228 暇潰し
リネーアとコニーの恋は、フィリップたちとの関係のせいで暗雲が漂っているが、コニーは帝都にいないのでバレるわけがない。それに週1回から2回なので、フィリップ基準では「ギリセーフじゃね?」とかなっていた。
完全にアウトだけど、リネーアはコニーと文通しているらしいので、気になったフィリップは読ませてもらったら大笑い。モブのキザなセリフがツボに入ったっぽい。
このこともあって、それ以降はフィリップはコニーに触れなくなった。さすがにリネーアに悪いと思ったそうだ。
そんなフィリップは、しばらくしたら仮病に突入。夜の町に繰り出し、学校は時々出席。テスト期間は治ったフリをして、鳴かず飛ばずの成績だ。
それでもボエルはホッとしてる。たいして勉強もしてないのに、真ん中辺りをキープしているからクビにならないと思っているらしい。皇帝に見せる点数は70点前後に上がっているとも知らずに……
そうこうフィリップがほとんど夜遊びに精を出していたら、早くも期末試験が終わって夏休みとなった。
「どうする? しばらくこっちに残るか??」
ボエルはなんだか城に戻りたくなさそうなので、フィリップはしばらく考えて答えを出す。
「ひょっとして……彼女できた?」
「なななな、なんのことだ?」
どうやら当たりみたい。
「隠すの上手くなったね~……いつから?」
「なんでわかんだよ~~~」
「ただの勘。カマカケに反応したら、そりゃバレバレだよ~」
「うぅ……1ヶ月前です……」
ここで下手に隠すとフィリップはからかいタイムに突入するのは経験済み。ボエルも話すしかない。
「ふ~ん。前から狙ってたドストライクを口説き落としたんだ。やるね~」
ボエルの新しい彼女は、5年生のアクセーン男爵令嬢に仕える平民のメイド。かわいらしい顔と性格の良さに惚れたらしい。でも、フィリップはナイスバディーに惚れたと疑っている。
「ああ。でも、まだ女と付き合うことに抵抗があるから、ここが正念場だと思う」
「てことは、まだマッサージしてないんだ……うん。とりあえず1週間は残ろう。部屋を使いたい時は言って。図書館にでも行って時間潰すから」
フィリップが嫌に協力的なのでボエルも怪しんでる。
「なんか裏があるのか?」
「ないない。応援してるだけ。1年も続いたら僕もマッサージ仲間に入れてほしいな~?」
「それをあるって言うんだよ!?」
「えぇ~。元カノの時は一回も仲間に入れてくれなかったじゃな~い」
「入れるわけないだろ!!」
結局、からかいまくるフィリップ。しかし、フィリップは本当に嫌がることはしないことをボエルは思い出し、ちょっとは感謝するのであった。
ボエルの恋の行方を見守るフィリップが自室にこもってダラダラし、夜には町に繰り出して3日。ボエルが満面の笑顔でフィリップを起こした。
「ふぁ~……なんかいいことあった?」
「え~。別に何もないッスよ~」
「ついにやったんだね。どうだった?」
「なんでバレるんだよ~」
「顔に書いてるからだよ……もう聞かない」
「えぇ~。聞けよ~?」
初めて大好きな人とマッサージしたボエルは面倒な人になったから、フィリップも塩対応。しかしボエルは、今まで喋りたかったけど我慢していたせいで歯止めが利かなくなったのか、メイド仕事をしながら喋る喋る。
フィリップは我慢して聞いていたが、昼過ぎにはギブアップだ。
「まぁ要約すると、マッサージが上手くいったから、彼女は早々離れないってことだね。てことは、僕のおかげってこと?」
「ああ。殿下のおかげで性別の壁は乗り越えられた。ありがとうございます」
「んで、部屋を使いたいってことだよね? いいよ」
「そうだけど……もうちょっと押し問答してくれよ~~~」
「めんどくさっ……あまり浮かれてると、足を
「今日だけだって~」
注意してもボエルは面倒くさいので、フィリップは寝室から追い出してふて寝するのであったとさ。
それから3日、ボエルは彼女と毎日してるのか恐ろしく機嫌がいい。今日は彼女の仕えるアクセーン男爵令嬢がダンジョンに潜って夕方まで帰って来ないらしいので、フィリップは朝から部屋を明け渡して外に出た。
「ふぁ~……どうすっかな~?」
かといって友達もいない。夏休みはニヵ月近くもあるからリネーアも実家に帰ったので、時間を潰すにも相手がいないのだ。
「昼の町に出てみるか……」
というわけで、建物の陰に隠れて茶髪の平民風に変装。壁の色に近いマントで頭まで包んだら、壁を飛び越えて帝都学院の敷地を出た。
ひとまずいつも遊んでいる歓楽街を歩いてみたが、この時間は店が閉まっているので人も
「どの子にしよっかな~? 2人組とか3人組のほうがいっぱい遊べるかな~??」
結局はナンパ。下品な顔で品定めしているので、「なにあのエロガキ……」って近付いて来る女性もいないな。
それでもお金の力でフィリップ好みの女性を釣り上げたら、宿屋にしけこんでマッサージ。お昼にはお別れして、食べ歩きしながらまた物色していた。
「やっぱり明るいといいな~。女がいっぱい歩いてるし、顔も見やすい。夜だとたまに、宿屋に入ってからこんな顔だっけ?ってなるもんな~」
フィリップがブツブツ呟きながら歩いていたら、前から赤ちゃんを抱いた女性が歩いて来た。その赤ちゃんが目に入った時点でフィリップは逆側に目を持って行き、擦れ違い間際……
「ハタチ君?」
「ん??」
フィリップの偽名が呼ばれたので振り返ってしまった。
「やっぱりハタチ君よね?」
「あ……いや……人違いじゃないかな~?」
このお母さんは、行き付けの酒場で働くミア。せっかく昼間に出て来たから夜の住人と絡みたくないからって、フィリップは嘘ついてるな。
「あんなにスケベ顔で歩くのなんて、ハタチ君しかいないよ! どうして噓つくの!?」
「僕、いつもそんな顔して歩いてたんだ……」
せっかく変装しても、スケベ顔が
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