第226話 危険なデート……

 祐真の喫茶店 喫茶 solveソルベ


 現在、二階の祐真の部屋に居候していた黒崎であったが先日口座を作り、閻魔夫妻からかつての大戦終結、それにおけるアルテミス達の魂の解放! 『災厄』の討伐を含めての解決屋としての依頼、その成功報酬がたんまりと支払われた。


 正直言って破格の額である!


 その金額に流石にこれは貰い過ぎだと最初は突っぱねてた黒崎であったが、この件に関しては文字通り! 世界を救い! また実際に命を賭した末での解決だったのあり、夫妻も折れずに寧ろこれ位の額は絶対に貰ってもらうと向こうも全く退く様子をみせなかったのであった。


 そこで折衷案として、黒崎側からその額を受け取る条件として、もし今後も何かあったら特別割引きサービスで解決業務を請け負わせてもらう事――


 加えて大王様からもちょこちょこ周囲に宣伝してもらう事――


 その辺りを両者落としどころとして、黒崎もその大金を満額受け取ったのであった。


 想定以上の金が一気に手に入った事もあり黒崎は買い物がてらついでに近くの不動産屋で部屋を探してみようかと思い、先日依頼達成報酬で買った新車で街を巡ってみる事にしたのであった。



 契約した駐車場へと赴き、車に乗り込む黒崎。



 だがそこへ――



 コンコン――


 サイドウインドウをノックする音が聞こえてきた。


 運転席から横を見るとそこにはいつの間にかリーズレットの姿があった。



 嫌な予感がする……



 そう感じた黒崎は気付かないふりをして視線を正面にもどす。



 コンコン――


 再度笑顔でノックするリーズ。


 その笑顔が逆に怖い様相を示しているのだが……



 もう一度視線を横へとずらしリーズの方へと向ける黒崎。


 すると黒崎の視界には笑顔のまま右拳をサイドウインドウに向かって振り下ろそうとするリーズレットの姿がっ!!!


 慌ててドアを開く黒崎!


「だーーーーっ!!!!! わーったよ!!! 開けりゃいいんだろ! 開けりゃ!」


「買ったばかりの人の新車をいきなり廃車にしようとしてんじゃねえ!!!」


「修二が意地悪して僕を無視しようとするからでしょ!」


「なに? テレてんの? も~♪ 修二ったらそういうとこあるよね♪ ホントにかわいいんだから♪」


「だからテレてねえっつの!」


「ったく、なんの用だよ!? 正直お前さんが絡んでくるとロクなめにあわねえ様な気がするんだが――」


「ひどい言いがかりだねえ♪ 実は僕もこの後『用事』があってね♪ 君にも話があるし――」


「ただ時間までもう少しあるから、ちょっとドライブに連れてってよ♪」


「はあ!?」


「いいからいいから♪ それともここで暴れちゃう?♪」


「脅すな! ったく、わーったよ! 車壊されるよかマシだ! 買い出しや寄るとこあるからそのついでで良ければ付き合ってやるよ」


「そうこなくちゃ♪」


 こうして半ば無理矢理リーズレットとドライブデートする事になった黒崎。


 流石に当所予定していた不動産屋にリーズレットと行くと嫌な予感しかしないので部屋探しはまたの機会にして、代わりに後日引き取りに行く予定だった霧島商会にて前々から注文していた『ある品』を買い取りに行く事にするのであった。


 予定変更しながらもその後も行く先々で買い食いしたりカフェでアイスを食べたりとリーズレットは勿論、なんだかんだ言いながらも黒崎もしっかりと楽しんでいったのであった。


 そんな感じであっという間に時間は過ぎていき――



 一通り用事を済ませた黒崎は帰る前にリーズレットの頼みで指定された場所へと車を走らせる。



 着いた先はとある大きな森林公園――


 リーズレットが事前に人払いをさせていた為、今は彼女と黒崎の二人しかいないし今日一日は他の人間は入ってこないとの事であった――


 黒崎は適当な所で車を止め、開けた所まで彼女と二人で歩いていった。



 そして――



「―― うん♪ この辺でいいかな♪」


 黒崎の前を歩いていたリーズレットがここで足を止め、『本題』に入る。


「で? わざわざこんなとこまで連れ出して俺に何の用だ? さっきお前さんが言ってた『用事と話』ってのに関係あるんだろ?」


「ふふ、まあね♪」




「―― ねえ、修二……」


「ん?」


 次の瞬間!


 振り向きざまに超スピードで抜刀した彼女の刀が黒崎の首に襲い掛かる!


 そのまま黒崎の首を跳ね飛ばすかのごとく彼の首に迫る彼女の妖刀!





 だが!




 ピタッ!


 触れるギリギリのところでその刀を止めたリーズレット!


 冷静かつ微動だにしない黒崎。



「! へえ♪」


「―― で? もう一度聞くが俺に何の用だ? リーズ?」


「ふふ♪ 流石だね♪ この程度の不意打ちなら今の君なら簡単に止めるだろうとは思ってたけど――」


 笑顔で刀を鞘に納めるリーズレット。


「まさか避ける素振りも見せないとはね♪」


「いや、速すぎて全然反応できなかっただけだよ」


「嘘はいけないな~♪ しっかりと僕の刀の軌道を捉えつつ、止めるとわかってて無視してた――」


「僕が気付かないとでも思った♪?」


「ちっ…… あっさりバレたか…… なにやら面倒そうな展開になってきたな」


「付き合い長いからね~♪ 嘘をついて僕を躱そうとしたって駄目だよ♪」


「でも加減したとはいえ、思いっきり首狙ったし、もし僕が止めなかったら君死んでたよ! 僕が言うのもなんだけど相変わらず肝が据わってるね♪ 修二は♪」


「今テメーで言ったばかりだろうが。 ユリウスやエレイン同様、お前とも付き合いが長いからな」


「お前の性格上、俺に対してこんな不意打ちで斬り殺すなんて事は、例え天地が引っくり返ったとしたって絶対にねえよ」


「仮にるとしたって真っ正面からだろ?」


「それがわかっててイチイチ避けんのもアホらしいって思っただけだよ」


「わお♪ さっすが! 僕の事わかってる♪ まさに愛の成せる業だね♪ 結婚する? 修二?♪」


「しねえ」


「もう! つれないな~! まあそれはそれで堕とし甲斐があるんだけど♪」


「おっかねえ事言ってんじゃねえよ!」


「それで?」


「―― うん♪」



「ねえ、修二――」









































「僕と死合ってみない? 今…… ここで!」


 大きく眼を見開き! 狂気をはらんだ笑みをうかべながら黒崎を見据えるリーズレット!


 果たしてどうなる!?

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る