第233話 霧島の新たなる道 前編
アルセルシアとリーズレットの決闘の翌日――
時刻は十八時半――
祐真が営む喫茶solveにてコーヒーを飲む黒崎。
ちなみに大分良くなったが未だ身体の節々には包帯やガーゼ等に身を包んでいる状態であった。
そんな彼と同じテーブルで霧島、カエラ、京子がまくしたてる様に言葉をぶつける。
「―― それで…… 障壁もほとんどかけんと化け物二人の決闘の余波でそないボロボロになって帰ってきたと……」
「―― アホかっ!!!!!」
「生き返ってひと月も経たんうちにどんだけボロボロになってんねん!」
「好きでケガして帰ってきたわけじゃねえよ!!!」
「いや、あんたマジでどんだけ周りに心配かけんすか。 黒崎さん」
「全くですよ…… そりゃ京子さんも怒りますよ。 そんなとこに黙って行かれてケガして帰ってきてたら――」
「ホンマやで!」
「だから悪かったって言ってんだろ! それに俺は巻き込まれた側なの! 文句は全てリーズに言ってくれ!」
「まあ確かに京子さんに言うと止められそうだったから、こっそり黒崎さんに接触して依頼しにきたんでしょうね」
「でしょうね…… あの人も困ったもんですよ」
「くっそ~! リーズの奴! 今度会ったら覚えときい!!!」
「まあそれはともかくとして――」
「結局どっちが勝ったんですか!?」
「そうそう! もう史上最強決定戦じゃないですか! どっちが勝ったんです!?」
「ああ、それはな……」
「それは!?」
「それは!?」
「それは!?」
「―― 内緒だ――」
バキィィ!!!
「げふっ!! 何しやがる! テメエら!」
三人にぶん殴られる黒崎!
「なにもったいつけとんねん! はよ言わんとしまいにゃぶん殴るで!」
「そうですよ! 黒崎さん!」
「どっちが勝ったんですか!?」
「もう殴ってんじゃねえか! テメーら!」
「別に意地悪くして言わねえわけじゃねえよ」
「考えてもみろ。 女神と閻魔一族の決闘だぞ! どっちも天界を…… というか世界を預かる身の立場だ。 当然どっちも規格外の力を持ってる」
「それを稽古でもなければ試合でもねえ! 決闘…… いわば私闘だ! それだけでも問題だってのに、あの二人の立場じゃどっちが勝ってもそれなりには角が立つんだよ!」
「勿論、別にお前等に言っても口外しねえのはわかってるけど、だからってそういう問題じゃねえんだよ」
「不必要に好奇心や気まぐれだけで、その場に居合わせなかった奴等にまで決闘の結果を無闇矢鱈に言うもんじゃないんだよ! こういうのは!」
「立場とかもそうだがそれとは別にタイマンってのはそういうもんなの! 当人達と立会人! それと居合わせた連中だけが知ってたらそれでいいんだよ!」
「だからこそ! ユリウスとイステリア、それに治療役としてマクエルに立会人である俺だけが本来はその場にいる筈だったんだ!」
「まあ『先』がねえからって反則的な駄々をこねてきた連中や前にリーズが迷惑かけた連中は別として――」
「決闘…… つまりタイマンってのはそういうもんなの! 今回の場合は特にな! 周りが
「え~!!! なんや! つまらん!」
「言ってる事はわからなくもないですが……」
「う~…… でも気になりますよ~!!!」
「ま、今回のに関しては修二の言う通りだよ。 御三方――」
「祐真はん!」
ここで見るに見かねて祐真が黒崎のフォローに出てくる。
「修二の言う通り、決闘てのは互いのプライドやら信念やらとかを諸々ぶつけ合う真剣勝負だ。 当人達が喋っていいって言ってんならともかく、周りが結果を詮索するもんでもないんだよ。 今回の場合は特にそうだがこれに関しては基本誰が誰と
「俺だって気にはなるけども、ここで無理矢理聞くのもちがうだろ? どうしてもってんなら修二にじゃなくて本人達に直接聞きな。 それが筋ってもんだろ?」
「うぐっ! 確かにそうかもしれへんけど……」
「流石にあの二人から直接聞く度胸はないなあ……」
「私もですよ……」
「だったらこの話はここまで! 代わりと言ってはなんだが今この店にいる連中にだけこれサービスすっから♪」
そう言って祐真は三人を宥める為に特製のモンブランを提供する。
「うう…… !!!!っ そしていつもながら安定してめっちゃ美味いわ~!!! 祐真はんの出すやつ!!!」
「確かに…… これ出されたら何も文句言えないですね!!!♪」
「ホント毎日でも通いたい♪ 私、ガチで近くに引っ越してこようかなあ……」
こうして、ようやく落ち着いた三人。
「やれやれ。 やっと落ち着いたか…… 助かったぜ。 祐真」
「はは! お疲れさん! お前も立会人、大変だったな。 けどあの二人の最強対決に間近で立ち会えたんだ。 その位のケガで済んだなら安いもんじゃねえか。 結果的にはだけどよ――」
「まあな」
「ふふ。 お疲れ様でした。 シリウスさん」
「我としたことがそんな逸戦を見逃すとは…… 一生の不覚だ! あっ! 祐真よ、カフェオレおかわり頼む。 ミルクと砂糖たっぷりでな! それとモンブランもう一皿頼む!」
隣のテーブルでコーヒータイムを楽しむのはリリィ・カートレットに神獣グライプス――
ちなみに本日は二人共非番であった。
「俺は構わねえけど…… いいのかい? リリィちゃん?」
「もう! グーちゃん! お小遣い前借りしている状態でそんなに注文して…… 今追加注文した分も来月分のお小遣いから引いておきますからね!」
「オニか! 貴様はっ!!!」
「当たり前でしょう! 少しは貯金する事を覚えなさい!」
断固抗議するグライプスに説教するリリィ。
相変わらずの二人のやり取り――
零番隊解散後はこの二人、そしてアイオスもまた諜報部系列に残って日々任務に取り組んでいる。
まあグライプスは在籍こそしているものの余程の案件がない限りは、たまにの手伝い程度にしか仕事をしてないらしいが……
「つか四足歩行獣が足組んで椅子に座った状態で常連の風格出しながら喫茶店満喫してんじゃねえよ! どんだけ自由なんだ! お前は!」
「はは! まあ今更だけどな。 この街区でも割とぐの丸っちは有名だし、かなり人気者(マスコット扱い的な人気だけど)だしな!」
「有名って…… あいつ一応はまだ諜報部に籍だけは残してんだよな…… それであんな目立ってていいのか?」
「ま、その辺はリリィちゃんの舵取りに任せるって感じで」
「相変わら大変そうだな。 リリィも」
「そういや霧島は『明日』からだったか? 『例の新しい仕事』――」
「ええ。 今の支部の仕事と掛け持ちでやっていきますが、そっちを少し減らしてどちらかといと明日から入る仕事がメインになっていきますかね」
「いよいよですか…… 頑張って下さいね! 霧島君!」
「ええ。 勿論!」
カエラ達から激励を受けた霧島は明日は朝が早い為、先に帰って早めに休むのであった。
* * *
こんにちは♪
作者のアニマルです(^^)
一件お知らせです!
もうお気付きでしょうが前話の最後に後一話+オマケエピソード一話の計二話分で最終回を迎える予定だったのですが……
描いていたら何故か最終回の分だけで一万文字前後になってしまう事態に!!💦💦
というわけで、まあそのまま一話分で載せてもいいかもとも思ったんですが、一応最新話を三分割して投稿、それからオマケ一話という流れとさせていただきます💦
うぅ…… そんな長くする予定じゃなかったのに、告知の内容と違う結果に💦
中々思い通りにいかないものですね💦
反省しつつこれからも頑張ります!
というわけで! 分割した後二話分+オマケ一話分! 良ければ最後までお付き合いいただけると幸いです!
それでは失礼します!(^^)
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