085 会談が終わったあと


「殿下! よくお戻りになられました!!」


 城から馬車に揺られて寮に帰り、2階の食堂にフィリップたちが入ると、ラーシュが出迎えてくれた。


「ん? ただいま」


 ただし、フィリップは帝国に帰れる手段があったのに大失敗していたので、暗い顔だ。


「その顔は……話し合いは決裂したのですか?」

「話し合い? ああ~……女王様、めっちゃオッパイ大きかったよ」

「はい??」

「もう、ボインボインでね~」

「何しに行ってたのですか!?」


 フィリップがクリスティーネの胸の話しかしないので、ラーシュも周りで心配そうに見ている生徒たちも開いた口が塞がらない。なのでラーシュはダグマーから聞き出す。


「申し訳ありませんが、このように多くの耳がある場所では詳しくは話せません。ただし、女王陛下の人間性は、裏表がないことは確認が取れました。ここから離れても、暗殺の心配はないかと」

「ということは、殿下も帰還するのか?」

「いえ……殿下は、女王陛下に協力すると言ってしまったので動けないかと……そうですよね?」


 ダグマーがフィリップに問うと……


「だね……なんでダグマーはあの時止めてくれなかったの~~~」

「止めました。何度も止めました。それなのに……」

「あ、うん。ゴメン。やっちゃった~。エへ」


 情けない声を出したけど、睨まれたのでヘラヘラして謝るフィリップ。周りの生徒たちも「ダメ皇子」って目で見てるな。


「まぁアレだ。これまで通りだよ。君主が代わっただけで、学校はこれまで通りだから、みんなも勝手にしなよ。僕はここに残るから、出て行ったヤツの顔と名前は覚えておくからね!」

「「「「「ええぇぇ~……」」」」」


 フィリップは八つ当たりで脅すので、他国の生徒もカールスタード学院から逃げ出すことができなくなるのであったとさ。



 それからフィリップは自室に戻ろうとしたけど、ラーシュの部屋に監禁されて今日の出来事をダグマーが説明する。すると意外にも、ラーシュが褒めていた。

 フィリップなら1人で逃げると思っていたのにそれはせず、カールスタード王国の混乱を収めようとしていると勘違いしたみたいだ。


 思ったより早くラーシュの部屋から脱出したフィリップは、今度は自室に監禁。ダグマーから説教に似た手紙の手解てほどきをされ、全て書き終えると、今度はドメスティックなヴァイオレンスを受けて変な声が出ていた。

 フィリップが涙目になっていたから、後半はダグマーもノリノリになってしまったらしい……


 そのおかげでダグマーの機嫌も直ったので夕食やお風呂は楽しく済まして、フィリップは1人になったら部屋を抜け出した。


「だからどうやって登って来てるのですか!?」


 やって来たのは、クリスティーネの寝室。6階なのだから驚くのは当然なのに、フィリップは胸を両手で鷲掴みにして強引に中に入った。


「まさか……私の胸を揉みに来たんじゃ……ずっと言ってましたもんね!!」

「アレは冗談だよ~。モミモミ」

「だったら揉むな!!」


 今日のクリスティーネは激オコ。フィリップがベッドに押し倒しても完全防御だ。


「もう! なんで台本通りやってくれないんですか!!」

「だって~。僕ってダメ皇子なんだも~ん。家臣の前で賢いとこ見せられないでしょ~?」

「だったら同席させなければいいだけでしょ!」

「怒らないでよ~。これにはクリちゃんの谷間より深~い理由わけがあるの~。モミモミ」

「だから揉むな~~~!!」


 フィリップは胸をもてあそびながら、ダグマーが暗部出身のメイドで、隣の部屋の音を聞くことのできる特殊能力を持っていると説明すると、ようやくクリスティーネは落ち着いて来た。


「え……ひょっとしてあの時、本当に私のことを殺そうとしていたのでは……」


 いや、それを通り越して青ざめている。


「うん。危なかったね~」

「ハタチさんのせいでしょ!?」

「だから説明したでしょ~」


 どうせ聞かれるなら、ダグマーを中に入れてフィリップのセリフを言わせつつダメ皇子を演じたことを、何度も説明するフィリップであった……



「それはわかりましたけど……揉むな」


 なんとかフィリップの言い訳を聞き入れたクリスティーネは、エロイ手を叩き落としてから質問する。


「どうして昨日、そのことを言ってくれなかったのですか?」

「知らないほうが、いいリアクションになるでしょ? おかげでダグマーも、僕たちの関係にぜんぜん気付いてなかったよ」

「確かに同じように騙されていましたね……でも、腑に落ちませ~ん」

「アハハ。騙された被害者だもんね。ここは帝国を味方に付けられたことだけ喜んだら?」

「そうですね……」


 今日のプロレスは、対外的に帝国が味方になったと印象付けるためにやったのだから、大成功といえる。ただ、クリスティーネも納得はしたが、気になることがあるみたいだ。


「ハタチさんとダグマーさんって、どういう関係なんですか?」

「ダグマー? ただのメイドだよ」

「ただのメイドが皇子の頭を叩いたり、あそこを握ったりしないと思います……アレ、すっごく驚いたんですからね?」

「僕もビックリした。アハハハハ」

「笑ってないで教えてくださいよ~。どうせダグマーさんともやってるんでしょ~」


 フィリップが笑ってごまかしても、クリスティーネにはバレバレ。「もう一緒に寝ない」とまで言われて、フィリップも口を割ってしまうのであった。


「踏んだり蹴ったりって……それ、本当に体の関係なんですか??」


 でも、ダグマーの趣味が特殊すぎて、フィリップと出会うまで純真無垢だったクリスティーネでは、素直に受け入れられないのであったとさ。

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