第219話 祝! 帰還!
「まあ、これも推測なんだがな。 なにせこんな事、前例がないからな――」
「こうして今のお前の気を感じとっていても思っていた事だが…… 以前と今のお前とで明らかに『気の性質』がちがう!」
「!」
確かに…… 何か違和感を感じる……
明らかに『以前と何かがちがう』と……
「その気配…… 人でもなければ死神でもない…… 天使でもない――」
「魔女達の纏っている様な魔力といった類の気配でもない…… 勿論、妖の類でもない」
「これはどちらかというとだが……」
「お前のそれは我等女神や父上、そしてモフ
「我等が纏っている『神気』に限りなく近い!」
「!!!!っ」
「恐らく父上と天聖樹の気の影響だろうな…… そこでお前という存在を再構成する際、お前は限りなく我等神に近い存在になったのだろう」
「恐らく以前よりも遥かに力が漲っている筈だ…… 自分でも怖いと思う位じゃないか?」
「…… 確かに」
明らかにあの決戦時よりも遥かに力が増してやがる――
下手したら閻魔や女神級か!?
「言っておくが、神に近い力を手に入れたからといっても、なんでも都合よくできるわけではないからな」
「リスク…… そしてその力と引き換えのデメリットといったところか」
「確かお前が総司令の頃、何かの雑談ついでに話した様な気もするが……」
「ん? …… ! ああ、なるほど…… なんとなく想像はついたわ」
「ああ――」
「我等女神は父上から…… そしてモフ男は我等姉妹が神獣として生んだ――」
「それはつまり全員が『神気から生まれた』事になる」
「神気で生まれた神、もしく同系統の存在は一般の輪廻の輪からは外れた存在だ」
「我等の場合、死んだらその魂と力は天聖樹に還ると言われている」
「そして時代が必要となった時、新たな最高神が生まれ、その者がさらに必要次第で我等の様な者を創造するのだろう」
「だがそれは力以外は全て魂魄含め、無からの再構成…… つまり――」
「我等は実質、『転生はできない』という事だ」
「!」
「次代の最高神や女神達は、磨いてきた我等の経験や力の一部は潜在能力として継承されるかもしれんが、そこで生まれた者は『実質、私達ではない別の存在』だろうな」
「つまりお前は永久に人にはもどれんし、あと一生分しか過ごせないという事だ」
「なるほどな……」
厳しい視線を黒崎へと向けるアルセルシア。
だが黒崎はそんな彼女の言葉を冷静に受け止める。
「ちなみにぐの丸は知ってんのか? その事を――」
「ああ、奴を生み出した時にまとめて話しておいた」
「そしたら奴は『我は唯一無二の至高なる存在! その位のリスクは当然であろう! ならば我は限られた時間を有意義に使うのみ! というわけで、まずは天界の娯楽を一通り味わってくるから軍資金をくれ!』とほざいてきやがった! だから生んで早々に一発ぶん殴ってやったわ!」
「って、生まれた時からそんなんだったのか! あいつは! 今と何も変わってねえじゃねえかよ!」
「全くだ! あの癒しのゆるふわモフモフ毛並みがなければぶっ殺してるとこだぞ!」
「―― とまあ、今はあいつの話はいいとして、もう一つ! デメリットがある」
「それは…… 子が成せんという事だ」
「!」
「神気を帯びた者が、それ以外の者に所謂子種を残す事はできん。 そもそも存在の構造そのものが一般の者と大きく異なるからな」
「まあ行為自体は普通にできるが――」
「だが神の力を性行為等で次代に継承していけたら、ちと言い方悪いかもしれんが、その気になってさえしまえばそれだけ神の力が安易に量産されてしまう事にもなる」
「その危険性を考慮して、天聖樹が恐らく制限をかけているのだろう…… この神木も超常的な力だけでなく何か大きな意志のようなものをもっているからな」
「だから念の為、
「それを踏まえて…… 今後お前が彼女達とどう向き合うかはよく考えておくんだな」
「今言った事は男としてお前が必要に応じて自分の口から伝えろ…… しっかりとな――」
「ああ…… わかった」
「なあ、アルセルシア――」
「ん?」
「…… 俺は…… 治安部にもどるべきだろうか?」
「!」
「おやっさんから、こんな大それた力を引き継いだ以上、やっぱり死ぬまでそれを治安部で活かし続けた方がいいんだろうか?」
「…… さあな。 そんなのは自分で決めろ!」
「!」
「別に神の力を押し付けられたからといっても、お前はお前だ」
「悪事さえ働かなければ好きにしろ…… 繰り言になるが、他の誰でもない『お前自身の一生』だ!」
「それに父上も我等姉妹も…… これからはお前には好きに生きてもらいたいとも思っている」
「随分と苦労をかけたからな……」
「それにいつまでも旧世代の者が出しゃばり過ぎても、若者の成長を削ぐだけだ」
「ただでさえ総司令 シリウス・アダマストはまだまだ天界じゃ忘れられてない名前だからな」
「勿論、治安部にもどりたいというなら大歓迎だし、たまに位は手伝ってくれるだけでもありがたいが――」
「お前の人生だ――」
「お前が自分で決め! 好きな様に生きろ!」
「アルセルシア……」
「ま、復活したばかりだ。 なにもすぐに答えを出す必要もないだろう」
「小難しい事は後でゆっくりと考え、まずは久々の天界ライフを好きに謳歌してこい♪」
「…… ああ、そうだな――」
「さんきゅ。 アルセルシア――」
「ふっ…… 礼には及ばん――」
こうして色々と考える必要はありそうだが、それでも何かスッキリした様子の黒崎。
そんな彼とアルセルシアのもとにイステリアが転移術でもどってくる。
「! イステリアか――」
「ふう! やっと納得…… はしてなさそうですが、大人しく待ってくれる事にはなりました」
「すいません! 二人共! お邪魔しちゃって!」
「いや、いいさ。 丁度話も終わった…… ってなんだ。 『お前』も付いてきたのか! まあ紹介するつもりだったし、手間が省けて丁度いいが……」
「よかった! 本当は姉様がもどってくるまでこの子と一緒に私の部屋で待ってるつもりだったのですが……」
「この子ったら駄々をこねて自分もここに来たいってきかなくて!」
「まあ丁度シリウスがいるなら姉様の話が終わってから、ここでついでにその流れで紹介した方が早いかなって――」
「ああ、そうだな」
「! ……」
こいつは……
どことなく
それが有り得ない事は確かだろうが……
それでもっ!
この整った顔立ちにその金色の髪を見ると…… どうにも連想しちまうな――
つか、こいつまさか……
「貴方が姉様達が話していたシリウス・アダマスト…… いや、黒崎修二さんですか?」
イステリアの手に繋がれて現れるは金色の髪をおろす年端もいかない幼女……
そしてその幼女は黒崎に声をかけ、そして名乗り出る。
「はじめまして。 最高神のアル・イスリアと申します」
「!!!!!!っ」
「はは! 流石に驚いたか! 無理もない! 我等も『突然今回のお前みたいにここでこの子が生まれてた』時はびっくりしたからな!」
「丁度六年前…… でしたね」
「…… マジかよ……」
それにまた絶妙な名前をつけてやがるな……
三姉妹からとったか――
「ねえねえ姉様達…… この人は何歳ですか?」
イステリアの袖を引っ張り興味津々に目を輝かせながら質問するアル。
「ん? どうなんだろうな…… この場合また年齢はリセットして数えるべきなのか?」
「ん~、どうなんでしょうねえ…… でもどうして? アルちゃん?」
「生まれ変わったという事は新たに生を受けたという事! つまり年齢も最初から数えるべきです! いわば赤ん坊です! 今のこの人は! ええ! そうです! そうに決まってます! だから――」
興奮気味に言うアル。
そして――
「わ、私の事っ! お姉ちゃん…… って呼んでくれてもいいんですよ♪」
「! いやいやいやいや!!!」
「はは! だそうだ! どうする!? シリウス!?」
「あらやだ♡ かわいい♡ 流石、私のアルちゃん♡」
「いや、勘弁してくれよ! 別に黒崎から継続で数えればいいだろ!」
「ダメです! さあ! お・ね・え?……」
マジかよ!
どうあっても言わせてえみてえだな!
なんだ? 大人ぶりてえお年頃か? 面倒くせえな! こいつ! ホントに最高神か?
しかも……
親? いや姉馬鹿?
後ろの二人から『この子を悲しませるな』的なプレッシャーが半端ねえんだがっ!!!
大人げなさ過ぎだろ! 二人揃って!!
くそっ! このままじゃ帰らしてくれそうにもねえし!
…… ああ!! もう!!!
「…… お…… お姉…… ちゃん……」
「!!! はあああああ♡♡♡ お姉ちゃん…… やっぱり良い響きです♪」
満足げのアル。
対照的に苦悶の表情といった様子の黒崎。
「ぶっ! ぶはははははははは!!!!!」
「ふふっ! あははははははは!!!!!」
「そこ!! 笑うな!!!!」
「あっ! そうだ…… 赤ん坊だから……」
「おっぱい…… 飲みます♪?」
「いらん! つか出るわけねえだろ! 台詞的にもヤバすぎるわ! このやり取り!!」
「おお! ツッコミのキレも健在だな! 安心したぞ! シリウス!」
「なにせ天界は頭のネジがぶっ飛んでる奴等が多分に多いからな! ボケ役も多いし、お前の様なツッコミ役はかなり重宝するぞ!」
「そういう意味でも! よくぞもどってきてくれた!」
「そういう意味ではもどってきたくなかったけどな! つかそのぶっ飛んでる連中の代表格がお前や閻魔兄妹だろうが!」
「やっぱりウチのアルちゃん、可愛い過ぎる~♡♡♡」
「って聞け! イステリアも! つかお前等ガキにどういう教育してやがる!!!」
「おお~~~~~!!!!!」
「おお~~~~~!!!!!」
「おお~~~~~!!!!! じゃねえええええええええ!!!!!」
キレの良いツッコミに思わず拍手する二人の女神。
こうして新たな最高神のお披露目も済み、黒崎達は祐真の店へと降りて行き、他の者達にも連絡。
あまりにも急だったのと、任務等で手が離せない者も多くいた為、流石にその日は全員集合とまではいかなかったものの、店を貸し切り、集まれた者達で黒崎の帰還を大いに祝う事にするのであった――
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