069 犯人の自供


「何してるんですか何してるんですか何してるんですか!」


 フィリップが泥棒した犯人と知ったクリスティーネは、早口で説教。しかし声が大きすぎるので、フィリップはクリスティーネをベッドに放り投げ、手で口を塞いだ。


「落ち着いて。これも作戦だから。ね?」


 クリスティーネが頷くと、フィリップは口から手を離し、キスをしてから説明する。クリスティーネは「いま、なんでキスした?」と思いながら聞く。


「騎士団がスラム街に迫っていたでしょ? だから、時間稼ぎしようと騒ぎを起こしたの」

「なるほど……と、言いたいですけど、騒ぎが大きすぎます! 囲まれてるんですよ!!」

「声が大きいって。興奮してるなら犯しちゃうよ~?」

「だから! あんっ……」


 まだ大声を出そうとするクリスティーネにはペナルティ。フィリップは超絶技巧のマッサージで、下の口から黙らせた。


「きゅう~~~」

「また大声出したら、もっと長くしてほしいと勘違いするからね~?」

「はい~~~」


 クールダウンは成功。ちょっと時間を置いて続きを喋る。


「確かに大騒ぎだけど、盗んだ物が多すぎるから、馬鹿じゃない限り組織的な犯行だと思うはずだ。それも、城に近しい人物のね」

「そうなったらいいのですが……」

「馬鹿ばっかりだったら仕方ないね。アハハ。でも、そんなに大量の物、移動したら目が付くし、隠すのも大変だ。僕だったら、近くにあると推理するね。城の中とか、近くの建物とか」

「う~ん。可能性は否定できませんけど……」

「その証拠に、スラム街は封鎖だけでしょ? 中町の捜索を終えてから範囲を広げるから、後回しになると思う」

「なるほどです……」


 やっとクリスティーネは納得したけど、違うことも浮かんだ。


「ハタチさんが盗んだのですよね? どうやって盗み、どこに隠したのですか??」

「それは秘密~」

「え~。教えてくださいよ~」

「じゃあ、ちょっとだけ。僕はここ最近、お城の中を歩き回ってたんだよね~」

「そういえば、いつもより帰るの早かったですね。地下道から忍び込んでいた……いやいや、ちょっとすぎますよ~~~」


 クリスティーネはこれより、「仲間が多い」だとか「実は偉い人の子供」だとか謎解きしていたけど、全て大ハズレ。

 事実は、城の見取り図を手に入れたフィリップが巡回兵を掻い潜り、宝物庫や武器庫の物を根刮ぎアイテムボックスに入れただけ。さらに前もって上の階で発見していたクリスティーネそっくりの姿絵も、使えると思って盗んで来たのだ。

 ちなみに地下道は、1人だと怖いし虫がいたら嫌だという理由で使ってない。普通に城壁を乗り越えていた。



「ブゥ~~~」

「アハハ。そう怒らないで。かわいいかわいい」


 フィリップが何も教えてくれないのでクリスティーネはとうとう怒って頬を膨らませたけど、まったく通じず撫で回されている。


「ほら? いざ戦う時の武器は手に入ったし、向こうの武器の数は減らせたんだよ??」

「あ……本当ですね……ロビンさんもどこから工面するかで悩んでいました……」

「資金だっていっぱいだ。あいつら宝飾品をめちゃくちゃ貯め込んでいたから、クリちゃんが即位したあとに売り払えば、数年は税金いらないかもしれないよ」

「それも嬉しい報告ですけど……ハタチさんが持ち逃げする可能性は??」

「あっ! 考えたことなかった……これだけあれば、国を作れるかも……」

「ウソ! ウソウソウソ。いっぱいご奉仕しますから、忘れてくださ~い!!」

「じゃあお願いね~」


 クリスティーネのオウンゴール。持ち逃げなんて一切考えていなかったフィリップに策を与えてしまったので、焦ってフィリップの服を脱がしてマッサージを始めた。

 それで忘れると思っているとは、頭の中はお花畑だな。フィリップはフィリップですぐに受け入れているから、似た者どうしか……いや、フィリップはお宝に興味がないだけで、面白いから好きにさせてるっぽい。


 しかしクリスティーネは、上に乗ってフィリップに抱き付いたところで違和感に気付いた。


「クンクン……なんだかいつもと違う匂いが……クンクン。女性特有のあの匂い……」

「ア……アハハ。急いでたから、シャワー浴びて来るの忘れてた」

「最低です!」

「ゴメン。次からシャワーは忘れないから」

「その部分のことは言ってないんですぅぅ。あんっ!」


 どう考えても、クリスティーネは1日で2人としていることに怒っていたのに、フィリップは激しく動いてうやむやにしたのであったとさ。



 それから存分に楽しんだ2人は、いつも通りベッドでお喋りしている。


「お金や武器の使い道はわかりましたけど、どうしてひいお婆様の姿絵なんて持ち出したのですか?」

「あ~……それね。お城に飾っていた絵がそれだけ無くなってたら、なんか怖くない?」

「確かに……呪いめいたモノを感じますね」

「そこにクリちゃんが現れたら、超怖くな~い?? アハハハ」

「プッ……私は幽霊じゃありませんよ~。アハハハ」


 クリスティーネを笑わせたフィリップは付け足す。


「てのは冗談で、国盗りする時に兵士の前で、これを持って鼓舞するの。するとアラ不思議、みんな正当後継者が現れたと、すっごい力を出してくれるはずだよ」

「え……」


 フィリップの本当の作戦を聞いたクリスティーネは、驚きのあまり笑いが止まった。


「そういうことは先に言ってくれません? ただの嫌がらせだと思ってましたよ~」


 フィリップが、けっこう重大な役割を持っている物で茶化したモノだから、クリスティーネは最後も機嫌が悪くなるのであったとさ。

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