238 本審査も大荒れ
予備審査を終えた次の日は、メイド全員で審査する本審査。会議室の壁に全てのデザイン画を貼り付け、フィリップたちが賞を与えた物は前後左右の中央に飾ってある。
ちなみにこの展示は信用できる者にしかやらせられないので、全てボエルの手作業だ。
いちおうフィリップも手伝おうとしたけど、背伸びして頑張って貼ろうとしていたら、ボエルに「いいよ。ありがとう」と優しく戦力外通告されたから泣きそうになったんだとか。
会議室が解放されたのは、前回メイドを集めた時間。多くのメイドは楽しそうに批評していたら、遅れてフィリップたちが入って来た。
「ボエル、ルール説明」
「はっ!」
投票の仕方は1人1票は当たり前だけど、自分の組の物には投票NG。必ずデザイン画のナンバーと自分の名前を書いて投票しなくてはならないし、もしも不正があった場合は無効票となる。
投票の期日は翌日の夜まで。見張りの兵士を2人借りているから、会議室はある程度は長く解放できる。これだけ時間があれば、全員一度は見て回れるはずだ。
投票用紙は、基本的にボエルが回収。決まった時間にメイド詰め所か会議室にいるから、本人の手渡しを有効票とする。もしも間に合わない場合は、最終日にメイド長のアガータが受け取ってフィリップの下へ届けることになった。
「以上! 殿下からは……な」
「あるよ~」
「あるらしい!」
「その言い方、なんかおかしくない??」
ボエルは「ない」と思い込んでいたので、紹介が雑になっちゃった。
「え~。いちおう言っておくけど、これを着るの君たちだから、よく考えて選びなよ。ちなみに、お城には他国の者とかも現れるんだから、その人に酷評されたら父上はどう思うかな? おおこわっ。じゃ、僕は帰るね~」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
フィリップのラストのセリフは、自分のせいにされたくないって言ってるようなもの。いまさらフィリップに超特大の重荷を背負わされたと知ってしまったこの場にいる者は、全員開いた口が塞がらないのであったとさ。
「ひでぇ! ひでぇひでぇひでぇ!!」
フィリップが悪い顔で笑っていた理由を完全に理解したと思っているボエルは、部屋に入るなり非難轟々だ。
「うるさいな~。何が酷いんだよ~」
「自分が責任取りたくないからって、メイドに全てを押し付けたことだ!」
「プププ。上手くいったよね~? 仕事も責任も全て引き受けてくれるなんて……アハハハハ」
「最低だ……こんなヤツにオレは加担して体を許していたのか……」
悪びれることもなくフィリップが笑うものだから、ボエルは膝を突いた。少しは信用していたんだな。かわいそうに。
「ま、これで
「へ??」
「だから、メイドたちの顔、見てなかったの?」
「言ってる意味が……」
「ボエルが自分の作品に投票したらダメって言った時を思い出して」
ボエルは混乱していたから復活には10分ぐらい掛かったので、フィリップがお茶を入れてソファー席に移動した。
「なんか……仲間と顔を見合わせてたような気がする……」
「アレ、たぶんだけど、裏で票を掻き集めてたんじゃないかな~?」
「裏で票を??」
「要するに、政治だよ。別にデザインなんてなんでもいいの。多数決で勝てばいいだけだからね」
「あっ!? ああ!! やる! アイツらなら絶対やる!!」
ボエルは身に覚えがあるのか今度は大興奮だ。
「これもたぶんだけど、自分たちの票を入れて計算していたけど、それが無くなったから足りなくなったんじゃないかな~?」
「だからあのタイミングで投票のルール説明をしたのか?」
「ううん。ルール説明忘れてただけ。いつも思い付きで足してたでしょ?」
「嘘くせぇ。でも、本当くせぇ……どっちだ!?」
「本当くせぇって、なに? 嘘は汚いからにおうと思うけど、真実は綺麗だからくさくはないんじゃない? どんな匂いなの?」
「フ、フルーツ……」
ボエルが変なことを言ったので、そこを広げるフィリップ。長々と匂いの話をして、フィリップの賢さはうやむやにした。ちなみに真実の匂いはリンゴに決まっていたよ。
「さってと。あとは開票だけだね~。どれが選ばれるんだろ~?」
フィリップはわかってるクセにワクワク。ボエルはまだわかっていないのでドキドキだ。
「個人的にはメイド長が好んでたヤツがいいんだけどな~……」
「アレならボエルも着たい感じ?」
「まぁな」
「じゃあ、それにけって~い」
「決定って、まだ開票もしてな…い……」
フィリップが決定を告げるとボエルの心臓は止まりそうだ。
「その通り。開票するの僕たちなんだから、好きなの選べるよ?」
「はあ!? なんのためにコンペにしたんだよ!?」
「……様々な人間模様を見るためかな??」
「もう嫌だぁぁ~! こいつ、なに考えてるかわからねぇ~~~!!」
ボエル、ついにギブアップ。エロかったり馬鹿だったり。賢かったりあくどかったり。フィリップの考えていることが意味不明すぎて、第二皇子専属メイドになったことを、この日死ぬほど後悔したのであった。
「マッサージしよっか? 気持ちいいことだけ考えてたら、他のこと考えなくてよくなるよ??」
「このエロ皇子が~~~!!」
なのでフィリップは一本に絞ってあげるのであったとさ。
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