なんちゃって落窪物語

@suekoneko

はじめに

第1話 愛されて千年

●覆面作家


『落窪物語』(おちくぼものがたり)。

 およそ千年前に書かれたラノベです。


 高貴な生まれながら継母に虐待されていた姫君が、スパダリに救い出され、甘さてんこ盛りのハッピーエンドを迎える、というシンデレラ物語です。


 これまでの研究によって成立年代はかなり絞り込まれていて、西暦990年~999年に書かれただろう、と推測されています。


 清少納言は『枕草子』のなかで『落窪物語』に言及しているのですが、『枕』がほぼ完成したのが1000年ころと推定されているので、『落窪』はそれ以前に世に知られていて、「重版出来!」とか「たちまち五刷!」の帯付きで、あまたのミーハー女子に愛読されていたことになるわけです。


 作者は不明です。

 不明ですが、女性ではなく男性貴族と、ほぼ断定されています。


 非常に知的で教養は腐るほど持ち合わせていて、そこそこ重鎮扱いされている。宮廷に出入りなんかもしちゃっているけれど、出世は頭打ち。けれど、暇な時間だけはうんざりするほどある。そんなオヤジ貴族が「顔出しNG、身バレNG」で執筆したとか、しないとか。


 男性による作品と断定される理由としては、お下劣スカトロも躊躇しない、という点が挙げられます。スカトロを盛り込んで、それでも多くの読者をひきつける魅力的な物語に仕上げる――やはり男性ならではの力業ちからわざという感じがします。



●『竹取物語』と『落窪物語』


 平安時代中期はラノベの全盛期だったようです。

 なかでも、継子いじめものはテンプレ化していたようで、それだけ人気のジャンルだったことになりますね。

 

 ところで。

『竹取物語』という世界歴史遺産クラスの名作ラノベがあります。平安時代中期のラノベ全盛期よりかなり前――『落窪』より100年ほど前(西暦900年前後)に成立したと推測されていますが、全盛期に誰かが「さらにおいしくなりました♡」と、リライトした可能性がゼロではないんですね。


 リライトした人物がいたとしたら、それは誰か?

 まったくの想像ですが、『落窪』の覆面作家と同一人物の可能性あり、です。


『竹取物語』と『落窪物語』、この世界的超絶面白ラノベ二作の共通点として挙げられるのは――


  無駄のない構成

  物語展開のスピード感

  アホなキャラを多数登場させて笑いを取りにいく


 以上の三つでしょうか。



●主人公は?


『落窪物語』の主人公は落窪の姫君ではなく、道頼という青年貴族です。チャラいボンボンだったのに、継母によるいじめの実態を知るや、騎士道精神に目覚めちゃいます。

「この姫君を救い出すぞ。姫君が受けた非道に報復するぞ」と行動を開始する道頼。

 悪魔的なまでにサディスティックに復讐計画を進めながら、なにやらどんどん色っぽい男へと成長していきます。乞うご期待!

 


●『源氏物語』への影響


 女性視点ではなく男性視点で進む恋物語なら、『源氏物語』という金字塔がありますが、『落窪物語』は先行作品で、紫式部に影響を与えた側になります。


 長大な『源氏』のところどころにコミカルなエピソードを挿入することを紫式部に教えたのは、あきらかに『落窪』のように思われます。



●愛されて千年


 千年前には存在したけれど、散逸してしまった多くの平安ラノベ。

 千年を生きた『落窪物語』。

 その面白さゆえに多くの人々に筆写され、広く拡散されたからこそ、今日まで伝えられ、残ったわけです。



 *****


 筆者は古典文学の研究者でも何でもなく、投稿サイトの一ユーザーに過ぎません。平安時代と平安文学についての知識豊富な方々は、どうかスルーしてくださいませ。


【参考図書】

*小学館 新編日本古典文学全集17 『落窪物語・堤中納言物語』より『落窪物語』 三谷栄一・三谷邦明 校注・訳

*角川文庫 『新版 落窪物語』上・下 室城秀之 訳注

 

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【こちらも宣伝させてください】――『レディパープル内裏日記』

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二十首短歌です。歌になってませんが(汗💦)


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