070 予期せぬ来訪者


 泥棒騒ぎがあった翌日の夕方。今日はダグマーに優しく起こされたフィリップは、一緒に夕食をとっていた。


「マジで? 宝物庫や武器庫の物が全部盗まれたの??」


 そこでダグマーが知り得た情報を教えてくれたので、全部知ってるフィリップは驚いている演技。


「はい。城に近しい者から得ましたので、確実な情報です」

「マジか~……ちなみにどうやって仕入れたの?」

「殿下は知らないほうがよろしいかと」

「そっちのほうが気になるぅぅ~」


 ダグマーが教えてくれないので、演技じゃなくて本当に驚くフィリップであったとさ。

 ちなみにダグマーがどうやって情報を手に入れたかというと、音魔法。フィリップが寝ているのでやることもないから犯人捜しに町に出たら、そこそこ偉そうな人がいたから跡を付け、壁の裏から盗み聞きしたんだって。



 今日もダグマーが退室すると、フィリップは一直線にスラム街に向かった。兵士が見回りしている姿はあったけど、屋根を飛び交いあっさり侵入成功。そのままお掃除団のホームに下り立った。


「どこから降って来てんだよ!!」


 ちょうど外に出ていたオロフにツッコまれたフィリップだがニヤニヤしてる。


「まぁまぁ。ロビンから話は聞いてる?」

「ああ……城に泥棒が入ったからこんなことになってるんだってな」

「そそ。しばらくはこの状態が続くから、対策しなきゃね。幹部集めて」

「おう」


 ホームに入ると会議の開始。ロビンはスラム街の外にいるから、あとでフィリップが報告するみたいだ。


「お金より食料がマズイか……」

「ああ。あいつら、馬車とか荷車は通してくれないんだよ」

「う~ん……賄賂で通してくれるか試してみよう。同時並行で、警備の穴も探して」

「「「「「はっ!」」」」」


 とりあえずの方針が決まったら、フィリップも仕事を頼んでいた。


「倉庫のことはわかったが、その噂話を流したところでなんになるんだ?」

「さあね~? 僕も頼まれただけだから……おっと。口が滑った」

「はあ!? あんたより上のヤツがいるのか!?」

「声がデカイ。他の人に知られたら消されるから気を付けて。これ、僕も含まれてるからね?」

「お、おう……」


 フィリップでも適わない者がいるのかと、オロフも怖くなってそれ以上聞けないのであった……



 それから数日、賄賂作戦はすぐに機能したのでスラム街にも食料品は行き渡り、不便はなくなったと聞いたフィリップ。各種情報はフィリップの元へ集まるので成り行きを遊びながら見ていたら、お昼すぎにダグマーに起こされた。


「ふぁ~……なんか寝たりないんだけど~?」


 フィリップがあくびをしながら愚痴っていると、ダグマーが起こした理由を教えてくれた。


「なんでこんな時間に?」

「ですから、カールスタード王が訪問していると何度も言っているじゃないですか。お仕置きしないと頭も回らないのですか?」

「どんなお仕置きなんだろ~?」

「変な妄想はやめてください。急がないと、カールスタード王に失礼になります」


 さすがに国王直々に訪ねて来ているのだから、ダグマーも遊んでいる場合ではないようだ。


「う~ん……今日は体調不良で追い返してくれない? んで、明日のこの時間に来てもらって」

「それ、本気で言ってます??」

「本気の本気。てか、礼儀がないのは向こうっしょ。アポイントぐらい取れっちゅうの」

「確かにそうですけど……わかりました。なんとか帰ってもらえるようにお願いしてみます」

「そんな丁寧に対応しなくていいよ。無理言うなら、僕は会わないって言っていいから。全部、馬鹿な第二皇子のせいにして」

かしこまりました……自分で馬鹿って……馬鹿ですけど……大馬鹿ですけど……」


 国王を追い返すという超ド級のワガママを任されたダグマーは、珍しくグチグチ言いながら部屋から出て行くのであった。



 時が過ぎ、夕刻。フィリップはダグマーに起こされたけど……


「で、電気アンマは、アカン。やるならせめて、目が覚めてる時にして。ビックリするから」

「あんなことさせるからです」

「ゴメンって~~~」


 股間を激しく揺すぶらされたので、さすがのフィリップもダメージが入ったらしい。でも、完全には拒否しないんだな……

 それからダグマーが機嫌よくなるまでフィリップは踏まれ、夕食の席でお昼のことを聞いてみる。


「へ~……僕が会わないって言ったら、すぐ帰ったんだ」

「はい。それまではしつこく会わせろと言っていたのに、拍子抜けです」

「なんの用だったんだろう?」

「尋ねましたけど、殿下にしか言えないとのことでした」

「ダグマーの予想は?」

「……金策ではないでしょうか?」

「あ~……盗まれたんだっけ? そりゃ大変だ。プププ」


 フィリップは全てを知っているので、カールスタード王が相当焦っていると笑いが漏れた。しかし、ダグマーは厳しい顔だ。


「いいですか? 金銭を要求されても、絶対にいい返事をしてはなりませんよ?」

「わかってるって。僕にそんな権限ないもん」

「絶対ですよ? 口車に乗せられたりしてはなりませんからね?」

「わかってるって~。そんなに僕って信用ない??」

「はい。馬鹿ですもの」

「そうだけど~~~」

「いまのは怒る場面ですよ……」


 直接言ってもフィリップが受け入れてしまうので、明日が心配になるダグマーであったとさ。

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