遡ること16年前、私こと藤澤 姫( ふじさわ ひめ )はこの世に生を受けた。


姫、なんて名前に負けないほどの容姿を携えて。


細くて柔らかい風に靡くとふわりと揺れる、肩辺りの長さの髪には天使の輪っか。

黒目がちの大きな目には長いまつげが惜しげも無くあしらわれ、紺のセーラー服から覗く素肌は透き通るような輝く白さ。

華奢ながらに女の子らしい柔らかみを持つその身体は大き過ぎず小さ過ぎず、思わず抱きしめたくなるジャストサイズ。



そう、私は自他共に認める美少女だ。



とは言え幼気で純真無垢な幼少期の私は、自分がこんなに恵まれた容姿だなんて知る由もない。

それに気付かせてくれたのは皮肉にもにっくき女共だった。


***

「姫ちゃんって男の子といる方が楽しいんでしょ~?」


幼稚園から小学校低学年にかけて女に近づくとなぜか決まってこう言われ続けた。


はて私はいつそんなことを言ったっけ?


確かになんかやたら男の子に話しかけられはするけどたいして楽しいと思わないし、女の子とは「男子のとこ戻りなよ」なんて言われて全く喋れないからそもそも比べようはないし…

素直で純粋な私はこれが“嫌味”というものだとは知らず悩んだ。結構本気で悩んだ。



小学校中学年くらいになると、言いがかりは


「藤澤さん○○ちゃんの好きな人とるなんてサイテー!」


に変わった。


その頃の私の悩みは『誰だそいつ』である。

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