第197話 勝機!
一触即発のゼクスとリーズレットだったがアルセルシアが間に入る!
とりあえず少しは冷静になった二人だったが、それでもまだ正直、完全には収まりがついていない様子――
睨み合う両者……
これ以上無用なトラブルを持ち込まれても迷惑な上に、止めるだけでなく、互いにある程度納得させた状態にしないと再衝突! そしてそれによって仲間達が危機に瀕するという最悪の流れが出来上がってしまう可能性が高い!
それだけは避けなければならない!
この状況下で、これ程までに愚かな事はないのだから……
そして流石に自分勝手な二人に対して黒崎も憤りを感じたのだろう。
アルセルシアに続いて、彼もまた、二人の間に割って入ってくるのであった!
「アルセルシアの言う通りだ…… 二人共! 時と場と状況を弁えろ!!!」
二人に対して思念で凄みを利かせる黒崎――
「修二……」
「はっ! アルテミスの拾い子か。 でかくなったもんだなぁ。 前大戦前に奴とレオンに連れられてる時、一度だけ会った事があるが、俺の事よく覚えてたな」
「ああ、 といってもハッキリと思い出したのは今しがただがな。 天国エリアでいきなり現れた霊圧を感じた時は、『どこかで覚えがある気配』程度の認識だったが――」
「それに―― 『その後、一度会ってる』だろ?」
「! へえ…… 気付いてたか」
「さっきの瘴気の炎を纏った一撃を見た時にな…… 閻魔の炎とも違う、あんなイカれた代物使える奴は俺は一人しか知らねえからな」
「いつだったか…… 確か五百だか六百年前だったか? 『あの時のクーデター事件』――」
「その『裏で動いてたあの仮面の男』…… ありゃテメーだろ?」
クーデター? それって――
リーズレットもそのワードを聞いて何の事件か心当たりがある様子であったが、ここは黙って耳を傾ける――
「くく、正解だ! あの仮面は変装も兼ねてたが気配の質を変える特性をもっててな!」
「お前さんがまだガキの頃以来だったから、そこまで警戒しなくても大丈夫だとは思ったが、それでもあの段階ではまだ俺等の存在がバレる訳にはいかなかったから、念の為にってキースの野郎に持たされたんだよ」
「なるほどな。 気付けなかったわけだ」
「――で、このタイミングで『災厄』を殴り飛ばして出てきたって事は、今更俺等と敵対するって事はなさそうだと思ったが?」
「最低でも! ダチであるレオンやアルテミスの為に身体を張りに来た様には見えたんだが、それでも…… この状況で好き勝手に暴れるつもりか?」
「もしそうだとしたら、カッコつけて登場してきた割には考えてる事はただの獣そのものだな。『鬼神』の名を欲しいままにしてた奴にしては随分と小者っぽいダセエ真似するじゃねえかよ」
「名前負けもいいとこだな」
「敵だったとはいえ『昔、俺とやり合った』時はもっと骨のある漢だと思ってたんだがな」
「テメエ……」
あからさまに挑発する黒崎――
そんな黒崎を睨みつけるゼクスだったが、構わず続ける黒崎――
「悪いがこの戦いに勝つ為にはリーズにこれ以上の消耗をさせるわけにはいかねえんだよ。 したがって、お前なんぞに付き合わせてやるつもりもねえ――」
「それでも…… どうしてもってんなら――」
「リーズやアルセルシアに代わって、俺が相手してやるよ……」
「ま、その場合かなりの確率でこの世界は終わり、カッコつけて登場した割にお前もダチは助けれず『災厄』だけが得してお前も含めて俺等は全員ただのピエロになっちまう事になるけどな」
「それでもいいってんなら…… かかってこいよ。 ただし、皆の邪魔はしたくねえから場所は変えさせてもらうけどな」
「どうするよ…… ゼクス・ヴォルカノン!」
「……」
「……」
距離こそ離れてはいるものの、しばし睨み合う黒崎とゼクス――
だったが――
「クク…… 派手に煽ってくれんな! だが確かにそこまで言われて尚、ここで剣神と
「まあ、正直お前さんと『あの時の続き』をするのも悪くはなさそうだが、そいつは諦めとくぜ」
「正直負ける気はしねえが、ぶっちゃけテメエはやりづれえからな。 それに――」
「相変わらず何か面白れぇ事を考えてそうなツラしてるし、ここは剣神の代わりに俺も足止めに加わってやるよ」
「それで文句ねえだろ?」
「…… そうか。 だったら頼むわ」
「せっかく来てもらったんだ! 精々役に立ってもらうぜ!」
「はっ! 喰えねえ野郎だぜ! だがまあ、了解だ! 無駄に騒いだ
落としどころが見つかり、互いに笑みを浮かべる黒崎とゼクス。
そしてそのまま黒崎はリーズレット達にも話をつける!
「リーズ! それにセシリアも! この件は今は置いてけ! 先代様なら大丈夫だ! 城の方で気配がするだろ! 冷静になれ!」
「俺等は世界中の全ての命や、散っていった多くの仲間達、その誇り高き魂を背負ってるって事を忘れんな!!!」
「修二……」
「…… ちっ!」
「ふーーー…… わかったよ、修二。 確かに父上も無事みたいだし、ここは彼に任せて一旦そっちにもどるよ」
「セシリアは?」
「…… くそっ! わーったよ! 確かにアンタの言う通りだ。 ここは『
「ああ、そうしてくれ! それとぐの丸! 多分聞いてんだろ!?」
「うむ!」
「俺とリーズ、大王様とアルセルシアはこれから『災厄』を潰す為の秘策の準備をする! お前等はとにかく奴の注意を引きまくって俺等に突っかかってきそうだったら最優先でそれを阻止してくれ!」
「んでもって、俺等が仕掛けたら巻き込まれねえ様に、とにかく全力で障壁を張りながら退避してくれ! そうすりゃ全て片が付く!」
「オメーも消耗が激しいだろうがアルセルシアはもっとだ! すまねえが今の内容、残りの連中に思念を送っておいてくれ!」
「了解だ! こっちは任せろ! しくじるなよ! 恐らくこれが最後のチャンスだ!」
「わかってる! そっちは任した! こっちは任せろ!」
「うむ!」
こうして思念を切り、それぞれの役割にもどる面々――
そんな中、静観を決めていた大王が、その口を開く。
「彼があの鬼神 ゼクス・ヴォルカノンか…… 先代零番隊総長を務め、前大戦ではその渾名に恥じない戦いぶりを披露したとの事だったが――」
「ああ、その時、魂魄に致命傷を負って大戦終結後も治療されてたが施設から脱走、その後消息不明だったみたいだが、まさか生きていたとはな……」
「いや、恐らく奴もアルテミス達と同様…… 瘴気で永らえているだけか」
「だろうね。 それと黒崎君。 こんな時になんだが、先程のやり取り…… クーデター事件とは、まさか――」
「ああ、恭弥が昔、まだ人間だった頃に下界でくたばって天界に魂が運ばれた少し後――」
「奴も俺等も巻き込まれた地獄エリアで端を発したあの事件…… 首謀者は別にいたが、どうやら裏ではあのキースって奴も絡んでたみてーだな」
「その様だね。 ついでに言うと、僕とエレイン君が出会ってまだ間もない頃に起きた、あの事件も奴が黒幕だったみたいだ。 奴を城で始末する際に『大王の眼』を使って判明した」
「今にして思えばだが、やっぱりそうだったか。 つか、やっぱり城であんたが暴れてたのは
「ああ、心配をかけてすまない。 色々あったが、とりあえずエレイン君はもう大丈夫だ! 重症ではあるが、マクエル君にも託してきたし、命の危機は脱したよ」
「そうか……」
それを聞いて少しほっとする黒崎。
「それで黒崎君。 話をもどすが――」
「ああ。 あの事件…… 首謀者とは別に黒幕は別にいる…… まあ、キースだったわけだが、さらに裏で動いてたのがもう一人いたって報告したろ――」
「黒装束に変な仮面を付けて気配も変えてやがったから当時は全然気付かなかったが、それがゼクスだったんだよ」
「丁度、恭弥とサアラが首謀者とやり合ってた頃、俺も別の場所でゼクスとカチ合っててな――」
「あの時はなんとかお茶を濁して退いてもらったが、まさかあの化け物野郎がゼクスで、そんでもって今は俺等と共闘する事になるとはねぇ……」
「人生わかんねえもんだな」
「ふっ 全くだね」
「確かにな」
「奴ならリーズの代わりに攪乱を任せても大丈夫だろ! 戦闘力はあんたら兄妹級で折り紙付きだ! リーズがもどったらすぐに準備するぞ! 後は――」
「姉様! シリウス! ユリウスも!」
「皆! 聞こえるか!?」
「! イステリア!? それに――」
「
「御二方共! 一体どうなさいました!?」
突如、黒崎達に思念を送ってきたイステリアと最高神!
一方、ゼクスとリーズレット達も、一応の和解を果たしていた――
「悪かったな剣神。 あまりにも良い覇気と殺気だったから、つい大人げねえ事しちまったぜ」
「ふう、まあいいけどね♪ その代わりしっかりと働いてもらうよ♪」
「ったく! 流石に肝が冷えたぜ! 頼んだぜ! 二人共!」
「ああ、任せときな!」
「ふふ♪ わかってるよ。 レオン♪」
「つかお前等のせいで『
「いや、元はと言えば
「ぐっ!」
「はは! ブーメランだな! セシリア!」
「うっせー! テメーが言うな!」
「わりーわりー。 だけど安心しろ! 『これでいい』んだからよ……」
「あぁ!?」
「―― なるほどね♪」
「総長? どういう事です?」
「つまり――」
「勝機が見えてきた…… って事でしょ♪」
「!」
「!」
「クク、そういう事だ!」
ここで全ての傷の再生を完了した『災厄』がまたもや動き出す!!!
「何を戯言を…… 確かに貴様の参入は厄介だが、それでも我に勝てる道理はない!」
「へっ! 強がってんじゃねえよ! 俺様が『気付いてねえ』とでも思ってんのか?」
「!!!!っ」
勝機を見出したゼクスとリーズレット!
彼等の言う勝機とは一体!?
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