13


というか“H2O”なんてだっさい通り名誰がつけたんだか。


だって水だよ?水。

水も滴るいい男ー、なんていうけど自分達が水になってちゃ世話ないわね。


あ、でもさっき滴ってたか。


コーヒーだけど。股間にだけど。めっちゃ染み込んでたけど。


「っふ」


やば、笑っちゃった。


ほぼ息のような私の笑い声に素早く反応した3人の視線が一瞬にして集まる。


自分で自分の首を絞めるとは、しくった。



「下手な泣きまねすんな」


低すぎない、冷たいながらもどこか色艶のある低音が響く。


それがあまりに威圧的で、それでいて……綺麗で。


笑いで震えていた腹筋ですらピタリと止まった。

そしてどうやら私の噛み殺した笑いは、俯いていたのと口許を覆っていたのとで表情がわからず泣き真似とみなされたらしい。


でも私泣き真似だけはしないって決めてるのよ。

なんか媚びてるみたいで嫌。まあ実際媚びてるんだけどさ。


「ごめんなさい…」


とはいえ「笑ってました」とも言えないので顔を上げて潮らしく謝ってみる。


もちろん上目遣いも忘れずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る