第229話 迫る決闘の時…… ①
そこは美しい緑に囲まれた草原――
『
そして――
「―― 来たか」
「やあ、
「いや、かまわん。 私も先程来たばかりだ」
「その様子だと立会人の件は引き受けてもらえた様だな」
「うん♪ いや~彼程適任者はいなかったから助かったよ♪」
「ま、成り行きとはいえこんな事態になってんならしゃーねーだろ」
「天界史上最高の一戦にも数えられるだろうこの戦い…… 俺なんかが見届け人なんて恐れ多い事この上ねえが、依頼を引き受けたからには責任をもって見届けさせてもらうぜ」
「ふっ。 そうか――」
「よろしく頼むね♪ 修二♪」
「おう! ていうか……」
「お前等も来てたのかよ!!!!」
そう! 黒崎の眼前にいるのはアルセルシアだけではなかったのだ!
彼女の他にもイステリアにユリウス、レティ、雫、恭弥とサアラ、それからマクエルとセシリアもいたのであった!
それも全員で大きめのテーブルを出し、物凄くまったりと紅茶とケーキを楽しんでいるのであった!
「ははは! いや~♪ 僕としても自慢の師匠と愛しの妹の一戦! 見ないわけにはいかないだろ♪?」
「
「はは! つっても普段生活してる場所が天界だからもう既にある意味冥土なんだけどな♪」
「笑えないわよ! 恭弥! おばあちゃんも!」
「まあまあ雫! 落ち着いて! でも確かにこの対戦カードは見ないと損よね♪」
完全に物見遊山的なノリを漂わせているユリウスにレティ、恭弥夫妻に雫――
「まさに天界史上稀にみる武の世界における頂上決戦ってわけか…… ったく! こっちが身震いしてきたぜ!」
「ふふ、確かに! 総長…… いえ、リーズさん…… 精々気張ってくださいよ♪ あっ♪ イステリア様、紅茶もう一杯いただいても?」
「ふふ、どうぞ♪ マクエルさん♪ 良いでしょ? この茶葉♪」
「ええ♪ とっても♪ どこでお買いになられたんですか?」
「これはですね――」
流石にこれ程の一戦! 興奮気味なセシリアにマイペースで紅茶を楽しむマクエル。
「ふふ♪ 皆楽しんでるね~♪」
「どんだけくつろいでんだ! お前等! つかユリウス! 大王業務はいいのか!? レティ達も! よく雫が了承したな!」
「してないわよ! 止めたわよ! 全力で! けど聞かないのよ! この我儘集団は!!!!!」
「どわ!? つか俺にキレんなって!」
大声で黒崎にくいかかる雫!
「というか兄上とイステリア様は当然として、マクエルはイステリア様と共にこの後の治療役を頼んでてね♪ それとセシリアは以前、例の件で迷惑かけたから良かったらって話しておいたけど叔母様達まで来てたんだ♪ 結構内密に動いていたつもりなんだけど――」
「ふん、妾をみくびるでないわ! お主等が何かしようとしていたのは察しがついていたからな。 遠視の魔術を通してちょこちょこお主の事を見ておったのじゃ!」
「それで
「そうそう♪ そこでいざ行こうとしたら雫に見つかって――」
「私達三人揃って正座させられて説教! 『少しは自分達の身体を考えなさい!』ってガチギレされたんだけど……」
「ハア…… もう土下座までされて『どうしても見に行きたいから行かせてください!』 って三人がかりで駄々こねられて泣きつかれて……」
「本来なら絶対にダメだけど三人共、ね――」
「悔いは残してほしくないし、確かにこれ程の一戦は少しでも武の世界に携わる者なら興奮する気持ちはわかるしね……」
「なるべく離れた場所で見るっていうのと、イステリア様同様! 私も全力で障壁を展開! それでも二人の強力過ぎる霊圧にあてられ体調が悪くなったら――」
「私達が観戦するそこの崖の上…… あそこに天界へと繋いでいる『門』を設置してあるからその時は強制的にすぐにでも避難させる!」
「その条件で泣く泣く了承したのよ!」
溜息交じりにこれまでの経緯を説明する雫――
「…… なんか…… ホント大変だな。 お前……」
「もう慣れたわよ。 ったく!」
「と! いうわけで妾達もこの戦い! バッチリ目に焼き付けさせてもらうぞい!」
「っていっても俺等は安全圏で離れて見てるから旦那は見届け役しっかりとな♪」
「うっかり死なないで下さいね♪」
「縁起でもねー事言ってんじゃねえ! やっぱ誰か俺と代われ!」
「冗談ですって! シリウスさん♪」
「そうそう♪ 頑張れ! 旦那♪」
「ったく人ごとだと思って!」
「ま、先輩らの事はアタシ等も障壁重ねて気にかけとくから安心して散ってきてくれよ。 元総司令殿」
「喧嘩売ってんのか! セシリア! 相っ変わらず生意気だな! お前はっ!」
「って、ん? そういやケインはいねえのか? いつも一緒だろ? お前等」
「別にいつも一緒ってわけじゃねーよ! なんで皆アタシとケインをセットに考えてんだよ!」
「正直声をかけるか僕も迷ったけど、今回は立会人以外は人数を絞らせてもらった――」
「まあ、叔母様達がいたのは予想外だったけど…… 事情が事情だし、やりたい事は全部やってほしいからいいかな♪」
「僕とイステリア様は立ち合いとは別にそれぞれの立場から居合わせた方がいいと思ってね。 マクエル君はさっきも話に出た通りイステリア様と共に決闘後の治療役を頼んでいたんだ」
「ええ。 間違いなく天界の裏の歴史に残る伝説の名勝負になるでしょうから。 ただ――」
「ええ。 リーズにしろ師匠にしろ、お互いの立場が立場だからね…… どちらが勝ってもあまりその結果を必要以上に知る人間を増やしたくはないのだよ」
「ま、それもそうか……」
二人共肩書きは女神と大王の妹――
リーズが勝ったら神すら超える力の持ち主として畏怖する者達も出てきそうだし、それ以前に女神が果し合いに負けたなんて話が広がったら天界全土の士気や治安に影響が出る可能性がある。
アルセルシアが勝っても女神の絶対的強さと存在感を改めて認識させられるのと下手したら才ある閻魔一族が死ぬ程努力しても結局神には及ばず一般人の者達は自分達の小ささを思い知らされる事になる。
勿論、こんなのは極端な例だし普通だったらこんな事はまず起きねえ。
だが二人共圧倒的なまでのカリスマ性と立ち位置、さらに多くの治安部関係者は大戦の表の黒幕は一応アルテミス…… つまりは絶対的な力を持つ女神が敵側になっていた……
そういう事だって起こりえるんだって皆わかっちまったからな……
正義なんてものはそいつの立場や状況、また時代なんかでも変わっちまう事は普通にある。
だから怖い――
そう思う奴だって少数でも出てきちまうかもしれねえしそれが飛び火となって広まっちまうかもしれねえ――
だからこそ互いに桁外れの強さを持っていて尚且つデカいポジションにいる二人の決闘、そしてその結果を無理に知ってる奴を増やさなくてもいいんだよな。
ま、考え過ぎってのはわかってるしそこまで拗らせる可能性なんて限りなくゼロに近い方なんだろうが――
それでもこいつらは立場が立場だからな。 念には念の為ってやつか……
まあその方が無難っちゃ無難だし……
それにタイマンってのは本人達が納得してたらそれでいいしな!
周りが煩くなりそうなら今回みたいな形をとればいいってたけだし、だからそうしたんだろうが……
ま、なんにせよ俺は依頼通りこの決闘をしっかりと見届け、立ち会うだけなんだがな――
こうして色々な事情や想いを抱えてここに集った面々!
闘いの時は目前まで迫ってきていた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます