第225話 世界で二番目に…… 完
神父役のハニエルのもと、新郎新婦が辿り着く。
そしてハニエルがそんな二人に言葉をかける――
「新郎 汝は彼女を妻とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も妻として愛し、敬い、慈しみ、そしてその生涯をかけて彼女を守り抜く事を誓いますか?」
「―― はい。 誓います」
「新婦 汝は彼を夫とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も夫として愛し、敬い、慈しみ、そしてその生涯をかけて彼に寄り添い、共に支え合う事を誓いますか?」
「―― はい。 誓います」
「―― それでは誓いの口付けを――」
お互いに向き合うユリウスとエレイン。
おお…… 遂に…… 遂にだ……
ここまで長かった……
ようやくこの二人のラブコメもここまで来たのか……
じーーーーーーーーーーーーーーーー……
これまでほぼ全ての天界の住人から、やきもきされながらも温かく見守られてきたある意味天界最推しカップル候補だった二人……
いい加減くっついてほしい気持ちともう少しこの絶妙な距離感を見守りたい気持ち……
様々な気持ちが交錯しながらも紆余曲折を経て付き合いだし、籍を入れ、そして遂に挙式! 誓いのキスまで来たところまで見守り続けてきた者達――
まさにそのエンディングが今! 目の前で繰り広げられ様としているのだ!
その結果――
怖い位の期待の眼差しが新郎新婦へと注がれていた!
「な…… なんかもの凄くやりづらいんだけど……」
「そうかい? 僕はいつでも切り込めるよ♪」
「ちょっ! あんまり恥ずかしい事言わないでよ…… ああ! もう! だから式とかやらなくても私は良かったのに!」
「何を言う! 君の花嫁ドレス姿を見ない限りは僕は死んでも死にきれないからね♪」
「というわけでそろそろいいかな?♪」
じーーーーーーーーーーーーーーーー……
「待っ! 待って…… その…… ホントに今更で申し訳ないんだけど……」
「こっ! 公衆の面前でその…… キスするのとか…… なんだか恥ずかしいわ……」
赤面してユリウスから恥ずかしそうに視線を反らしてしまうエレイン。
「!!!!!っ」
あまりのかわいさにダメージを負うユリウス!
そしてそれは参列者達も同様であった!
クッソカワイイなーーーーー!!!!
もうーーーーーーっ!!!!!
ここにきて未だこの破壊力!!!
あまりの萌え度に思わずKOされる者達続出!
「!!!っ あっ! 危なかった…… 流石私のエレインちゃん! 危うく意識を失うところだったわ……」
「ミリア様 鼻血! 鼻血! 興奮しすぎです! 鼻詰めて!」
一方、エレインはというと――
「ほっ…… ホントにここでしないと…… ダメ?」
恥じらいながらも間髪入れずに追撃するエレイン!
無意識にやっているからこそタチが悪い!
新郎のユリウスもまた更に甚大なダメージを被っていた!
そして思わず――
「~~~~~~!!!!っ かわいいが過ぎる!!! 僕のお嫁さん!!!」
「ちょっ!!! 大声で何言ってるの!? ユリウス!?」
「僕のお嫁さんは天界…… いや! 宇宙一かわいいぞーーーーー!!!!!!」
天に向かって叫ぶユリウス!
「オオオオオオオオオーーー!!!!!!」
そして参列者もこの声に呼応するかの様にこだまする!
「ちょっと! ユリウス! 皆もなんなの!? ホントやめて! 恥ずかしいから!!!」
「ハア、ハア…… いやすまない! 僕とした事が! 君のあまりのかわいさに思わず発狂してしまった! 危なかった…… 危うくキュン死にするところだった…… だが僕はっ! 僕はまだ…… 死ぬわけにはいかない!!!」
「だっ! だからそういう事言わないでっ!!! ってアレ?」
「ん?」
エレインとユリウスが参列者達の方を見ると、そこにはキュン死に寸前で思わずぶっ倒れている参列者の山だった。
「くっ! まだだ! まだ…… やれるっ!!!」
「ここで…… 倒れる訳には……」
「立て! 立つんだ!」
「例え死んでも…… 私は最後までこのラブコメを見届けるわ!」
もはや執念である。
「なんなの!? みんなして!?」
「つかこっちもほぼ全滅だな……」
「はは♪ さっすがエレインさん♪ 破壊力半端ないね~♪ 兄上は幸せ者だな~♪」
「ふっ いいからとっととブチュッとしてしまえ!」
「というかなんで皆さん倒れてるんですか!?」
「そうですよ。 別にチューなんてパパとママは毎日してる事なのに――」
「!!!!!!!!!!!っ え!?」
「なんだって!!!!!!!!!!?」
「その話もっと詳しく!!!!!!!」
「!!!!っ ちょっとエアリス!?」
「? だって昨日だって私がお昼寝から起きた時、台所で晩御飯の支度をしてたママにパパが近づいていって――」
「包丁持ってるから危ないとか言いつつもママも嬉しそうで、結局イチャイチャしだして途中からママの方から『もっと…… 全然足りない♡』とか言い出してチューおねだりしてたじゃないですか」
「ぐはーーーーーーーーっ!!!!!!」
「エアリス!!!! あんたなんで見てっ!!! じゃなくて!!! じっ! じじじじじ事実無根!!! そう! 全部デタラメですからっ!!!!」
「ちょっと! 聞いてるんですか! 皆さん! 嘘ですからね! 全部嘘! 聞いてます!? というか人の結婚式でなに寝てんですか! 失礼ですよ! 皆さん!」
必死に否定するエレインであったが、どうやら参列者は黒崎、リーズレット、先代大王にアルとエアリス、アルセルシアを除いて何故か吐血して気を失っていた。
「あははははははは!!!!!♪」
大爆笑のリーズレット。
「やれやれ…… 互いに素直になったのはいいが……」
「え? なにこの結婚式……」
呆れた様子の黒崎。
「? 何故皆さん突然倒れたのですか?」
「さあ? それにしてもダメな大人達ですね。 ケッコンシキでいきなり皆でお昼寝しだすなんて…… ヒジョーシキです!」
「エアリスはこんな大人達になっちゃダメですよ!」
「わかった! アルお姉ちゃん!」
「良い子です♪ エアリス♪」
「エアリス!!! あんた! 後でちょっと話あるからっ!!! それと暫くお小遣いなしよ!」
「!!! なんで!? 酷いよ! ママ!」
「やかましい! …… はっ! そっ! そうだわ! ほとんどの連中が気を失っている今のうちにっ!」
「神父っ…… ってアレ! 貴方も!? 起きなさい! ハニエル!」
バキィィィッ!!!!
「がっ! いたたた…… アレ!? ここはどこ!? 私は一体何を!?」
「ボケてんじゃないわよ! クソ神父! 今のうちにとっとと誓いを済ますわよ!」
「え? 誓いの…… あっ! そうだ! 誓いのキスだった!」
「え~! 僕は寧ろ皆に見られてする方が萌えるんだけどな~♪」
「……」
花嫁ドレスに身を包んだ女性が決してしてはいけないであろう表情を殺意と共に無言でユリウスへと向けるエレイン――
「…… ハイ スミマセン。 チョーシにノリマシタ。 ユルシテクダサイ」
「全く!!!」
…… あんなおっかねえ花嫁初めて見たぞ。
つか神父を殴る花嫁って……
少しは丸くなったかとも思ったが、やっぱエレインはエレインだな。
もはやドン引きしている黒崎。
それはともかく仕切り直しという事で……
「えーっと…… それでは誓いの口付けを――」
深呼吸して落ち着きを取りもどすエレイン。
そして――
リンゴーン!!! リンゴーン!!!
教会の鐘がこだまする中――
二人は遂に結ばれるのであった――
「ったく、なんだか随分と変な結婚式になっちまったが……」
「ま、主役の二人もなんだかんだ楽しそうだし、良しとしますか……」
「おめでとさん―― 二人共――」
心から祝福する黒崎達――
それからは倒れている者達を黒崎達が手分けして起こしてまわり、その後は皆で祝杯を挙げ、大いに二人の幸せを祈り、談笑しながら幸せなひと時を送るのであった――
話込んで盛り上がっている者、記念写真を撮る者達等、皆それぞれの思いを胸に楽しんでいた。
そして――
ひとしきり皆と話した後、二人で改めて余韻に浸るユリウスとエレイン。
「はは! 皆も楽しんでくれて何よりだ♪ まあ、なんだか想像してた結婚式とはちょっとちがったみたいだったが――」
「ごっ! ごめんなさい! その…… 私のせいで……」
「ふふ、 いや…… 寧ろ僕達らしくて良いじゃないか♪」
この光景をしかとその目で焼き付けるかの様に辺りを見渡すユリウス。
「こうやってこれからも皆で馬鹿騒ぎして…… かけがえのない日常を楽しく過ごしていくのだろうね――」
「これが僕達が手にした平和…… そしてなんて事ない、ただの日常なんだろう――」
「ユリウス……」
「まあ、そういうわけだからこんな軽~いノリでいい加減な夫だが、皆で勝ち取ったこの日常をでき~る限り守っていきたいと僕は思っているんでね♪」
「―― どうかこれからも僕の事を支え続けて欲しい――」
「その代わりといってはなんだが――」
「君の事は僕が必ず! 世界で二番目に幸せにしてみせると約束しよう♪」
「あっ♪ 勿論一番は君の隣にいる僕の事だからそこは譲れないけどね~♪」
「ユリウス……」
「ふふ、ええ…… 私も……」
「私も必ず! 貴方を幸せにしてみせるわ…… 勿論、世界で二番目にね!」
「負けないんだから!」
「ふふ、望むところさ!」
「それに!」
「当然! 言われるまでもなく貴方の事はこれからも私がしっかりと支え続けていくわよ!」
「離れろって言ったって絶対に離れてやったりしないんだから!」
「愛しているわよ♪ ユリウス――」
「ああ、僕もだよ♪ エレイン――」
こうして、お互いにこれ以上ない程の笑顔を交わし、新たに誓いを立てる二人なのであった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます