第195話 最後の助っ人!

 巨大な体躯をほこる『災厄』!


 その『災厄』の、人で言う丁度、三角筋部分――


 右肩にはカエラが! 左肩にはリリィが着地する!


 そしてカエラが『災厄』の右眼を! リリィが左眼を捉え! 一斉に! その銃弾を浴びせられるだけ浴びせまくる!!!


 ズガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

 ズガガガガガガガガガガガガ!!!!!!


「!!!!っ ギャアアアアアア!!!!」


「流石に眼球そのものは硬くできないでしょう!!!」


「ほんの一時でしょうがその視界! 奪わせていただきます!!!」


「ガアアアアアア!!! きっ! 貴様等アアアアアア!!!!!」


 両目から夥しいまでの血を流す『災厄』!


 流石に相当の痛みを覚えている様である!


 予想外の攻撃に打って出られた『災厄』はたまらず二人とその攻撃を払おうと無造作に腕を振り回す!!!


「! やばっ!」

「! くっ!」


 両肩に乗っていた二人は退避しようとするも暴れまわる『災厄』の動きでバランスを崩し、踏み場を失い落下してしまう!



 くっ! まずい!

 なんとか上手く着地をっ!


 正直かなりの高さ! 着地に失敗すると二人共、無事ではすまない!


 特にカエラの方は、近くに落下速度を軽減できる足場の代わりになる様な物もない!


 そこでリリィは、彼女の付近に霊子鏡を足場代わりに出そうとするのだが――


「カエラさん! 使って―― !!!っ」


「! そこかああああああ!!!!!!!」


「!っ しまっ!!!」


 間に合わない!


 なんと『災厄』が視界を失って尚、気配と声を頼りに二人の位置を正確に特定!


 まずカエラの方にその凶腕が放たれる!


 !っ くっ! られっ!



 その時!



 ガスゥゥッ!!!


「! なんだ!? 何か刺さって――」


 カッ!

 ドカアアアアアアアン!!!!!


「ぐっ! 爆発!? 一体なにが!?」


 ガシイイッ!!!


 そのまま落下してくる彼女を、抱きかかえる様にキャッチする人影が一つ!


 影の正体は霧島達也であった!


「!っ 霧島君!!」


「ふう! なんとか間に合ったみたいですね! 大丈夫ですか!? カエラさん!」


「! ふふ! 助かりました! ありがとうございます! 霧島君!」


「いえいえ!」


 なんと霧島は一足先に着地した瞬間、カエラ達が落下してくるのを確認! さらに一瞬で! 『災厄』の追撃が来る可能性も考慮に入れ自身の鎌に最後の手榴弾をワイヤーで巻き付け! ピンを外し! 鎌ごとオーラで覆い強化した状態で『災厄』の腕に投げつけたのである!


 斬撃を飛ばしてもこの距離ではあの剛腕を弾ける可能性は低い!


 おまけに右手の握力も限界に来ていた彼は思い切って直接強化した鎌をまずぶつけ! そして時間差で爆発する手榴弾と合わせて、ダメージは全く与えられないであろうが二段構えの衝撃で『災厄』の攻撃の軌道をずらす事に成功したのであった!


 左手を骨折! 右手も壊れかけ、さらに極限状態の彼だったが、まさに天才的なその戦闘センスをこの土壇場でさらに開花させる霧島!


 これには流石のセシリアとケインも度肝を抜かれる!



「! なんて判断力だ! 達也の奴! あれだけの事を高速でやり遂げるなんて!」


「カエラさんも! まさか迷う事なくあそこまで踏み込み! 『災厄』の視界を奪う事を成功させるとは!」


「おまけに息ピッタリじゃねえかよ! こいつはアタシらも、うかうかしてらんねえぞ! ケイン!」


「ふふ! そうですね! 若手最強コンビなんて渾名、そこまで興味はありませんが、だからといってそう簡単に後輩達に渡すわけにもいきませんからね!」


 未来を担う頼もしき自分達の後輩の成長の速さに嬉しく思うセシリアとケイン!



 そしてリリィはというと――



 おっ…… お姫様抱っこ!!! なんて羨ましい! 私もアイオスさんに……


「―― って、そうじゃないでしょ! 私! よかった! 無事で! 私も上手く着地しないと―― きゃっ!」


 ガシィッ!


 自身も霊子鏡を出し、着地準備を整えようとした彼女だったが霧島・カエラ組と同じくここでもリリィを空中でお姫様抱っこする形で受け止める人影が飛び込んでくる!


「やあ♪ ご無事かな♪ 僕の愛しのリリィ君♪」


「! 総長!」


「やだな~♪ ここは遠慮しないで『ありがとう♡ リーズお姉ちゃん! 大好き♡』とでも言ってくれてもいいんだよ♪」


「…… 『総長』ありがとうごさいます。 それと任務中ですので――」


「つれないな~! 王子様役がアイオス君じゃなかったからって、そうツンケンしないでよ~♪」


「!!!っ アッ! アイオスさんは今関係ないでしょ! ベべべ別に! 私達そんな関係じゃないですし! …… って、それよりも――」


 もみもみ―― もみもみ――


 抱きかかえながらも、どさくさに紛れてリリィの右の胸を揉みまくるリーズレット。


「同性の親戚だからってそれはセクハラだっていつも言ってるでしょ!」


「はは♪ いや~実に揉みごたえのある胸だったから、つい! ね♪」


「つい、じゃありませんよ! 姉さん!」


 バキィ!

「痛っ!」


 リーズレットの顔を蹴り上げ、そのまま彼女を踏みつける様に蹴りこみ! 地に向かって着地に向かう。


「いたたた! もう冗談通じないなあ! ま、そういうとこも可愛いんだけど♪ さて――」


 気を取り直し、リーズレットも着地して『災厄』に攻撃を仕掛ける!


「今のうちに削らせてもらうよ♪」


 さらに!


「オラアアアアアアアアアアアア!!!!」

「はあああああああああああああ!!!!」


 雷遁による強化状態で得た、その超スピードを以って『災厄』に斬撃の嵐を叩き込むセシリアとケイン!



「カアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「やああああああああああああ!!!!!」


 グライプスとリリィもそのスピードと牙、早撃ちを以って、超速で立ち回りながら『災厄』にダメージを与え続け、回復による瘴気の消耗とあわよくば『核』への攻撃も狙いつつ猛攻を仕掛ける!!!



「~~~~っ!!!」

「大丈夫ですか!? 霧島君!」

 カエラを空中でキャッチした際、そしてそれ以前に重量級に分類される鎌を右手一本で扱ってきた霧島の右手も遂に限界を迎える!


「大丈夫です! 右手はちょっと痺れてるだけですよ! すぐに回復します! 僕に構わず行ってください! カエラさん!」


「しかし!」


「大丈夫です!」


 流石に無防備でいる霧島の傍を離れたくないといった様子のカエラだったが、力強い眼差しで訴える霧島にその背を押される!


「―― わかりました! 霧島君は気配を消して暫く下がってて下さい!」


「ええ! 少ししたら僕も行きます! さあ早く!」


「はい!」


 こうしてカエラも再度『災厄』に攻撃を仕掛けに突っ込む!


 攪乱班全員係の猛攻に流石の『災厄』も全身血塗れになり、左手を無造作に振り回してこそいるものの、両眼の回復と防戦一方であった!



 …… 大丈夫そうかな?


 戦況が好転しているのを確認し、リーズレットは少し下がり、『災厄』に悟られぬ様にと、黒崎に左手を上げ! 作戦決行の合図を送る!


「! よし!」


 黒崎も左手を上げ作戦決行と返事を返す!



 だが!



 相変わらず凄まじい程の再生速度と全身の傷は後回しにして視力回復を最優先した結果! 既に『災厄』の視力はこのタイミングでほとんど回復していたのであった!


 そしてこれは完全に偶然だが、眼を回復して最初にその姿を捉えた人物は、黒崎に向けて手を上げているリーズレットであった!



 ! あいつは閻魔の妹…… どこを…… ! 奴等! 何を企んでいる!?


 ここで『災厄』は他の攻撃には目もくれず今! 敵の中で最も高い戦闘能力を誇る閻魔兄妹のその片割れ! リーズレットにその狙いを定める!



「! リーズ! 後ろだ!」

「!!!!っ」


 黒崎の大声に反応するリーズレット!


「何を企んでいるかは知らんが! 貴様は危険だ! 剣神!」


「いい加減にくたばるがいい!!!」


「ちっ!」


 ドガアアアアアアアアアアアアアア!!!


 咄嗟に右へ飛び『災厄』の一撃を躱すリーズレット!


 外した『災厄』の右手が深く地へと埋まるもすぐ様引き抜き、回避したリーズレットに再度狙いを定める!




 〜〜っ 気配を消してた筈だが、もう眼の回復をすませたか!


 本っっ当にしつこいな! 正直これ以上はもう消耗したくないんだけど、これはもう少ししつけが必要かな♪


 迎撃体制に入るリーズレット!


『災厄』の凶腕が再度リーズレットに襲い掛かる!!!





 その時!



 ビタッ!!!



「!!!っ ぐぅ!? なんだこれは!? 身体が…… 動かん!?」


 突如動きを止め! 苦しみだす『災厄』!



「!? なんだ?…… ! これは…… 気配がもう一つ!?」


 突然の出来事に驚きを隠せない面々――


 だがそんな中、リーズレットは『災厄』とは別に、もう一つ気配が新たに現れた事を察知する!


 それも『災厄』の身体の中から!!!


「ぐううううううう!!!!!!?」


 胸を抑えてよろめき始める『災厄』!


 そんな中! 


 なんと『災厄』の身体の中から、男の声が聞こえ始める!!



「くくくく…… 随分と盛り上がってきてるじゃねえかよ!」


 次の瞬間!


 ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!


『災厄』の丁度鎖骨部分、中央部分に近い胸部が大きく風穴を開け! そして弾け飛ぶ!


「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!」


 そしてその中から謎の人影が一つ!


 飛び出し! そして膝をついている『災厄』の左頬のすぐ近く! 人でいう斜角筋の上に飛び移っていた!




「いよう! 面と向かって顔を合わすのは久しぶりか! 色々言いてえ事は山積みだが、とりあえず――」


「一発ぶん殴らせろやあああああ!!!!」


 ズガアアアアアアアアアアアアン!!!!


「ぐはあああああああああああ!!!!!」


 なんとその漢は『災厄』の左頬を自身の右拳で殴り飛ばし! そしてその巨体を地に叩きつける!!!


 ズズウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!



「…… 強い気配―― ふふ♪ 一体何者かな♪?」



「なっ!!!!?」

「これは!?」

「!!!!」



「!!! 今度はなんですか!?」

「あの巨体を! 殴りとばしたですって!?」



「ふむ…… ここにきてまだ何かあるというのか!?」

「わかりません! でもグーちゃん! 皆さんも! 気を付けて下さい!」



「一体なにが…… ん!? …… !!!っ そんな! まさか!?」

「…… ああ、このいけ好かねえ位の常識外れのパワーを持った気配…… 野郎! なんであんな所から!?」


 セシリアとケインはこの気配に覚えがある様であった!


 そしてその気配の主はリーズレットの前に背を向ける形で着地する!


 赤いコートとその特徴的な長い後ろ髪をなびかせながら――


 そしてその顔を見て『災厄』も驚愕する!




「!!! きっ! 貴様! まだ生きていたのか!?」


「ハッ! テメーなんぞにこの俺様がそう簡単に吸収されてやるわけねーだろが! ボケが!」


「キースを使って下手な小細工までしてくれやがって――」


「何よりも現在進行形でアルテミスとレオン俺の連れ共が随分と世話になってるみてーだしなあ!!!」


「覚悟はできてんだろうなあ…… アァ!? コラァ!!!」


「くっ!」


 その漢は凄まじいまでの殺気と覇気を兼ね備えた状態で怒鳴り! 『災厄』を威嚇する!



 そして――



「お前は―― ゼクス!」


「よう! レオン! 流石のお前さんも大分苦戦してるみてーじゃねえかよ」


「このクズやアルテミスとの決着に、俺なんぞがしゃしゃり出てくんのも正直野暮かもとも思ったんだが、どうやらそうも言ってられねえみてーだしな――」


「馴染みのよしみだ! 余計なお世話かもしんねーが、ここは手ぇ貸してやるぜ!」


 みなの前に現れたのは先代大王ことヴァラン・アルゼウムとの死闘の後に『災厄』に吸収されたと思われていた 零番隊 先代総長にして『鬼神』ゼクス・ヴォルカノン!


 最後にして最強の助っ人が今! 友の為にその姿を現した!


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