第198話 無限ではなく有限!!
「勝機が見えてきただと!?」
「どういう意味です!?」
ゼクスとリーズレットの言葉に反応を示すセシリアとケイン。
「言葉通りの意味だよ」
「テメーらも知っての通り、『
「だったらその逆も然りって事だ」
「!」
「!」
「そう―― 奴の気の流れを読んでわかった事だけど、
「元々彼は、僕やレオンと同等の力の持ち主―― つまりは女神に近い力を備えている」
「それが『災厄』から抜けたという事はそれだけ奴にとってもマイナスって事になる♪」
「そういう事だ。 それに加えて俺の身体も瘴気で保っていられてる状態…… 奴の吸収の力は当然俺にも働いた――」
「けど俺はそいつを逆に利用させてもらったんだよ」
「ヴァランと
「そこで、イチかバチか奴にわざと吸収され、一気にここまでショートカットして移動してきたわけなんだが―― ついでに奴の中に溶け込む形で吸収されたと見せかけて、逆に俺が奴の中の瘴気を少しばかり拝借してヴァラン戦での傷を癒しつつ、ついでに自我を保っていられる程度にさらに吸い取って身体を再構成…… ちと
「そんな事が可能だなんて!」
「相変わらずデタラメな真似する奴だな」
「ま、ほとんど瘴気で形成されて強い自我と力を持ってる
「だけどその結果、女神級一人分とその他大勢分の瘴気も盗んで出てきたから、その分『災厄』もパワーが落ちているって事さ♪」
「ああ。 それに本来だったら一度に吸収できる量は現状のが限界だったんだろうが、他にも、いざ自分が追い詰められた時用に瘴気の吸収、回復分のストックは残している予定だった筈だ。 その為の兵隊生成装置でもあったわけだしな」
「だが、天界側の連中が全ての生成装置をぶっ壊してくれたおかげで新たな兵隊と瘴気が生み出せなくなった――」
「おまけにこいつらは大戦二日目以降の事なんかほとんど考えちゃいなかった…… いくら猛者揃いとはいえ、圧倒的に戦力差で劣る分、初手の段階から出せるもんは全て出し切らねーと二日目以降はジリ貧になって、遅かれ早かれ確実に負ける展開になっちまうからだ」
「逆にこっち側は無限兵隊生成もあって圧倒的な物量差を常に維持できる…… 初日は無理せず様子見しつつ、相手側を嬲って負の感情を煽りつつ、戦力が足りなくなったらまた補充すればいいってタカを括ってた」
「こっちは様子見ながら流してんのに対してこいつらは最初からブレーキを自分達の手でぶっ壊してアクセル全開で突っ走って来たんだ! まさに不退転の覚悟でな!」
「結果、数の差を撥ね除けて互角! いや、それ以上の戦況に追い込まれ、さらに兵力補充の道も断たれたから想定していたよりも遥かに生き残りの兵隊が少なくなった…… つまりはストックもなくなった――」
「加えてさっきの剣神とこいつらの猛攻…… 多少なりともだが『
「コツコツとだが…… 確実に追い詰めている――」
「いいか! テメーら! こっちが気合い負けしなければ奴から瘴気は生まれねえ!」
「そして! 限りなく無限に近いが! それでも! 奴の瘴気、そして再生能力は『有限』なんだよ!」
「つまり! つけ入る隙はいくらでもあるって事だ!」
「そうだろう!? 『
「随分と余裕がなくなってきたツラしてるみてーだが図星だったろ?」
「貴様……」
そう、ゼクスの言う通りであった。
無限ではなく限りなくそれに近いが、確かに有限!
この差は非常に大きい!
互いに睨み合うゼクスと『災厄』……
そして――
「ふっ…… だからどうした。 確かに貴様の言う通り、我はかなり力を落としたがそれでも死にぞこないの貴様等全員葬るにはなんら支障はない。 それに――」
確かに『災厄』の言う通りであった。
敵も余裕がなくなってきているがセシリア達はもっとであった――
ゼクス以外、この場にいる全ての者達はそれ程までに消耗が激しいからである。
そしてゼクスに対しても、突如現れた時こそ驚いたものの、自分にとってはその登場が決定打にされる事はありえないと気付いてしまっていたのであった。
「先程の貴様の一撃…… 大した一撃だったが、それでも『貴様の攻撃は我には通じない』のはもう気付いているのだろう?」
「……」
「……」
「なに!?」
「どういう……」
セシリアとケインは気付いていなかったが、どうやらゼクスとリーズレットは気付いている様子であった――
「瘴気同士…… 所謂『属性』と『相性』の問題かな?♪」
「ああ。 さっきも言ったが、俺は瘴気で永らえている身―― だから元々俺が扱っていた炎や闘気もそれと混ざり合い、瘴炎となっている――」
「そして『
「炎を炎で…… 水を水でぶっ叩いてもほとんど効果ねえだろ。 それと同じだ」
「良くも悪くも俺と『
「さっきこいつを殴り飛ばした時も、パワーでゴリ押して無理矢理吹っ飛ばしたがダメージ事態は、ほぼ通ってねえしな」
「…… ちっ!」
「そんな……」
「だけど…… そのわりには随分と余裕があるみたいだね♪」
「何か秘策がある様に見えるけど?♪」
「!」
「!」
「! なんだと……」
「へえ…… 流石に察しがいいな!」
「ま、要はやり方次第ってところだ――」
「こんなふうになアァ!!!!」
ここでゼクスは自身の闘気を全開放し! さらに『奥の手』を使う!
ズオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
途轍もない闘気による爆風が辺りを包み込む!
「!!!!!」
「!!!!!」
「!!!!!」
「!!!!!」
「―― 魂魄の燃焼…… それも恐らくこの上ない勢いで……」
「馬鹿野郎! 死にてえのか! テメエ!」
「しかもそんな勢いで燃やし続けたら!」
「あぁ!? なに言ってやがる」
「どのみちこの戦いに勝とうが負けようが、俺に
「だったら、後腐れねえ様に全部出しきって燃え尽きねえと損だろ? 出し惜しみして不完全燃焼で無駄死にする事の方がよっぽど馬鹿だ――」
「お前……」
「あなたという人は……」
敵とはいえ、これ程までの覚悟と漢気を魅せられ、複雑な心境と表情を浮かべるセシリアとケイン。
そしてそんな二人にゼクスは喝を入れる。
「はっ! なにをシケたツラしてやがる! 勘違いするなよ!」
「俺とテメーらは敵同士だ! 今は共通の敵を潰すので共同戦線張ってるだけだ!」
「テメーらが俺に同情する必要も暇もねーんだよ! 俺は俺のやりたい様にやってるだけなんだからよ!」
「ましてやまだ
「気張れや! 若造共!」
「テメーらは
「だったら! 余計な事なんか考えずに! ただ目の前の事に集中しやがれ!」
「己の信念に従ってな――」
「ゼクス……」
「やれやれ…… 本当にとんでもない人だな。 この人は――」
「…… 目先の正義には目もくれずに、全ては
「なるほど…… 間違いなく、彼は君等の友だね。 レオン♪」
「…… へっ…… 格好つけやがって…… 馬鹿野郎が……」
「オメーにだけは言われたくはねえがな。 レオン――」
「ま、それはそうとこれなら相性最悪でも、足止め程度なら釣りがくる…… ダメージもそれなりには与えられる様になっただろうし、そうでなくても衝撃で吹っ飛ばしたり押さえつける事なら可能だろ」
「だが長くはもたねえ! やりてえ事があんなら! さっさとやってきな!」
「いけ!!! 剣神!! レオン!!」
「! わかった! ここは任せたよ♪」
「ああ! 頼んだぜ! ゼクス!」
ゼクスに後押しされ、最後の策の準備に向かうリーズレットとレオン!
だがそれをみすみす見逃すつもりもない『災厄』!
「! 逃がすと思うか――」
その凶手が二人に襲い掛かろうとしたその時!
ズガアアアアアアアアアアン!!!!
『災厄』の顔面にゼクスの左手からの瘴炎弾が火を噴いた!
「ぐっ! ゼクス! 貴様!」
「おいおい…… 余所見してる暇あんのか? あいつらの邪魔すんな。 テメーの相手は俺がしてやるよ!」
そう言ってゼクスは自身のPSリングから
そしてセシリアとケインも――
「ちがうな――」
「ちがいますね――」
「『アタシ等!』 だ!」
「『僕達!』 です!」
「! へっ! 上等だ!」
「足引っ張んじゃねえぞ! 後輩共!」
「こっちの台詞だ! クソ野郎!」
「精々役に立ってくださいね!」
「いいだろう…… 何を企んでいるのか知らんが、すぐに貴様等を始末して! 奴等もその後を追わせるだけだ!」
「いい加減くたばるがいい!」
「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「オラアアアアアアアアアアアア!!!!」
「らあああああああああああああ!!!!」
「はあああああああああああああ!!!!」
『災厄』とぶつかり合うゼクス! セシリア! ケイン!
そして!
「ぼさっとするな! 我等も行くぞ!」
「はい!」
「了解です!」
「ええ!」
グライプスの思念による号令でリリィ! カエラ! そして右手の握力が多少なりとも回復した霧島も後に続く!
そしてこの戦いも、いよいよ最終局面へと突入していくのであった!
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