第11話 神の贈り物
「それと、カツミさん、楓にはお渡しする物があります……少々お待ちください」
茜はそう言うと、一旦「対魔師組合」の奥に戻り、二つの風呂敷包みを抱えてきた。
一つは片手で持てるほど小さく、もう一つは両手で支えないと持てないぐらいの大きさだ。
「……これはお二人にしか装備できない、倭兎神様からの贈り物です。シノブさんの『緋炎ノ剣』と同じく、我が家の家宝として伝えられてきたものですが、お二人に貸与せよ、との信託を受けました。どうぞ、開いて見てみてください」
その言葉に、二人は怪しむように目配せしたものの、同じく神から借りている私の剣の威力を知っているため、彼女の言葉を一応信頼したようで、それぞれ渡された包みを開けた。
「……なんだ、これ……さっきのシノブが付けていた物と同じ……いや、色が赤い、が……」
「そちらは、『びきにあーまー』というものらしいです。誰も付けた者がいないのですが、倭兎神様によると、衣服としてそれを身につけただけの姿になることで、身軽になり、敵の攻撃を圧倒的にかわしやすくなるということです。それに、呪術や妖術に対しても抵抗力が生まれます。あと、肉体が頑強になり、少しぐらいの攻撃では傷一つ付かないそうです……限度はありますけど」
「……なるほどな。確かになにか凄い力は感じる……ずっと身につけていても構わないのか?」
「はい、大丈夫ですよ。ただ、他の衣服を上から着ると、その効果はなくなります。だからといって、『びきにあーまー』だけの姿で長時間過ごすとすぐに疲れてしまいますから、そのあたりをうまく調整してくださいね」
「なんだ、そりゃ……いや、まあ、私は元からいざというときはサラシだけになってたから、似たようなものかもしれないが……」
カツミさんは、困惑していたものの、とくに拒む理由もないので、ありがたく受け取っておくと言っていた。
そして、楓はもっと困惑していた。
「これって……」
彼女が持っていたのは、薄緑色の、半透明の襦袢……着物の下に身につける、いわゆる古風な下着だ。
一応、首から下の全身を覆うような構造になってはいるが……極端に薄いし、ぶっちゃけ、スケスケだ。
「『聖風の羽衣』という名の一品です。とくに呪術や妖術に対する防御力は、先ほどの『びきにあーまー』よりも優れます。若干、動きに制限は出ますが、剣を用いた直接戦闘をしないのであれば、むしろこちらの方が受ける肉体的な傷は少なくなりますよ」
「そ、そうなの? ……でも、どうしてこんなに透けているの?」
「それは、倭兎神様が戦う女性の肉体を見ることが好きだからです……その筋肉の躍動、流れる体の線……そういうのにとても魅力を感じる、ということです。他の神様も同じらしいのですが……あ、誤解しないでくださいね。倭兎神様は女神様ですから」
……いや、そういう問題じゃないと思う……。
楓は
「いざというとき以外は、上から普通の着物を着て隠しておけばいいですよ」
という言葉に押されて折れたようで、普段から身につけるようにする、と言っていた。
ちなみに、茜も倭兎神から託された襦袢を着込んでいると言うことだった……いざというとき以外は見せられない、とのことだが、戦い巻き込まれたら見ることになるんだろうな……。
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