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「涼ちゃんお見事〜。」

「うっわ、何ここ。むさ苦しッ!空気わりー」


吹っ飛んだドアを蹴破ったであろう右足をゆっくり下ろす近江涼介の背後から、にこやかに拍手を送る榛名聖と顔を顰めた金髪がひょっこり現れる。


美形トリオのド派手な登場に、モヤシやじゃがいもはさっきまでの威勢は何処へやら、面白いくらいオドオドとしている。近江涼介はジャガイモ達の存在になんて気付いてもない様に一瞥もくれず、私とモヤシの方へ歩み寄ると、私の手首を拘束していた手を荒っぽく捻り上げた。


「俺らの友達に、何してんの?」


ビリリ。殺気だった視線と低音に、その場にいた全員が硬直した。


「あっ、トモダチって言ってもいかがわしいやつじゃないよ〜?フツーに純粋な、言葉通りのやつだよ♡」

「聖、気色悪いこと言うんじゃねーよ!不純な方なんか土下座されてもお断りだわ!」


…萎縮したのは全員ではなかったみたいだ。

今度は異様な空気にジャガイモとモヤシと私は硬直した。


「まぁ、とにかく〜。藤澤ちゃんは俺たちの友達だから。変なことしたら許さないよー?」


サッと私の肩を抱いて、モヤシと壁の間から私を助け出して余裕の笑顔の榛名聖。


「言っとくけどアイツの性格最悪だからな?口もわりーし。目ぇ覚ましたほうがいいぞ。」


私の代わりにモヤシの前に顔を覗かせた金髪が、心底哀れんだ表情でモヤシの肩をポンポン叩いた。


モヤシの手をポトンと落とすように解放した近江涼介が、無言で出口へと歩き出す。「じゃ、行こっか。藤澤ちゃん」と笑顔の榛名聖に促され、私たちは旧校舎へと向かった。


***


「ごめんね〜、藤澤ちゃん。もともと俺たちのこと変に敵視してる奴らがいたのは知ってたから、俺たちも警戒してたんだけどまさか藤澤ちゃんに何かするとは思わなくて。」


薄暗い旧校舎、いつもの1室。紅茶を入れながら榛名聖は呑気にそう言った。


「ブスが絡んできてからアイツらの敵意が増したのも事実だし、ある意味自業自得だろ。

しかも自分からアイツらのたまり場に入ってくし。バカだろ」


皮肉っぽく鼻を鳴らして笑う金髪。その割にソファに座らせられた私にブランケットを投げつけてきたり、掴まれた手首が赤くなってたのに気づけば保冷剤を差し出してきたりと甲斐甲斐しい。


曰く、モヤシ一味はH2Oに対してもともと妬みという名の敵意を持っていた、かつ、藤澤姫を地上に舞い降りた天使として見守り、崇める会を勝手に創設していたんだとか。… で、H2Oと繋がりがあると、こんな怖い目に遭うんだぞって言う脅しのつもりで、植木鉢を落としたんだとか。か弱い天使・姫ちゃんはこれでわかってくれるだろうと。



「あはは、俺藤澤ちゃんの親衛隊って言っただけで、崇めるとかそんなこと言ってないんだけどな〜」


淹れたてのロイヤルミルクティーを手渡しながら、榛名聖は首を傾げる。



というかこいつら、ちょいちょい私の脳内ナレーションにツッこんでくるけど、なんでなの?

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