第220話 祝宴 ①

 PM 十八時――


 泉祐真の喫茶店兼BAR――


 それまで入っていたお客さんの対応を全て完了して後、急遽店を貸し切りにして無事帰ってくる事ができた黒崎修二の復活祝いを開催する事になった。



 そして――



「はい、アルちゃんはオレンジジュースね♪」


「はい♪」


「それじゃあ…… シリウス・アダマストこと黒崎修二の帰還を祝って……」














「乾杯!!!」


「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」

「かんぱ~い!!!」


 アルセルシアの声のもと皆でグラスやジョッキを乾杯する面々!


 とりあえずすぐに集まれた者達だけで先に宴を開始する!



「いや~! しかしま~! ようやっと旦那に会えたな! マジお久し振りっすね! 会いたかったっすよ~!」


「本当ですよ! シリウスさん! よくぞもどってきて下さいました!」


 黒崎に声をかけるは『伝説夫婦』こと霧島恭弥・サアラ夫妻。


「こっちこそ! またお前等に会えて嬉しいぜ! 恭弥! サアラも!」


「大戦時はニアミスで結局会えずじまいでしたからね~!」


「ほんと! 一緒に行動してた達っちゃんやカエラちゃんを羨ましく思ってたわ!」


「ほんとそれな!」


「お前等の活躍もついさっきリーズから聞いたけど大分無茶かましたらしいな…… 特に五万の敵兵にたった二人で挑んだとかってマジかよって思ったぜ!」


「ま、セシリアとケインが来なかったらアウトだったっすけどね!」


「ええ、アレは流石に無理があったわね」


「ったりめーだ! 馬鹿!」


「だがそんなお前等のおかげで、俺等は最後の戦いに後ろを振り返らずに、ただ前だけ見れて安心して背中を預け、戦う事ができた……」



「マジで感謝している…… ありがとな」


「何言ってんすか! 俺等は売られた喧嘩を買っただけっすよ! それに礼を言うのはこっちの方っすよ!」


「そうね…… 貴方との出会いが達っちゃんとカエラちゃんを大きく成長させた――」


「セシリアとケインも、アンタと最後の戦いを共にして、アンタの在り方を間近で見て、思う所があったのか更に伸びていきやがったしな!」


「キッチリ『災厄』の野郎もぶっ潰してくれたし! 感謝し足りねーのはこっちの方っすよ!」


「はは! まあそう言ってくれるとありがたいがな!」


 久々の旧友との再会に胸を躍らせる面々。


 だがここで黒崎はどうしても確認しておきたい事を恭弥達に尋ねる。



「それはそうとお前等…… 身体は大丈夫なのか……」


 黒崎も店へと来る前、ざっくりとだがアルセルシアから話は聞いていた。


 禁忌を犯した者達の事も……


 そしてもう『あまり時間がない事』も……



「―― ま、もって後二、三年ってとこすかね。 多分、レティ曰く」


「!!!っ そうか……」


 表情を曇らせる黒崎。


 だがそんな黒崎に恭弥達は明るく声をかける!


「だあ~~~っ!!! そんなしみったれた顔しないで下さいよ! 旦那! 今日は旦那が帰ってきてくれためでてー日なんだから!」


「そうですよ。 私達も最初から覚悟した上でとった戦法―― それにレティさんのおかげで、こうして私達は本来なかった筈の人生の延長戦も経験できてるしね♪」


「シリウスさんが帰ってきたんなら、何が何でも共に大戦を乗り越え! 再会して思いっ切り飲みたいっていう夢ができたから――」


「そういう事♪ それもこうして叶ったんだから俺等としては満足なんすよ! まあ『他にもやっときたい事はまだある』けどそれは追々として――」


「後は面白おかしく! そして楽しく! 最期まで生き抜ければそれでいいんすよ!」


「だから! そういうしみったれたのはなしなし! 楽しくいこうぜ! 旦那!」


「そうそう♪」


 そう言って黒崎の肩にガシッと組みに行く恭弥。


「お前等……」


 ホント…… 凄え奴等だな…… こいつら――


 確かに…… 俺がこんな表情かおしてちゃ、こいつらに失礼か――



「ああ、そうだな…… 悪かった! それじゃ! 今日はとことん飲むぞ!」


「そうこなくっちゃ!」

「ええ!」


 改めて乾杯する三人。


「そういえば霧島…… あーっと、達也とカエラは今日は来れねえのか?」


「いや、多分遅くなっちまうだろうけど顔出せんじゃねえかな?」


「なんか二人共旦那の気配…… かどうかまでは確信が持ててなかったみたいだが、気になって突如現れた気配のある方角まで行けるとこまで行ってたみたいでな」


「そこで二人共鉢合わせになったみたいだが、旦那も知ってるかもだが、そもそもあの聖域周りは特殊な結界が張ってあってね」


「転移術、もしくは『ゲート』を使わないと絶対に辿り着けなくなってるみたいで、結局立ち往生してるうちに二人共仕事で戻る羽目になっちまったみたいでよ」


「さっきお前等の感じた気配の正体が旦那だって教えてやったらメチャメチャ驚いててな!」


「ええ。 仕事が上がり次第すぐに急行するって言ってたわよ」


「って大袈裟な物言いだな!」


「それだけ二人共旦那に会いたかったって事よ!」


「ええ。 暫くヘコんでたからね。 貴方がいなくなってからあの子達も――」



 そうか…… あいつらにも心配かけちまったな。


 会ったら詫び入れとかねーとな――



「そうね。 以前から思ってたけど、貴方のその自身を顧みないで何もかも全部救おうとする姿勢…… 尊敬もするけど軽蔑もするわ」


「少しは残される側の気持ちも考えて下さらないかしら? あっ! 恭弥達もね!」


「ホントそれね!」

「せや! せや!」


 そう言ってこちらの話に混ざってきたのは元諜報部 室長 久藤雫――


 さらにリーズレットに京子も混ざってきた。


「うげっ!」

「あ~耳が痛いわ!」

「だから悪かったっての!」


「はは! 自業自得よの! お主等!」


『創まりの魔女』ことレティシア・ルーンライトもジョッキを持って参戦してきた。


「って、おばあちゃんもでしょ!」


「うぐっ! しっ! 雫~! そう怒るでない! 今日はめでたい日なんだから!」


「全く!」


「久しぶりだな! 雫! それにレティも!」


「ええ。 お久しぶり。 総司令殿」


「元だけどな」


「はっは! 相変わらず悪運の強い奴よのう! まさかこんなデタラメな方法で復活するとはの!」


「はは! 確かにな。 そっちも大戦時は気張ってくれたみてーだな! おかげで助かったぜ!」


「ふふ、当然の事をしたまでよ」


「ま、わらわがちょっと本気を出せばあの位の芸当チョチョイのチョイよ!」


「またすぐ調子に乗って! まあ確かに凄かったから何も言い返せないんだけど……」


「ふふん♪ そうじゃろそうじゃろ♪」



 レティも…… 『色々やっちまった』みてーだが……


 先代大王様もそうみたいだが、体調の悪い時は魔力供給も兼ねた特殊な車椅子で移動しているみたいだが、特に何もしなければ普通に動けるってアルセルシアは言ってたな……


 本当は恭弥達もそうみたいだが、なんか今でも鍛えていてほとんど車椅子は使ってねーらしーが……



 正直レティこいつの助力がなければ大勢の仲間を閻魔の城ごと吹っ飛ばされてただろうからな……



 全く…… マジで頭が上がらねえよ――



 っといかんいかん! だから沈むなっての! 俺!


 グイっと酒を飲み干し、気を取り直す黒崎。


 そして空いたジョッキに恭弥がすかさず酒をぎ足す。



 今は各々抱えてる問題は忘れ、とにかくこの勝ち取った平和を満喫する!


 黒崎も今度こそ気持ちを切り替え、大いに皆と盛り上がるのであった!





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