続けた。

 一文字の「あ」の文字を消しては打ち、消してはまた打った。

 既読の文字をつけている以上は早く返さなければ無礼にあたる。

 焦りは祐希の思考を加速はさせたが混乱する頭の中では上手くまとまらない。


『ありがとう。少し考えさせて欲しい』


 打ち終わった後大きなため息とともにベッドに倒れこんだ。

 思考から解放された頭は妙に涼しかった。

 すると、一分も経たずにスマホが鳴った。


『わかった!!また明日ね!!』


 それ以上は何も送って来る気配はない。なんとか第一関門は突破したらしい。

 今日はこれ以上悩んだってしょうがない。だから祐希は自室を出て、風呂場に向かうのだった。

 

 

『放課後に一階の空き教室に来て』


 「かおり」からそんなメールが送られてきたのは五限目の終わった休み時間だった。

 放課後というと残り一時間ほどで、六限目前にそんなメールが来たことで内心穏やかではなく授業には身が入らなかった。

 一階の空き教室へと向かった。教室に入ればそこには見覚えのある女子生徒がいた。


「あ……」


「かおりさん?」


「はい!!野間かおりです」


 茶色の髪はウェーブがかかっていて後ろで結んでおり、校則で禁止とされていであろうメイクをうっすらときめた今をときめく女子高生というような風貌。


「あの先日はありがとう。それであの、お礼がしたくて……あの、昨日の返事はまだいいです。だけど今日は一緒にお茶とかしたいなって……」


 身長が低いことで彼女の大きな瞳が上目遣いで祐希を射抜く。

 返事を先送りにしてくれたことに内心ホッとした気持ちで祐希は返した。


「いいよ」


「ほ、本当ですか!!」


「うん」


「……よし」


 かおりは小さな声とともに両手でガッツポーズをする。


「……にへへ、ありがとう。じゃ行こっか」


 海鈴高校は少し標高の高いところに位置している。

 そのため高校の校門をくぐるには急勾配な坂道を登ってくる必要がある。坂道を下ればさまざまな商業店舗が立ち並ぶ大通りに繋がり、少し歩けばまばらだが飲食店も見えてくる。

 祐希とかおりの二人が入ったのはその中のおしゃれなレンガ造りの喫茶店。店内はログハウス風の木造で優しいオレンジの光で包まれ、昔ながらのどこか懐かしい雰囲気が漂っていた。

 店員に案内され窓際の席に腰を下ろすと弾力のある赤い座席がお尻の形に沈んだ。

 祐希たち以外にも海鈴高校の生徒がいるようで各々のプライベートな話で盛り上がっているようだった。


「小鳥遊くんどうする〜?」


 メニュー表を眺めながらかおりが聞いてくる。祐希は視線をメニュー表に落とした。

 一ページ目からドリンクメニューが並ぶ。その中でもコーヒーが最初に目がつく。種類の違いはもちろんのこと、それ以外にも可愛らしいカップや少し風変わりな入れ物に入ったコーヒーと分かれている。

 その他の飲み物もこれまた風変わりな入れ物に入ったものが多く、学生受けしやすそうなものだった。

 ページをめくると次は主にパンを使った様々な料理で数ページが構成されていた。サンドウィッチ、トースト、ハンバーガー。そのどれもが美味しそうでなかなか一つに絞れない。


「私はこれ〜」


 かおりは元から決めていたであろうデザートメニューを指差した。

 それは温かいデニッシュパンの上にソフトクリームとサクランボを乗せ、シロップをかけて食べるこの喫茶店の誇る人気なデザートだ。


「俺はこれで」


 祐希は一ページ目に載っていたソフトクリームの乗ったアイスココアを指差した。


「あ、私はこれも〜」  


 かおりも一ページに載っているブーツ型の入れ物に淹れられたメロンソーダを指差す。


「小鳥遊くんは何も食べないの〜?あ、私のやつ半分こする?」


「あーじゃ、この小倉トーストで」


「わかった。すいませ〜ん」


 かおりが右手を軽く上げ店員を呼ぶと、近くにいた店員が気づきすぐに注文を聞きに来た。

 端末を取り出したのを確認するとかおりが注文品を口にした。


「かしこまりました。少々お待ちください」


 店員が去っていくと賑やかな店内にも関わらず二人の座るこのテーブルには静寂が生まれた。

 かおりはニコニコと祐希を見つめている。

 ふと時刻が気になり店内の内装に目を運ぶ。祐希の見える位置からは時計が見当たらず、制服のポケットからスマホを取り出し時刻を確認した。

 四時四七分。

 どのくらいこの喫茶店に滞在するかは分からないが夕飯はここで食べるもので良いと思い奏楓にその旨の連絡をしようとしたところ、


「小鳥遊くんはなんでこっちに引っ越して来たの〜?」


 祐希はあとで奏楓に連絡しようとスマホをポケットにしまった。


「親の仕事の都合だよ」


「ふ〜ん。お父さんは何している人?」


「普通のサラリーマンだよ、こっちに転勤になったんだ」


「へ〜」


 あらかじめ用意していた返事を返すとかおりはそんな反応で話を終わらした。


「小鳥遊くんは休みの日とか何してるの〜?」


「えっと、映画とか観るかな」


 この質問も転校初日に聞かれたことがある。その時はとっさに映画鑑賞と思いつきそう返した。そして今も全く同じ返事をした。なお映画にそこまでの興味はない。


「へ〜そうなんだ。……今度一緒に映画に行かない?」


「う、うん。いいね」


「ほ、本当に!?にへへ、いつがいいかな〜……」


 そんな会話をしていると店員が注文したものをトレーに乗せて運んで来てくれた。一つずつ確認しながらテーブルの上に置いていく。

 かおりの前にはデニッシュパンのデザートとブーツ型の入れ物に淹れられたメロンソーダが、祐希にはバスケットに入った小倉トーストと大きめなグラスに淹れられたアイスココアが置かれた。


「ご注文の品は以上でよろしかったですか?」


「はい」


「ではごゆっくりどうぞ」


 店員は去っていった。するとかおりはごそごそと自分のお皿の位置を何やら調整し始めた。ポケットからスマホをを取り出し様々な角度からパシャりとシャッターを何枚も切った。


「どこがいいかな〜」


 顔を横に傾けながら自分が撮った写真を見返す。


「んー違う」


 そう言ってまたかおりは自分のお皿を調整し始めた。今度は全体的に右側にずらす。


「小鳥遊くん、ちょっとお皿左側に寄せて」


 指示された通りにバスケットとグラスを左側に押しやった。


「あー違う違う。そうじゃなくて、こう綺麗に写るように……よし」


 そしてスマホをパシャり。

 それは自身のインスタに投稿する用で撮影したのだ。

 かおりを見ながらストローの封を開けアイスココアに刺した。チュルチュルと吸い上げると冷たい甘みが口内に広がった。


「小鳥遊くんインスタやってる〜?」


 メロンソーダをストローから吸い上げながらかおりが尋ねた。


「やってない」


「え、なんでやってないの!?やるべきだよ!!」


「そ、そう?特に理由はなかったんだけどそういうものなら入れようかな」


「今すぐ入れよ!!教えてあげるから!!」


「う、うん」


 祐希はスマホを取り出し、アプリのインストール画面を開いた。そこからかおりに教えてもらいながらアカウントを登録した。


「で、これが私のやつね〜」


 そう言って見せて来たかおりのアカウントを祐希はフォローした。


「小鳥遊くんのアカウント、宣伝しとくね」


「ん?う、うん」


 かおりの言っていることがよく理解ができなかったがとりあえず頷いた。



 祐希の注文した小倉トーストはボリュームがありそれ一枚で十分食べ応えがあった。

 かおりもデニッッシュパンのデザートを食べ終わり、メロンソーダを飲んでいる。


「もう、外暗いね」


 スマホを見れば六時を過ぎている。気づかぬうちに一時間以上経過していたようだ。


「そろそろ帰ろっか」


「そうだね」


 ちょうどかおりはメロンソーダを飲み切ったところで席を立った。両腕を上げ、伸びをする。


「ん〜」


 祐希も忘れ物がないか確認し席を立つ。

 会計は二人がそれぞれ出し、店の外に出た。

 夏に向かう季節ではあるがまだまだ夜は肌寒い。

 手を振るかおりを同じく手を振りながら見送る。

 田舎の夜を照らすのは等間隔で並んだ街灯ではなく車の前照灯とテールランプ。その光の中にかおりは消えて行った。



 祐希が家に着くと奏楓はご機嫌斜めだった。


「もー遅くなるなら、遅くなると連絡してくださいよ」


 奏楓に連絡するのをすっかり忘れていた。


「心配したじゃないですか。お姉ちゃんを困らせるのは良くないですよ?」


「すいません。今度から気をつけます」


「お姉ちゃんごめんなさいくらい言ったらどうですか?」


「いいです。すいませんでした」


「もぅ、素直じゃないですね」


 両手を腰に当て困ったようなポーズをとる奏楓。


「まぁいいです。さっ、着替えて来てください。ご飯できていますから」


 その言葉を聞いてハッとする。

 祐希のお腹はもうすでに小倉トーストとアイスココアで満たされている。これ以上何かを食べる気にはならない。

 連絡不足だった祐希が悪いのだが、こればっかりはどうしようもなく奏楓に恐る恐る伝えた。


「お姉ちゃんごめんなさいって言ってくれなかった祐希が悪いですから、残さず食べてください」


 奏楓にとっては連絡をしなかったことよりもそう言わなかったことの方が重いらしい。 

 ここは腹をくくるしかない。


「お、お姉ちゃん、ご、ごめんな、さい」


 ぎこちなく奏楓の望んだ謝罪をした。


「--も〜しょうがないですね〜そこまで言うなら連絡の件は許しますよ〜。も〜今夜はサービスでご飯山盛りにしますね〜」


「あ、いや、ちょっと!!」


 即座に奏楓はニヤニヤしながら許してはくれたが、祐希が免れたかったのは夕飯の方。だと言うのに奏楓は嬉しさのあまり祐希の望んでいないサービスをしてくれる。

 祐希は遠慮するがもう奏楓には聞く耳を持たない。と言うより嬉しさでいっぱいで聞こえていない。

 大人しくテーブルにつくと昔話に出てくるような文字通り山盛りなご飯が運ばれて来た。

 それを見た祐希は静かに目を閉じ深呼吸をして覚悟を決めるのだった。

 この日以上に連絡が必要なことだと思ったことはなかった。

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