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「…は?ふざけんなよ。」
細いながらも低いドスの利いた声に、モヤシ達はキョロキョロ辺りを見渡した。
どんなに探したって他の人はいるわけない。その声の主は私なんだから。
足早にモヤシとの距離を詰めて胸ぐらを掴む。予想外かつ突然の事態に、モヤシのイキリはバリッとはげておたおたしている。
「確かに近江涼介は冷血漢だし、榛名聖は誰にでもヘラヘラしてるし、金ぱ…広瀬真はバカだしすぐブスって言うけど。女も交換し放題なのかもしれないけど。
でも!でも誰よりも私のことをわかってくれたの!!私のこと褒めて、心配して、笑ってくれたの!
そんなことも知らないで、なにもわかってないとか、勝手に非道な人間扱いすんな!バァアアアカ!!!」
言い切って肩で荒く息をする。モヤシ達はしばらく唖然としていたが、持ち直して今度は逆に私の手首を掴んで窓際へ押しやった。
…あれっ?もしかしてこれ、ピンチ?
押し返そうとするけど、モヤシのくせに力は強い。後忘れてたけど私、寝不足だったんだ。
「姫ちゃん、あいつらに感化されてそんな汚い言葉まで…!やっぱり僕らが浄化してあげないと…!」
顔が近くて息がかかりそう。抵抗してもなんなく押し返してさらに近づいてくる距離感に、必死に顔を背けて抗う。
どうしよう、どうする?
人生最大の貞操の危機に頭の中はフル回転。でも男の力に寝不足の状態で勝つ術は見つからなくて、キツく目を瞑った。
「たっ…!」
まぶたの裏に、飄々とした3人の顔が浮かぶ。
近江涼介!
榛名聖!
金髪!
もう、誰でもいいから!
「助けて…!!」
その瞬間、ものすごい轟音と共に、教室手前のドアが吹き飛んだ。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。」
淡々としたその声に、何かが湧き上がる感覚がした。
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