第232話 武の頂き 完
「ハアアアアアアア!!!!!」
奥義を解放し、その力を纏ったリーズレットがアルセルシアに猛攻を仕掛ける!
今まで以上に常軌を逸した無数の超速斬撃の嵐が彼女を襲う!
ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!!
「!!!っ ぐっ!!!」
なんという速さと重い斬撃の嵐だ! 神気を纏ったこの私が捌くだけで精一杯とは!
防戦一方のアルセルシア!
そしてその闘いを見守る面々――
「!!! あれが例のリーズの奥の手か!
「ええ。 己の身体にチャクラの印を刻み、そこを別枠の貯蔵庫代わりにして、己の気や大自然の気を時間をかけて蓄積し、いざという時に纏うという――」
「ただあの技はリーズをもってしても百五十年前の段階ではまだ未完成だったらしいです。 身体にかかる負担と消耗がかなりのもので長時間維持するのも難しいとの事だったのですが――」
「ですが…… あれだけの霊圧を解き放っておきながら彼女自身は極めて冷静にかつ落ち着いている…… 気の流れそのものにしても――」
「ああ、恐らくは完全に極めたのじゃろうな…… 大したものじゃ――」
まさかリーズの力がこれ程までとは……
全盛期の妾と同等……
いや…… 悔しいがそれ以上じゃの――
あの若さでここまで極めてしまうとは……
気が遠くなる程の研鑽を積んできたのじゃろうな――
これはもしかしたら本当にアルセルシア様を超えたかもしれんの――
じゃが…… それでも……
妾はあの方がこのまま終わるとは到底思えん……
この逸戦の果て…… 一体どうなるのか……
ガキィィィィィィィィィィィィン!!!!
「~~~~っ!!!」
「どうしたの?
リーズレットに弾かれ、一旦後ろへと退がるアルセルシア。
「―― ふふ。 大したものだ…… こちらの予想を遥かに上回っている――」
「確かに…… 『このまま』やっても少々分が悪そうだ……」
「! 『このまま』? ……」
「どれ、 私もお前にならって良いものを見せてやろう――」
「コオオオオオオオ――」
ここでアルセルシアは先程のリーズレットと同様の構えをとり、気を練り始める!!!
「!!!!っ え!?」
「!!!!っ さっきの総長と同じ構え!?」
「オイオイオイ!!! もしかして――」
「―― 奥義!! 神格憑依の術!!!」
ズドオオオオオオオオオオオオ!!!!!
なんとリーズレットの奥の手をアルセルシアも再現してみせた!
凄まじい程の爆風を伴う霊圧を発生させるアルセルシア!!!
だがその後、リーズレットと同じく彼女も吹き荒れる霊圧を完全にコントロールして自身の身体にその力を集約させる!
おまけにその上から神気も纏っているという強化ぶりをみせつけるアルセルシア!
これには流石のユリウス達も度肝を抜かれていた!
「はは…… とんでもないな…… 師匠も…… 恐らく『災厄』戦の一度位しか見た事がないと思うのだが……」
「もしくは以前にリーズが拗らせてた時もあるいはか…… じゃが、なんにしても――」
「ええ。 たった一、二回見た程度で真似できる芸当ではないんですがね…… 信じられませんよ! それにこれは……」
「そうです。 姉様が普段纏っている気は最高位の気…… 神気です! 如何に閻魔の気を纏い! さらにそれを向上させているとはいえ、単純な気のスペックでは女神である姉様の方が格上!」
「勿論、練度によってはその限りではないですが、互いにほぼ同等の実力を磨いてきたとなれば…… この差は大きい!」
「しかもアルセルシア様もリーズ同様、力の大きさと負担に振りまわされておらん…… あの方もまた! 完全に極めていらっしゃる!」
「ここにきて戦況がまた引っくり返るか…… どうするのじゃ…… リーズ!?」
「―― これは…… まいったね…… まさかそうくるとは――」
「ふふ、かなり使い勝手が良さそうな技だったのでな。 パクらせてもらったよ」
「う~ん、理論的にはそこまで複雑じゃないんだけど、実際にやるとなったら極めて難しいんだけどな……」
「ちょっとショックだなあ…… 僕、それ完成させるのにかなり時間かかったから――」
「ま、私は天才だからな―― どうする? 降参するか?」
「ふふ! まさか!♪ むしろ今まで以上にアツくなってきたよ!♪」
「まさに最強! そうでなきゃ…… 超え甲斐がない!♪」
「いくよ! 師匠!」
「ふっ そうでなくてはな! 来い! リーズレット!」
飛び込むリーズレット!
迎え撃つアルセルシア!
先程まで以上に常軌を逸した超スピードでの闘いを繰り広げる二人!
そして、そのあまりに異常極まりない闘いに、とうとうついてこれない者達が出始めていた!
「…… もはや全然視えねえんすけど……」
「ええ。 もはや目で追う事すら我等では不可能ですね…… 悔しいですが、まさかこれ程までとは……」
「私もよ…… 恭弥にサアラは?」
「いや、残念ながら俺等にも追えてねえ…… 生まれて初めてだぜ…… こんな経験は――」
「ちょっと悔しいわね…… これは――」
「無理もない。 妾達ですら、やっと目で追えてる状態じゃ。 お主等が目で追えなくても不思議ではない…… それ程の極みじゃという事じゃ」
「ええ。 ただ…… 我等と同じく『彼』はしっかりと捉えているみたいですがね」
ユリウスの視線の指す方向にいるのは…… 黒崎修二!!!!
立会人である以上、彼は他の者達よりも間近でこの逸戦に身を置いている。
しかも僅かでも視界を遮らない様にと、ほとんど障壁をかけていない状態で――
その為、霊圧の余波による傷も多く受けている彼だったが、そんな傷等おかまいなしといった感じでこの闘いを見届けているのであった!
「障壁もかけずに…… でもそうなりますよね。 『観戦』ではなく『立会い』となると…… あの子も無理しちゃって――」
「マジかよ、 旦那……」
「しかもあの距離でだと!?」
「元々とんでもなかった方ですが、いよいよ人間離れしてきましたねえ…… !!!っ リーズさん!?」
ガキィィィィィィィィィィィィン!!!!
「ぐうっ!!!!!」
アルセルシアの渾身の一撃が炸裂!
辛うじて自身の剣で防いだものの、大きく後ろへ吹き飛ばされるリーズレット!
「嘘だろ!? あの総長が…… 押されてる!?」
信じられないといった様子のセシリア!
それもその筈!
あのリーズレットが一対一でここまで追い詰められた姿等、初めて見るからである!!
「ぐっ!
無数の斬撃を致命傷こそ避け、捌き続けてきたものの、逆にいえばそれが精一杯で彼女の身体は夥しい斬り傷によって鮮血に染まり上がっているのであった。
「―― ここまで凌ぐとは大したものだったが…… もうやめとくか?」
「お前はよくやった…… 私を除けば間違いなくお前が最強な程にな――」
「ここで退いても十分すぎる位に立派だぞ――」
「はあ、はあ、はあ、はあ――」
ボロボロになりながらも起き上がるリーズレット――
「ふふ…… 流石師匠だ…… 尊敬なんて言葉じゃ全然足りなくなる位の惚れ惚れする強さ…… そして在り方だ――」
「だが…… まだ終わりじゃない!」
「見せてあげるよ! 僕も…… 僕の全てを!」
「アアアアアアア――」
「!? なに!?」
ここで追い詰められている筈のリーズレットが再び神格憑依の術を発動した時と同じ構えをとる!!!!
「『秘奥』! 神格……
ズガアアアアアアアアアアアアン!!!!
更なる気を解放した彼女の身体に落雷が落ちる!!!!
「!!!!!!!っ これは!!!!!?」
落ちた雷と彼女の閻魔の気が融合!
バチバチと火花を散らせつつも、その蒼白い闘気の上から炎と雷の闘気がところどころに彼女の身体を優しく包み込む様に覆っていく――
その姿、光景はあまりに神秘的かつ美しいものでもあった――
「きれい――」
「信じられん…… 今まで以上の気を放っておきながら…… なんて清廉で落ち着いた淀みのない気じゃ――」
「奴もまた…… 神をも超えたか……」
「凄いわ…… 二人共……」
驚きを隠せないでいるレティ、ユリウスにイステリア。
他の者達に到っては、もはや声すら出せない状況でいた。
―― ここにきてまた…… 戦況が変わったか!?
ったく! ガチで命懸けだな! 立会人も!
ま、それだけの価値はあるか――
なんにせよ! ここまで付き合ったんだ!
しっかり見届けねえと――
同じく身体が血に染まっている黒崎も、更に気を引き締める!
そしてアルセルシアも――
「―― レオンとの決着の際に使ったとされる神格憑依と雷遁、瞬撃特化の強化術の重ね掛けか…… まさかこれ程までとは…… だが――」
「それは寿命すら縮める技だと聞いていたが?」
「これも当時はまだ未完成だったからね」
「僕が山にこもり、心・技・体…… そして武人として、人としてその在り方を磨き続けてきたのは己を基礎から改めて見つめ直し、そして鍛え直す為―― そして――」
「この秘奥を完成させ! それに耐えうり! 完全に自分の者にする為の身体と心を手に入れる為だ!」
「結果…… ネックだった身体の負担も少なくなったよ♪ 勿論、威力も以前とは比較にならない程に仕上げてきた――」
「まあそれでも短時間しかこの状態にはなれないけど――」
「
「皆には感謝しないとね――」
「―― そうだな…… そしてそれをちゃんと受け止め、しっかりと自分の糧にしたのは紛れもなくお前自身の努力の賜物だ――」
「成長したな―― リーズレット――」
「ふふ♪ その皆には勿論、師匠も入っているけどね――」
「ありがとう師匠…… 僕の師匠として、僕と出会ってくれて――」
「師匠が僕の師匠で本当に良かった――」
弟子として感謝の念を送るリーズレット――
その表情から彼女がどれだけ師を想い、尊敬していたのかが見てとれる――
「ふっ 泣かせる事を言ってくれる――」
ここまで素直な想いをぶつけられたアルセルシアもまた、感慨深いといった様子である――
「―― ま♪ たまにはね~♪」
「そしてこれが…… 僕の僕なりに考え、辿り着いた僕としての在り方だ……」
「僕の全て…… 全部! 受け止めてくれるかい♪? 師匠♪?」
「ふっ! 当然だ! 来い! リーズレット!」
「うん!」
ここで自身の刀を鞘に納めるリーズレット。
「この一撃で決めさせてもらう―― 僕の最速最強抜刀術……」
「瞬華雷月――」
極限まで集中し、抜刀術の構えをとるリーズレット――
「いいだろう…… 受けて立つ!」
「姉者の最強技『
「神撃滅刀―― これをもって…… 全力でお前の在り方に応えさせてもらう!」
自身最強の袈裟斬りの構えからくる奥義で迎え撃とうとするアルセルシア――
互いにじりじりと間合いをうかがい、詰めていく両者……
そして――
「はあああああああ……」
「はあああああああ……」
「ハアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「ハアアアアアアアアアア!!!!!!!」
カッ!!!!!!!!!!!!
一瞬の閃光のもと――
次の瞬間には互いの姿は交差し合い――
それは駆け抜けていった後であった――
「――
「ええ――」
「ええ――」
「まさに―― 極みか――」
レティ達ですら視えなかった程の両者渾身の一撃――
だが…… 立会人である『彼』はしっかりと『それ』を見届けていた――
ピシッ!!!
カラン! カラン!
時間差で地に斬り落とされた一つの刀身――
そして――
「―― 勝負ありっ!!!!」
「勝者!!! ―― !!!」
天界史上 究極の逸戦と言っても過言ではないこの名勝負――
それは決して表には語り継がれない事であろう――
しかし――
それでも――
それは紛れもなく――
一つの伝説が生まれた瞬間であった――
* * *
こんにちは。
作者のアニマルです。
このやたら長く! 好き勝手に描き続けたこの物語に(笑)ここまで付き合って下さった読者の皆様!
本当にありがとうございました!
次回! いよいよ最終話です!
それ+おまけエピソードも描いて残り計二話で締めさせていただきます!
どうか最後まで! この物語!
そしてそれを彩ってくれた! 作者が愛した多くのこの物語に出てきた登場人物達のやり取りをお楽しみいただけたら自分としては幸いです(^^)
それでは次回更新時に!
失礼します(^^)
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