第227話 リーズレットの真意……

 リーズレットの口から思わぬ発言が飛び出し、暫し両者の間に沈黙が流れる。


 互いに目を反らさず相手を見据えるかの様に佇む両者。



 そして――
















































「ふふ…… 嘘だよ♪」 


「少なくとも『今はまだ』…… ね♪」


 その言葉を聞いてホッと一息つく黒崎。


「ふう。 ったく、悪ふざけが過ぎるぞ! リーズ!」


「別に悪ふざけじゃなかったんだけどね~♪」


「修二…… さっき『霧島商会から買い取った品』…… もう一度見せてもらえる?」


「? ああ、別に構わねえが……」


 黒崎は自身のPSリングからリーズレットの言っていた品、『黒崎が今後の仕事用に必要に応じて使う新しい剣』を取り出し、彼女へと手渡す。


 青と白を基調とした扱いやすい手頃な重量と頑丈さに重きを置いた剣…… といっても不殺ころさず用で両側とも峰になっているブレード状の棒と言った方が表現が正しいかもしれない。


 それを受け取り、じっくり品定めをするリーズレット。



「―― うん♪ 確かに良い剣だね♪ 流石♪ 霧島商会彼等も良い仕事をする♪ 刃はついていないが不殺のコンセプトなら間違いなく業物の類だ♪」


「本来なら…… ね」


「君が復活した後、先生から詳細は聞いたよ♪ 『現在の君の在り方』を――」


「! そうか……」


「気を抑えていてもわかるよ…… 今の君は女神や僕等閻魔一族にも匹敵しうる力を身に着けて今までとは違うベクトルの存在へと進化した――」


「リスクも含めて諸々話は聞いたけど、その話はまた今度でいいかな♪」


「重要なのは、今の君が純粋な力の部分だけでも僕等に匹敵しうる力を身に着けたって事♪」


「そうでなくても、君の元々培ってきた戦闘能力は僕等を除けば天界でも間違いなくトップクラス♪ そこに加えて君の最も大きな武器の一つでもある戦略眼や搦め手といったものも今まで通り…… いや、力の向上で今まで以上にあらゆる状況に合わせて活かせる様にもなっただろう……」


「さっきの一撃にしても…… 力だけでなく動体視力もさらに向上…… その上で僕の疑似的に放った殺気をも無視して避けようともせず僕の本質までしっかりと見極めた――」


「いやはやホントに――」


「凄く…… そそるよね!!♪♪」


 再び戦闘狂の顔つきになっていくリーズ。


「目付きがヤバくなってんぞ! リーズ!」


「おっと! 失礼♪」


「オッホン! 話をもどすけど、君は大きく進化した。 けどその事で一つ大きな問題も発生してしまっている」


「それは…… 恐らくその剣では今の君の本気の霊圧には耐えられない事だ」


「……」


「気の性質すら変わり、神気に近いものを纏っている今の君が全力でその剣を振るえば、どんなにもっても精々十分位が関の山だろうね」


「とはいえ、天界でも頑張って探せばまだ手に入れる事ができやすい通常レベルでの素材では間違いなく最高級の素材…… その上で彼等が鍛えた一振りだ」


「素晴らしい出来だし、かつての君ならアリだったかもしれないけど、今の君に見合う程の獲物となると通常の素材で作る事はまず不可能だ」


「それこそ…… かつての君の宝剣や僕の妖刀、兄上の閻魔刀や女神殿たちの神剣等の素材にも使われている『神の力を宿した特別製の超金属』が必要になる」


「ただそれこそあの金属はそうそう簡単には手に入らないし、手に入ったとしても霧島商会の腕をもってしても、剣として鍛え上げる事ができるかは正直厳しいと言わざるを得ないかもね」


「まあ、君程の使い手なら本気にならずとも大抵の依頼は荒事関係なら楽勝だろうけど。 なんなら素手でも十分だろうけど。 君、喧嘩も強いし♪」



「だけど――」



「もし…… またかつての『災厄』の様な世界そのものすら揺るがしかねない程の脅威が現れた時は…… そうも言ってられなくなるよ」


「この剣もある意味では今の君の在り方に合ってると思うし、急ぎでどうこうした方がいい話でもないけど……」


「いつか…… 不殺用とは別の…… ちゃんとした一振りを用意しておくべきだよ」


「解決屋としてでもそうでなくても、今後ももし天界に未曾有の危機が迫った時に、全力で対応する覚悟があるならね――」


「じゃないと…… 場合によっては本来守れる筈だったものを取りこぼしてしまう事もあるかもよ」


「…… ま、言ってる事はわかるぜ」


「ならよかった♪」


「まあ散々偉そうな事言ったけど、僕個人としてはそういうの抜きにして、単純に全力を発揮しきれない今の君とはまだりたくないんだよねえ……」


「というわけだから! なるべく急ぎで本気用の剣も用意してね♪」


「って、たった今! 急ぎでどうこうの話じゃないって言ってなかったか!?」


「いや、それは力を持つ者の在り方としてというかそっち方面の話だよ♪」


「僕個人としては! いつでも君には僕と本気で闘える準備自体は早めに済ませておいてもらえると安心だからね♪」


「勿論! 僕もあらゆるツテを使って情報を集めるあげるから♪」


「いっ! いや~…… そう簡単にアレ級のレア素材は見つかんね~だろう! ま、気長に待っててくれや♪」


「安心して♪ 『なにがなんでもどんな手を使ってでも絶っっっ対に!』見つけてあげるからね♡」


「そしたら僕と心ゆくまで死合おうね♡」


「絶っっっっっっ対に!!! 嫌だ!!!」


「ははは! まあそうは言っても僕もこれからそれなりに忙しくなるから探すにしてもその合間になるだろうし、どのみち長期戦にはなるだろうけどね♪」


「それを抜きにしても、どのみち全力の君と闘うのはまだまだ先にとっておくよ♪」


「楽しみを全部まとめていっぺんに片付けたら後がつまんなくなっちゃうから♪」


「今日は『先約』がある事だし♪」


「! 『先約』…… だと!?」


「ああ。 実はこの後の『用事』ってその事なんだよね……」












































「いい加減そろそろ『天界最強の剣士』の座を明け渡してもらおうと思ってさ」


「!!!!!!っ なっ!?」


「それにいつかは弟子が師を超える事こそ、最高の師匠孝行だと僕は思うしね♪」


「元々大戦が終結した後、折を見て時間を作ってもらう約束はしてたんだよ♪」



「お前…… まさか!?」


「ああ。 まごう事なき真剣勝負…… そして決闘といったら立会人は必要不可欠でしょ」


「正直かなり危険な役まわりだから、さっきは念の為に確認したが今の君なら…… いや、色々な意味でも君程適した人間はいないだろう……」


「これなら『安心して依頼を頼める』……」




「解決屋 黒崎修二! 君に依頼をお願いする!」


「これから行われる僕、剣神 リーズレット・アルゼウムと天界最強の女神 アルセルシアとの決闘――」


「その見届け…… 立会人役を依頼する!」


「!!!!!っ はは…… マジかよ……」

 



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